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タマニアからの手紙

 あれから俺たちは、封筒を持って一旦家に帰ることになった。

あの封筒は誰かに見られるとまずい、、、直感的にそう思ったからだ。

 



 家に帰った後、俺は居間に、真央は落ち着くためにシャワーを浴びにお風呂場に行った。

そして、俺の前には例の封筒が、、、、、、

ただ置いてあるだけなのに、異様な存在感を放っていた。




 少し経った後、真央がお風呂場からあがってきた。

シャワーを浴びた真央の髪からは華やかな匂いが────っと今はそんな感想をのんきに抱いている場合ではない。

 



 その後、封筒を挟んで真央と俺は向かい合うように座った。

 少しの間、お互いに緊張しているのか、沈黙が流れる。

この気まずい雰囲気を脱却するため俺が口を開こうとするのと同時に真央が口を開いた。

「それで、、、どうしましょう?この封筒」

「うぇ、、、!ええと、、、」

タイミングがタイミングなもので自分でも思うほど情けない声をあげてしまった。

ただ、質問には答えねばなるまい。俺はそう思い、一瞬中断した思考を再度回転させはじめた。




「そうだな、、、少なくとも中身を見てみないことには何も始まらないんじゃないか」

「しかし、私の家はタマニアと直接的な繋がりはありません。もしかしたら間違えて送られてきた可能性も、、、」




 たしかに、この封筒には宛先はおろか、差出人の名前も記入されていない。記入されているのは悪趣味なロゴだけだ。




 ん、、、?待てよ、彼女の家がタマニアとは無関係?俺が知っている事前情報では、この町に住んでいる人はもれなく全員タマニアに身をささげて死ぬと聞いていたが、、、

「あの直接的な関係がないって────────」

「やっぱり警察に届けた方がいいのでしょうか?あっ警察といってもタマニアが運営している治安維持隊ですが、、、」

疑問に思ったので聞いてみようとしたところさえぎられてしまった。そして、またタマニアか、、、警察のようなものまでタマニアが受け持っているとは、、、この町の住人は国に対して納税しているのか、、、?

そんな疑問が頭に浮かんだが、今はそんなこと思考を割いている暇はないと考え、払拭する。

それから、俺は考えに考え一つに結論にたどり着いた。

「やっぱり、その質問は君が開けるべきだ。もし、本当に君の家宛だった時は、きっとタマニアからの直々の手紙だ。とても重大なことが書かれているはず。たとえ、間違えだったとしても君が責められる道理はないよ」

俺がそう告げた後、彼女は少し考えていたが、やがて、意を決した表情になって

「決めました。私開けます」と言った。

真央が封を開けるとき何とも言えない緊張感が流れたが、中の紙を取り出す頃には既に少し和らいでいた。

そして、中の紙を恐る恐る開くと、そこにはこう書かれていた。




───────────────────────────────────────────────




拝啓 桐谷真央様

暑さもようやく厳しさを増してまいりましたが、桐谷様にはお変わりなくご健勝のこととお喜び申しあげます。


さて、先日わが社の社長がご逝去されました。


そして、社長のご遺言より遺産の相続者は、この手紙が渡った者たちによる争奪戦にて決めたいと思います。


詳しいことは当日本会場にて説明させていただきます。


つきましては来週の8月8日の正午までに、わがタマニアの本社の丁度西に位置する白いビルにいらっしゃっていただけるようお願いします。


ですが、本企画は自由参加になっておりますので、正午までに来なかった場合は不参加という形で処理させていただき、今後の生活にはペナルティー等は一切ございません。


あなた様の参加心よりお待ちしております。




                                         敬具


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