修学旅行1日目①移動も楽しい
「トランプしよう!」
俺は新幹線での道中を楽しむために、家から色々遊び道具を持ってきている。トランプとかウノとか。
「「「おー!」」」
女子3名から歓声が上がる。ちゃんと準備してて良かった。
「まずはババ抜きからやろー?」
「いいねー!」
カードを配り、ババ抜きを始める。
俺は右隣の結花からカードを抜き、前に座っている橘さんに引いてもらう。
「勝った人は最後まで残った人と席交換してもいいってのはどう?」
「それ、いいね」
どうしても結花の隣の俺の席をゲットしたいらしい橘さんが提案する。そして俺たちのドタバタを眺めて楽しみたい天野さんが即反応する。
「まあ負けないからいいけど」
「やってみないと分からないじゃない?」
俺と橘さんは結花には見えない火花を散らす。もうキャラ隠すのは諦めた方がいいと思うよ。
俺たちは今までで一番白熱したババ抜きを繰り広げた。
「はい、1抜け」
「くっ……」
橘さんはあと1枚がどうしてもなくならないみたいだ。相当悔しそうな顔をしている。
いや、まあ……。別に俺は前から結花眺めるポジションでもいいんだけどね。あ、でも真ん前で。
結局、俺は京都までの4、5時間近く結花の隣を譲らずに済んだ。まあ、本気出したからね、使える手は全て使ったし。
俺のトランプだし、仕込みぐらいならなんでもできる。……多少反省はしてます。
「京都着いたー!」
俺たちは荷物を手に、新幹線を降りる。
そして、貸し切りバスに乗り込む。
「初日は……どこ行くんだっけ」
俺はそう言いながらリュックの中の修学旅行のしおりを取りだそうとする。
「最初は、平等院鳳凰堂のクラス見学だよ」
そんな俺を見て、結花はすぐに答える。
「え、日程ちゃんと覚えてるの?」
「うん! ゆうくんとの修学旅行ずっと楽しみにしてたから、前からしおり見てたんだ」
「え、あ、そっか……俺もちゃんと見とかないとな」
ナチュラルにデレる結花を前に、俺はめっちゃ恥ずかしくなって、他2名は微笑ましそうに(?)俺たち2人の挙動を眺めている。あ、1名は羨ましそうに、名前のとこ入れ替えてって目してたわ。
でもさ、俺……バスでは結花の隣取れなかったんだよねー。
今回は橘さんに取られてしまった。別にキニシテナイヨ?
新幹線でのトランプの反省もありますし。
橘さんはこれで満足してくれ……。
って、この席、結花と橘さんの席を傾けた角度的に、ちらっと結花の後ろ姿が見えるのか。やっぱこの席でもいっか。
俺は隣に座った天野さんと話すことにした。
「一条くんって、ほんとに結花ちゃんのこと大好きなんだねー」
「どうした急に」
天野さんはいつも通りニヤニヤして、俺をからかうように言う。もうこの距離感にも慣れてきた。
「いやー? ずっと前の方チラチラ見てるなーって」
「え、そんなに分かりやすい?」
「うん、バレバレだよー」
「まじか」
同じクラスの彼女と行く修学旅行は移動さえも最高の時間みたいだ。……席が隣じゃなくても。
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