修学旅行1日目②結花からの誘い
「おー、これが平等院鳳凰堂かあ」
10円玉で見た感じそのままだけど、想像より大きいな。
あと池も大きくてあんまり近づけないなあ。
極楽浄土をイメージして建てられたらしいけど、極楽なら俺の家で見られます。おっと、惚気はここまでにしておこう。
俺たちは班で固まって見学ルートを回る。
「クラス写真撮るから集まれー」
資料館とか色々見学してまわったあと、担任が呼び掛ける。
「あ、私は前でいいから、3人で横に並んでもらっていいよー」
「え、いいの? じゃあ私がここで、結花が真ん中、ってことでいいよね?一条くん」
「まあこれが一番平和だよな」
てなわけで、前の列に天野さんが中腰で並んで、その後ろに結花、左に俺、右に橘さんという並びになった。
たぶんいい笑顔で写れた、修学旅行の写真販売では、この写真は絶対買おう。
俺たちはホテルに向かう貸し切りバスに、クラス全員でぞろぞろ乗る。
初日はクラス見学だけだったみたいだ。もう1ヵ所ぐらいなら回れそうだったけどな。
ま、ホテル結構いいところらしいし、いっか!
「私たちとゆうくんのホテルの部屋、結構離れてるね」
「3階も離れてるのかー」
「ま、当たり前でしょ、隣の部屋だったらどっかの誰かさんが私たちの部屋に来たりしそうだし」
橘さんは俺の方をじとーっと見ながら言う。
「たしかに、それはないとは言い切れない……」
「認めちゃうんだ!?」
天野さんがテンポ良くツッコミを入れる。
天野さんは優秀なツッコミ担当だな。結花はちょっと天然入ってるし、俺もボケ担当っぽいからツッコミ入れてくれるの助かる。ボケを担当しているという自覚はないが。
「別にゆうくん来てくれても大丈夫なのに。……いつもみたいに」
結花はちょっとだけ寂しそうに言う。
俺も行けるなら行きたいんだよ?
「いつも?」
優秀なツッコミ担当はそれまで拾っちゃいますか……。
「うん、前私の家に遊びに来てくれたんだー」
「そうだったんだー、仲めっちゃいいんだね」
「楽しそうだね、一条くん? 詳しく聞かせてほしいかなー?」
若干1名の視線の圧が怖いです……。
なるべく橘さんの目を捉えないようにしながら、わいわい4人で話していたら、宿泊先のホテルにたどり着いた。
「全員そろったから、それぞれ自分の部屋に荷物持って上がれー」
ここで明日の朝まで結花とはお別れかあ。まあ、自分の部屋上がるとするか……。
「ゆうくん」
結花にいきなり呼びかけられる。
「……これ」
結花はそう言うと、俺にメモ紙のような小さな紙切れを渡してくる。
「じゃあ、あとでね」
「おう、……ん?」
結花から受け取ったメモを眺める。
「夕食食べ終わったら、ロビーに来てもらってもいい?」
とあった。
俺はもちろん、と心の中で呟いて階段を上がった。
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