結花とお寿司
こないだの結花さん家のお泊まりの時、夏休み後半の予定の話をして、去年行きたいねーとか言っておきながら行ってなかった回転寿司に行くことになった。
お昼ご飯からお寿司は贅沢だな。楽しみすぎる。
どれだけ食べてもいいように、財布には1万円札を入れてきた。
某回転寿司チェーン店に入る。
そんなに待ち時間もなく、俺たちは席に通される。平日の昼前だし、当然といえば当然か。
「ほんとにレーンでお寿司が回ってるね」
たぶん今まで回らないお寿司だけを食べてきたであろう結花が、驚いて言う。しばらくの間、どんなお寿司が流れてくるのか興味津々で見ていた。
俺はそんな結花の様子を、微笑みながら見つめる。
……ただ、流れてくるお寿司に当たったりしないよう配慮してか、横の方から眺めているとき、胸が机の上に乗っかってたのはクリティカルヒットすぎた。
「自分が食べたいの、取ってもらっていいからね」
「分かった!」
俺はそう言うと、さっそくパネルで炙りサーモンを注文する。たしかパネルで注文しないと食べられないやつもあるよね。
数分もすると、おなじみの新幹線に乗って炙りサーモンがやってくる。何周もレーンをぐるぐる回っているわけではないので、つやがあって美味しそうだ。
「おー、待ってましたー! ……ん?」
結花にじっと見られている気がして、俺はお皿めがけて伸ばそうとした手を止める。
「新幹線でお寿司運ばれてくるの!?」
「うん、このパネルで注文したらねー。こっちの方が待たなくてもいいし、たぶん新鮮で美味しいと思う」
「そうなんだ! 私も注文してみてもいい?」
「うん」
俺が注文した炙りサーモンが、新幹線に乗ってここまでやってきたのが衝撃だったようで。
結花はパネルで注文を済ませたあと、レーンの奥の方を見て、今か今かとお寿司が運ばれてくるのを待っている。
「来たー!」
しかし、お寿司2貫を乗せた新幹線はスピードを落とすことなく、結花の目の前を通り過ぎて行く。
「あー、他のお客さんの注文だったみたいだね」
「そっか……」
結花は少しだけシュンとする。
俺だけが、学校のクールな結花と違って(最近は学校でもクールじゃない気がするけど……)ころころと様々な表情を見せる結花を知っていると思ったら、ちょっぴり嬉しくなる。ちょっぴりじゃなくてだいぶ。
……なんかヤバいこと考えてんな。天使すぎる可愛さは人を狂わせます、マジで。
「今度こそ来たんじゃない?」
俺は上のレーンを颯爽と走ってくる新幹線を見て言う。
新幹線は俺たちの目の前でゆっくりと減速して止まる。
「美味しそう……!」
結花は最初から大トロを注文している。飛ばしてんなー。
「ん……美味しい」
大トロを食べ終わったあと、結花は目を輝かせてレーンを眺めていて、何を食べようか迷っている様子だった。
俺たちは注文して新幹線を待ったり、下のレーンで流れてくるお皿を取ったりして計20皿ぐらい食べた。
あとはデザート。
回転寿司と言えば最後のデザートが醍醐味と言えるまである。最近はサイドメニューも充実してて、お寿司以外も食べたくなるんだよな。
俺はプチシューが載ってる苺パフェ、結花は桃パフェをそれぞれ注文した。
「「美味しいー!」」
それぞれ自分の注文したパフェを一口食べたあと、結花がこっちを見てくる。この視線、既視感があるような。
「私も一口、もらってもいい?」
「おー、いいよー」
結花は少し遠慮がちに言う。もちろん良いに決まっている。
もはや間接キスでは動じないほどに俺たちは成長した(?)
……嘘です。実は心臓バクバクしてます。
「はい、どうぞ?」
「うん、ありがとう」
俺も結花から桃のパフェを少しだけ頂く。やっぱりとろけるような甘い味がした。
「また来ようね?」
「もちろん。いつでもいいよ?」
とても満足してくれたみたいで、美味しかった……!と結花は言ってくれた。結花は美味しそうに食べるので、たくさん食べててもらいたくなる。
将来は結花を満足させられるような料理を作れたらいいな、と思った。
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