寝坊と母性
「ふわぁ」
大きなあくびをしながら俺はベットから起き上がる。ふと時計を見るとベットに横たわった時間から12時間が過ぎていた。
「どわぁ!!!!」
自分でも間抜けだと思うような大きな声で跳ね起きる。
いやいや!?どんだけ寝てんだよ俺!?いくら疲れていたとはいえ12時間も人の家で寝るのは異常だろ!?
そんなことを思いつつ俺は急いでバックを取り部屋を飛び出した。
部屋から出て今に向かうと真央がエプロン姿でおり、こちらを見るなり目を見開いて驚いた。
「龍久さん!?いらっしゃったんですか!?何度もへやにお呼びに行っても返事がなかったものですから。どこかへお出かけになられたのかと」
「あははー寝ちゃっててさー」
12時間も寝ていたとは恥ずかしすぎて口にできないと思ったので適当にごまかしてその場を立ち去ろうとしたが、不意に真央に腕を引っ張られた。
「寝てたって、、、昨日私と家で会話した時からずっとですか?ということは、、、昨日から何も食べてないってことですよね!」
「ああ、、、そうなるな」
彼女のあまりの迫力についおののいてしまった。
いくら彼女が心優しいとはいえここまで心配してくれるのは少し不思議でもあり意外だったからだ。
「丁度昼食を作ったんです。お出かけをするなら少しだけでも食べてからにしてください!」
そういうと彼女はキッチンのほうへ足早に向かっていった。
ああ、なるほど。だからエプロン姿だったのか、と納得しつつ俺は目の前にある座布団に座り、彼女が昼食を持ってきてくれるのをおとなしく待った。
しばらくすると、目の前に山盛りの焼きそばが鎮座していた。ソースのジューシーな匂いが鼻腔をくすぐる。
「あの、、、真央さん?これが少し、、、?」
おれが恐る恐る問いかけると、真央は少し心配した様子で
「あれ?ちょっと多かったですか?男性の方ならこれくらいが普通だと思ったので」
ちょっとじゃない。ものすごく多いんだ。
「いや、そんなことないよ。少しって聞いてたから驚いただけさ」
俺はそう言い目の前の焼きそば討伐に取り掛かった。せっかく作ってくれたものに量で文句をつけるのは流石に良心が痛むからな。
それから数分後胃が悲鳴をあげながら、何とか完食し、俺は出かけることにした。もちろん取材にだ。
外に出ると日差しがまぶしかった。もう午後2時過ぎだから当然だが、俺の住んでるところは比較的都会なので周りのビルに日航がさえぎられてここまでまぶしくなることはなかった。
聞き込みを開始するため、崩壊町の中心部と呼ばれるところに向かっていると、不意に先ほど俺が焼きそばを完食したのを見た真央の笑顔が脳裏に浮かんだ。あのはじけるような可愛らしい笑みを見れただけでも完食した甲斐があった。もちろん焼きそばも十二分に美味しかったのだが。
そんなことを思いながら軽やかなステップで歩き続けた。