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夫婦みたい?

「そ、そろそろお客さん来るんじゃないか?」


俺は話題を無理矢理変えようとしてみる。


「そうですね、もう10時になりますし」


結花は俺の発言を拾ってくれる。

って、ちょっと女子! ニヤニヤしながら俺らの方見るのやめない?


「そうだね、調理進めよっかー」

「うんー」


まだ女子たちはクスクス笑ってる。


俺が刻んだ野菜たちと焼きそばの麺をプレートの上で炒めていく。

プレートは大きいので、俺と結花の2人で並んで混ぜながら炒めていく。


「あ、お客さん来たよー」


出来上がった焼きそばをパックに詰めている女子が言う。

もう5人ぐらいが焼きそばを買いに来たみたいだ。

順番に焼きそばを渡していく。


「店員さんのお二人はいつも通りラブラブですねー」

「誰かと思えば姫宮か……」

「そんなにめんどくさそうにしないでくださいよー、私だって傷つくんですからねー?」


絡んでくる姫宮に焼きそばのパックを押し付ける。

それでも絡みをやめてくれそうになかったので、ちょっとだけ持ち場を離れることにした。もちろん結花に言ってからね!


というわけで、俺は焼きそばをつつく姫宮の隣に座らされる。


「焼きそば、旨いか?」

「はい! 先輩が野菜切ってるの見ましたよ、上手でしたね」

「お、ありがと」


褒められたのは素直に嬉しく感じる。


「……まあ、私としても2人にはイチャイチャしてもらわないと困ります」

「え、いきなりどうした? 頭でも打ったか?」


姫宮は遠くの方を見て、話題を思い切り変える。

半分冗談で、半分本気で心配して俺は言う。俺の言葉を聞いて、姫宮は唇を尖らせて言う。


「そうじゃないと私が選ばれなかった意味が分かんないじゃないですか!」

「たしかにそうだな。ま、姫宮に心配されなくても俺たちは楽しくやるから」

「むー、私だって諦めたわけじゃないんですからね……」


姫宮は食べるのをやめて、俺の方にぐっと寄ってくる。俺は少し後ろに下がったけど、腕をがっしりと掴まれる。


「へ?」

「一条先輩は油断し過ぎですよ、まあ私も一ノ瀬先輩がいない間に奪おうとはしませんけど」


そう言って俺を掴んでいる手を緩める。


「一条先輩を手に入れるなら、堂々と一ノ瀬先輩と勝負するので、覚悟しててくださいね?」


言いたいことを言い終えた姫宮はニヤリと小悪魔的な微笑みを見せて、どこかへ行ってしまう。俺も戻らなきゃ。




「……ごめん、何分かかった?」

「10分です」


持ち場まで走って戻ったので、息が切れている。

やっべ、思ったよりかかったな……。


「その分さっきまでの3倍働いてもらいますっ!」

「お、おう」


続いて結花は俺に近づいて、そっとささやく。


「あと、午後は私と一緒に回ること」

「? もともとそのつもりだったよ、俺は」


俺は当たり前のことのように言う。


「そういうの、ほんと良くないよ?」


結花は少し頬を膨らませて、俺の頭を優しめにペチペチ叩く。でもちょっと嬉しそうだ。


「……あ」


結花はようやく周りの視線に気が付いたらしい。


「……見なかったことに、してもらえますか」


たぶん俺が今までに見た結花の表情で一番恥ずかしそうだと思う。耳まで真っ赤だ。


女子たちは微笑ましそうに俺たちを眺めている。


「なんか夫婦みたいだねー」

 「「へっ!?」」


何気ない一言のつもりだったんだろうけど、めっちゃ恥ずかしい。けど嬉しくも感じる。



「午後、楽しみだね」


しばらくして、俺は結花にだけ聞こえる声で言う。


「……もう」


その言葉とは裏腹に、結花の口元は少し緩んでいた。


俺たちは昼が来るまで隣に並んで焼きそばを作り続けた。


いつも読んでくださりありがとうございます!


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