イブパ?のはじまり
「どうしようか……」
姫宮になんと返すのが正解なんだろう。
「イブも予定あるんだが」
と、とりあえず返しておく。送ったのとほぼ同時に既読が付く。早すぎるだろ。タイムアタックでもしてんの?
「わかりました、せんぱい♪」
なんで楽しそうなんだ? まあいいや。
クリスマスイブとクリスマス当日のために買い物でも行くか。
「「おはよー」」
クリスマスイブ当日。天野さんと橘さんがやってきた。もちろん結花は一番最初に来ている。
2人がやってきて玄関のドアを開けた瞬間、外の冷気がなだれ込んできた。
「うわ、さむっ」
俺は寒さで縮こまる。
「外、雪積もってたよー」
「まじか、ホワイトクリスマスってやつ?」
「イルミネーションとか観に行きたいね、ゆうくん!」
結花は声を弾ませて言う。イルミネーションかあ……さぞかし幻想的だろうな。
「夜行こっか」
「朝からイチャイチャしてますなあ、うりうりー」
「そ、そうかな……?」
天野さんは結花をちょんちょんつついている。否定せずに照れてる結花が可愛らしい。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。翔琉かな。
「せんぱーい、おはようございまーす!」
「おう、優希」
なんか2人いるんだけど……。雪女? にしてはテンション高いな。
俺は姫宮の姿が見えた瞬間、さっと玄関の外に出る。寒いから早く部屋に戻りたい。
「なんで姫宮がいるの?」
「うわ、せんぱい直球すぎませんか? せっかく私がパーティーを盛り上げようとやってきたのに……私でも傷つきますよ?」
「いや、呼んでないし。てかなんで俺ん家知ってんの?」
「どうしたの、ゆうくん?」
最悪のタイミングで結花がドアを開けて出てくる。結花に見つかる前に追い払いたかったのに。俺は辺りの温度が5℃ぐらい下がった気がして身震いする。
「なんで私が知ってるのかって? せんぱいに年賀状書きたいー、って私言ったじゃないですか」
姫宮は結花が出てきたタイミングでちょうど言ってしまう。ドヤ顔で。
「……ゆうくん?」
結花は説明してくれる?って意味が含まれてそうな感じで言う。ちょっと微笑んでるのが一番怖い。
翔琉は俺の肩をポンと叩く。
「まあ、どうにかしろ」
そして親指を立てる。傍観者だからって楽しみやがって……。
とりあえず3人とも家に入れられて10分後。やっと弁明が終わった。
「雪の中だし、家にいるかなーって。あと成瀬先輩も来るって聞きましたし、デートではないかなと!」
「それで突撃してくるのがやべえよ……」
俺が姫宮呼んでないことと、年賀状書きたいって言われてそれぐらいいいかーって思っていいよって言ったこと。で、結果的に家バレたこと。余罪はない。
「そんなゆうくんにはこれ着てもらいます」
結花はバッグからなにかを取り出す。赤色の服が見えた時点で何を着るのかは分かった。
「……はい」
サンタの仮装グッズ。そう言えば去年は結花が着てたなあ。
しかもヒゲまでセットだし……。
俺は着替え終えて自分の部屋からゆっくりと出る。
「せんぱい、似合ってますよ」
「うんうん、似合ってる」
「……似合うとかないだろ」
女子4名と男子1名がにやにや見てくる。
「私、クラッカー持ってきましたよ!」
「準備良すぎるだろ」
「私もクラッカーなら一杯買ったよ、ゆうくん? そうだ、明日使ったらいいね」
結花は明らかに姫宮を意識して言う。
「ぐっ……」
流石に明日の邪魔はしない、というレベルの良心がある姫宮が悔しそうに歯噛みする。
「じゃあ、パーティー始めよう!」
皆は姫宮からクラッカーを受け取る。
パーンと鳴り響くクラッカーの音が、俺たちのにぎやかなパーティーの始まりを告げた。
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