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買い物と結花の本音

(俺、アホ過ぎるだろ……!?)


さっきめちゃくちゃいいムードになって、2人で恋人繋ぎのまま夕方の東京を歩いていたのに、俺が結花を連れてたどり着いたのはいつも買い物をするスーパーの前だった。

あれ、俺そんなに土地勘ないっけ?


 もう1年半はこのあたりに住んでいるはずなんだけど。


もうちょっと風情あるところあったでしょ……。んー、近くに公園あったはず。


「ねえ、あっち側行こっか……って、え?」


俺がスーパーの反対側の方を向こうとするが、結花は俺の手をぎゅっと握って俺の動きを止める。


「せっかくここまできたなら、2人で買い物しない?」

「あー……結花がいいなら」

「うん、私は大丈夫だよ?」


俺たちは手を繋いだままスーパーの中へと進んでいく。


今日の夜ご飯何にしようかな、今度結花にご飯作るならそれの練習も兼ねて自炊するか。


「野菜売り場の方行ってもいい?」

「うん!」


シチューとか作ろうかな、野菜切ってルー入れたらできるし。


玉ねぎとかにんじんを買おうかな、と思って売り場を見ると、イチャつきながら買い物をしている新婚夫婦らしき先客がいた。


「ちょっと待とうか」

「うん、そうだね」


結花はそう言って笑ってみせたけど、ずっと遠いなにかをぼーっと見ているような様子だ。


「私、あの感じ……少し憧れなんだ。夫婦仲良く買い物に来てるの」


結花がこの距離じゃなかったら聞こえないぐらいの声で言う。結花の家庭の事情を思い返して、胸が痛む。


「なら、俺と一緒にその憧れ、叶えよう。

 というか、俺も結花とその感じを味わいたい」


今この距離にいて、結花の言葉を受け止められるからこそ、俺がこう本心を伝えなければならないと思って言った。

 あとから考えたら買い物中になに言ってんだって感じだけど。恥ずかしくなるやつだわ。


「約束してもらってもいい?」

「もちろん。というか、こちらこそお願いします」

 「うん」


俺は優しく笑いながら言う。結花も、さっきまでの少し沈んだ雰囲気をどこかへ消し去って、微笑み返してくれる。

俺はほっとして、ちょうど空いた野菜コーナーの玉ねぎを手に取った。




「ありがとう、ゆうくん」


結花の家の下まで結花を送り届け、帰ろうとしたとき、結花が俺を引きとめて言う。


「いや、まあ……。 もっと、頼ってもらっても大丈夫だから、頼りないかもだけど」

「ゆうくんは頼りなくなんてないよ。今日の私も救われたし」

「なら良かった。……本音は、俺にならいくらでも言っていいよ。俺は結花の力になりたいから」

「うん……本当にありがとう」


結花は久しぶりに、泣きそうな、でも笑いそうな表情を見せる。

少しでも寄り添うことができたなら良かった。


俺は名残惜しそうに手を離して、俺にその手を振る結花を見届けて、家に帰った。



「さて、シチュー作るか」


俺は服の袖をまくって、買った玉ねぎやにんじんをそれぞれ切り刻んで、鍋に入れる。

箱にレシピ書いてあるから作りやすいですね!


ルーも溶かして、少し煮込んで完成かな。


「いただきます」


うまっ。

この味、たぶんずっと覚えてるんだろうな。

結花と初めて恋人繋ぎして、そのまま買い物デートした日の夕食の味として。


いつか近い内に、俺の料理を結花に食べてもらいたいな。



投稿遅くなってしまいすみません!

いつも読んでくださりありがとうございます!


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