修学旅行は班決めから!
文化祭のあと、続いてやってきた中間テストもとりあえず終わった。
朝結花と一緒に登校してきて、廊下に掲示されている順位表を眺める。
「ゆうくんに負けた……」
「うん、2回連続で負けられないって思って、しっかり勉強したからねー」
「……悔しい」
結花はじっと順位表を見つめたあと、「あ、ごめん。教室入ろう?」と言う。
今回も俺たちと3位の差は2桁あるな、この調子で行けば大丈夫だな。
そう思って俺も教室に入った。
「今日の5、6限は修学旅行関連だからなー」
いつも通りの平坦なトーンで担任が言う。その言葉で教室内がざわざわし始める。楽しみだなー、俺も。何するんだろうか……?
「じゃあ今から5限始めるぞー」
修学旅行って、先生はテンション上がったりしないんだろうか? 上がりそうなもんだと思うけど。高級ホテルとか泊まったりするじゃん。
そういえば、担任は京都の大学の出だとか聞いたことがあるようなないような。知ってるとこだからあんまり興味ないのかも。
「皆で班決めやってくれー。あ、班は4人か5人な」
修学旅行はこの時点で既に始まっていると言っても過言ではない。班のメンバーに修学旅行の成功はかかっているわけだ。
「班、どうするー?」
「俺らで組もうぜ」
(俺……あんま話せる男子いねえわ)
翔琉は他のクラスだし、1年の時仲良かった他のメンツも散らばってしまった。
学年一の美少女と付き合ってる男子なんて、他の男子からヘイトが集中するに決まっている。あと一部の女子からも……橘さんっていう人なんですけど。
異世界転生したら最強のタンクを目指します!
俺、結花と同じ班になれなかったら圧倒的敗北では? まあ結局なんやかんやあって最後は楽しいって思えるんだろうけど、俺は最初から最後まで最高に楽しい修学旅行を追求する!
というわけで誘いに行こーー
「ゆうくん、私と一緒に班組もう?」
「うん、もちろん!」
俺が誘いに行く前に、結花から誘われた。試合に負けて勝負に勝ったってこと(?) 要するに、最高の修学旅行が確約されたということだ。
あとのメンバーは、橘さんとこないだ焼きそばくれた女子か。俺にとってベストメンバーでは? 男1人なのは……多少悲しくはある。
「よろしくねー?」
「うん。よろしく! こないだはありがとう」
「いいよいいよー。ファインプレーだったでしょ?」
「うん」
班が決まったあと、皆でわいわい話をする。こないだの女子は天野あかりって名前らしい。文化祭の時のお礼も言えたので良かった……!
「班は決まったかー。じゃあ、これからの時間は班別研修の行き先を決めてくれ」
俺たちは図書室に連れて行かれた。図書室に旅行ガイドとかあるんだなー。表紙の猫可愛い。
猫に吸い寄せられて、その旅行ガイドを開いてみる。
てか図書室さむっ。すっかり外は秋めいてきて、紅くなった楓とかが見えるのに、窓全開で空いてるし……。
太ももさすって暖まろう、と思って旅行ガイドをめくっていた手を机の下に引っ込める。
「へっ……!?」
いきなり机の下の手がぎゅっと握られて、飛び上がりそうになった。
手がじんわりと温かくなっていくのを感じる。
横をゆっくり向くと、少し頬を紅く染めた結花と目が合う。寒いから、いいよね?って感じに目で訴えてた。
これ計算でやってるなら、結花は策士だな。俺かなりドキドキしてるし。
周りの2人に気付かれないように、机の下で手を握っているという状況も相まって、さらに鼓動が早まる。
既に修学旅行の行き先どころではない。
「映画村も楽しそうじゃない?」
「あー、そうだね……痛って!?」
俺の脇腹に結花とは反対側からシャーペンの上の方がぐりぐりねじ込まれる。ちょ……肋骨の間……。
痛みに悶えている俺を結花が心配そうに覗き込んで、犯人のTさんはいかにも「ふん」って聞こえてきそうな感じに顔を背ける。そんなドタバタした状況を天野さんはニヤつきながら見ている。
まあ、色々ありそうだけど楽しい修学旅行になりそうだ。
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