修学旅行3日目③来年のこと
「ごめん、遅れちゃって」
「先にいただいてるから大丈夫だよー」
俺たちは小走りで八つ橋の店の前まで下りてきた。結花はきちんと橘さんたちに謝る。
「いや、2人が速すぎるんだよ」
……実際それが原因の6割、そして俺たちがゆっくり下ったのが4割を占めてます。
2人は先に八つ橋を頬張っている。どんだけ食べたかったんだよ。てかこんな感じならもう少しゆっくり下ってきて良かったんじゃないか?
「俺たちもいただこうか」
「うん!」
結花と普通の味の八つ橋と、抹茶味の八つ橋を交換しながら食べた。
そして俺たちは、学問の神様として名高い、天神さまが祀られている北野天満宮にやってきた。ここが今日の日程の中で一番最後だ。
「もう進路とか考えないといけないね、ゆうくんは決めてる?」
お参りを済ませたあと、結花が話しかけてきた。
「いやー、まだあんまりはっきりとは……。東京の大学には行こうと思ってるけど」
「私も考えてるのは東京の大学だから、一緒に行けるかも」
「そっか、それは嬉しいな」
結花と同じとこ行けたら、キャンパスライフは楽しいだろうな。もう今から期待で胸が膨らむ。
「2人ならあそこ行くでしょ、日本最高峰の大学」
橘さんがそう言うと、天野さんもうんうんと大きく頷いてみせる。
「んー、まあもっと勉強しないとなあ……。来年はずっと勉強か……」
今から少し陰鬱な気分になって、俺は肩を落とす。どっか遊び行ったりとかできなくなるじゃん。
「でも、一緒に勉強会するのも楽しいよね? 私はあの時間、結構好きだよ」
結花は俺を元気付けようとして言う。たしかに、俺もあの勉強会の時間は好きだ。カフェとかファミレスとか行ったの、楽しかったなあ。
「それに、来年勉強漬けなら、今楽しんでおけばいいじゃない?」
「私もそう思う!」
橘さんから意外な言葉が飛んできて、天野さんもその言葉に同意する。
橘さん、ただツンツンしてるだけじゃなかったんだ……!と俺は感動した。これ、まあまあ失礼だな。
「2人の言うとおりだよ、ゆうくん」
結花は俺に優しく微笑みかけて言う。
「……私は、ゆうくんと一緒だったら何をしてても楽しいから、今年も来年もずっと楽しめると思う」
俺はどうしていつも、結花に言いたいことを言われてしまうんだろう。いつまでもこんな俺じゃダメだな。
「俺もだよ」
「……うん! 修学旅行も明日までだけど、いっぱい楽しもう?」
「そうだね!」
「じゃあ、バス乗りますか!」
「え、ホテルまでか……」
天野さんが元気良く言う。
どこかを目指すような雰囲気になっていたのに、行き先はホテルという……。
ホテルでも楽しめたらいいな。初日みたいなことが起こったらいいけど。
「今度この班の皆で遊びに行かない?」
「楽しそう」
橘さんと結花は、いつか遊びに行こうって話し合っていた。それも楽しそうだな。
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