表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの日の遠回り

掌編小説です。ガールズラブを題材にしていますので、苦手な方はブラウザバックをお願い致します。

 だるい授業を半分寝ながらやり過ごし、気が付けば教室は夕陽でいっぱいになっていた。


明里(あかり)、帰ろ」


 教室の扉からぴょこっと顔を覗かせたのは、幼馴染みの月乃(つきの)だった。家が道を挟んで向かい側なので、バイトのない日はよく二人で帰っている。


「ん、ちょっと待って」


 散らかった机の上を急いで片付ける。片付けるといっても、シャーペンと教科書を鞄に詰め込むだけだ。


「お待たせ」

「今日は久しぶりに遠回りしようよ」

「いいね」


 月乃の黒髪が嬉しそうに跳ねた。

 校舎を出て、いつもは通らない道をゆっくり歩き出す。

 今日はね、数学の時にさと、月乃が今日あったことを面白おかしく喋り出す。私が相づちや笑いで返していると、突然月乃が歩みを止めた。

 後ろを振り返ると、月乃が真っ赤な顔をしてこちらを見上げていた。


「えっ、どうかした?」

「ねえ、怒らないでね?」

「悪いことしたの?」

「今からするの」


 月乃はくるりと後ろを向き、なにかの準備を始める。数秒後にまたこちらに向き、私を見上げた。


「新しいリップ付けてみたの、どう?」


 それのどこが悪いことなのだろう?疑問に思いながら月乃の唇を見る。

肌の白い月乃によく似合う、桜色のリップが唇を彩っている。


「かわいいと思うけど、それがどうかし――」


 唇に、柔らかい物が押し当てられた。

 ふわりと桜の香りがする。月乃の大きな瞳が、驚いて丸くなった私の目を映している。


「ね、悪いことでしょ?」


 月乃の唇が離れ耳元で呟かれた。自分はキスをされたんだと理解したときには、月乃の姿は小さくなっていた。

 ドクドクと心臓がうるさい。

 緩む口元を隠しもせず、私は上機嫌にドラッグストアに足を向ける。


「同じリップ、買ってやろう」


それを付けてキスしてやろう。月乃の黒髪が跳ねるのが目に浮かんだ。


ありがとうございました。


掌編小説のお題を募集してます。気になる方はTwitterを覗いていただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ