ほぼ家族
「そろそろお昼にする? もう寒くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう、ゆうくん」
正直まだ離したくなかったけど……。今日はやりたいことがあったんだ。
「今日のお昼ごはん、俺が作っていい?」
俺の言葉を聞いて、結花の表情がパッと明るくなる。前作るね、って言っておきながらなかなか作れてなかったからなあ。
「うん、ずっとゆうくんか作ってくれるの楽しみにしてたんだ」
「まあ、作るってほどでもないかもだけど……鍋料理作ろうかなと」
「わあ、寒いからますます美味しくなりそうだね」
「美味しいと思ってもらえたら嬉しい」
そう言って俺は準備に取りかかる。
材料は、豚肉とか豆腐とかネギとか。シンプルすぎるかなあ。でもキムチ鍋は服に跳ねたりしたらわりと惨事だからな……。
まあ寄せ鍋?ってことでいいかな。
まずは豚肉と鶏肉を一口サイズぐらいに切り刻んでいく。二種類の肉を料理に使うのは初めてな気がする。
そもそも肉料理作ったことあるのかって?
まあ、週末の時間あるときなら(小声)
そして野菜いろいろも切っていく。だいぶ上手くなったなあ、と感慨深くなる。
「ゆうくん、料理上手になったね!」
「結花にそう言ってもらえると、練習した甲斐があったなあ」
まだ鍋で煮始めてもないのに、隣で俺の作業を眺めている結花が褒めてくれる。
調味料を混ぜてスープを作る。そして、それを鍋に入れてグツグツと煮る。
「もういい匂いしてきたね」
「うん!」
そこに肉、野菜の順で投入。あとは10分ぐらい煮込むだけだ。
「完成、かな」
「美味しそう!」
俺はぽこぽこ音を立てて沸騰している鍋を、やけどしないように気をつけて運ぶ。
「「いただきます!」」
「どう、美味しい?」
俺は少し恐る恐る聞く。
「うん!」
「なら良かった……!」
美味しそうに、ゆっくりと味わいながら結花は食べてくれる。
俺も肉とか白菜を口に運ぶ。お、昔家で食べてた味だ。
俺たちはいろいろ話しながら、鍋を食べ終えた。
「……ゆうくんから抱きしめてくれるの、意外だったな」
「そう?」
「でも、嬉しかった。ほんとに」
そう言って結花は笑顔を見せる。
「これからも、もし寒かったら……お願い」
結花はちょっと恥ずかしがりながら、最後の方は小さな声で言う。
「今は寒くない?」
たまには俺が攻めてみるのも有りかな、と思いつつ冗談交じりで言ってみる。流石に鍋食べて暖まっただろうけど。
「……ちょっと、寒いかも」
結花は頬を紅く染めて俺の方を見上げる。そ、その表情は……。
言ってしまった手前、もう引きかえすことはできない。
「ゆうくん、あったかい」
俺は1時間ぐらい前と同じ、天国みたいな光景を見ている。
たぶん心臓がバクバクしてるの、結花に伝わってるだろうな。
「家族の温もりって、こんな感じなのかな」
結花がいつになく優しい表情で言う。
「たしかに、週末一緒に家にいて、ご飯も食べてるのはほぼ家族かも」
「うん、あと……一緒にいて落ち着くし」
ほぼ家族、か。自分で言ったけどなんだか恥ずかしい。
俺と一緒にいることが、結花の心を暖めてくれるならそれだけで俺は満足だ。
結花が俺の胸に寄りかかってくるなか、そんなことを思った。
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