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九話

「ごめんね、なんか悪い事聞いたみたいで」


「?いえ。父と母に村でお店を開いたらどうか?、とは言われたのですが」


「村にはそんなに人がいないもので……」



 どうやらご両親はご存命のようだ。よかった。



「それで成人したのを機に街へ二人ででたのですが……」


「街でお店を出すのには色々とお金が掛かることがわかりまして……」



 この開拓村や自分の生まれた故郷でお店を開く分にはそこまでお金はかからないらしいけど、街や都とかで新規にお店を開く場合、開業資金とは別に場所によるけど最低でも一人あたり金貨二十枚は必要になるとのこと。



「市民権が必要だとは知らなくて……」


「なので今頑張って貯金しています!」



 話の流れで大体のお金の価値もわかった。無理矢理日本円で直すと鉄貨が十円、銅貨が百円、銀貨が千円、金貨が十万位かな?銅貨の下や金貨より上の貨幣もあるみたいだけど一般人には馴染みのないものらしい。

 でもそう考えるとさっきの武器屋で見た剣鉈が三千円ってかなりお買い得じゃないか?ただ残念な事に手元には銅貨が数枚のみ。討伐報酬ですぐに貯まる額ではあるけど無手では挑みようがない。そんな事を考えているとさっきの親方の話を思い出す。



 ーーー範囲で幾らだが、そうだなぁ、ざっくり言って一本あたり金貨十枚ってところか。ーーー



 これ、一本()()()に任せてもらえないだろうか?いや、まずは二人に相談しないと。



「二人に相談があるんだけど」


「はい?」


「なんでしょう?」


「僕たちであの木を倒してみないか?」


「「……へ?」」


「僕に考えがあるんだ」



 ーーーーーーーーーーーー



 僕は二人に色々確認を取った後、親方さんの所へとやって来た。



「親方さん、ちょっといいですか?」


「ん?おお、忘れ物か?」


「いえ、ちょっとお願いがありまして」


「なんだ?」


「僕たちに木を一本任せてほしいんですが……」


「いいぞ」


「難しいお願いだと思いますがそこを……??へっ?いいんですか?」


「ああ、いいぞ」


 思ったよりもあっさり許可が出た。


「僕と姉妹の三人でやらせてもらいますが報酬で一本につき金貨一枚でお願いしたいのですが」


「ははは、嬢ちゃん方もやるのか?しかし一本で金貨一枚か。それじゃ安いな。一人金貨一枚でいい」



 スムーズに行きすぎて不安になってきたけど取り敢えずやるだけやってみよう。移動を始めた親方さんの後について行く。


 しばらく後をついていきながら親方さんに何故すぐに許可がおりたのか聞いてみた。



「ん?そりゃ猫の手も借りたいくらいだからな。一本あたり金貨十枚って言ったがありゃ一日一本倒せりゃそれぐらいだが逆に倒せなきゃその分稼ぎが減っちまう。やりたがる奴はいるっちゃいるがキツい仕事だからな。ちっと試したらいつの間にかいなくなっちまうんだ」



 確かにこんなバカでかい木を斧一つで切り倒すならキツいったらないだろう。まぁ斧を使うならね。



「にいちゃん達にやってもらうのはあれだな」



 そう言って指差す場所にあるのは森の外縁部。その奥には遠く徐々に高くなっているので果てまでは見渡せないけど見渡す限りの大平原が広がっている。

 指差された木に目を向けると無数の傷があるのが見えた。



「さっきも言ったがやりたがる奴が来た時は、まず試させてもらってんだ」



 無数の傷があるのは確認出来るが、それでもこのサイズだと樹皮が少し削られている程度。かなりのデカさとそれとかなり硬いのだろう。



「んじゃ、ちょっと仲間に準備させるからにいちゃん達も準備しといてくれ。おい!ウィスク!!」



 突然大きい声を出すものだからビックリしてしまった。姉妹も固まっている。少しすると遠くから、



「へぇーーーい!」



 と聞こえてきたので声のする方へ目を向けると、赤毛の男の人が降ってきた。木の上にいたのか?音もなく着地すると僕たちの前にやってきた。



「親方、どうしました?」


「おう、このにいちゃん達が試すってんで準備してくれ」



 ウィスクと呼ばれた男は親方さんと同じくらい背はあるが線は細くかと言ってガリガリなわけではなく引き締まった身体をしている。歳は僕と同じ位かな?

 親方さんにそう言われたウィスクは僕達を一瞥すると、



「……分かりました」



 と言って何処かへ走っていった。これからなんの準備をするのかは分からないけど一つ分かったことがある。僕達を見た時のあの目。あれは何も期待していない目だ。


 暫くするとウィスクが荷車に何かを積んでやって来た。大量のロープだ。ウィスクはそれの先端を持つと

 スルスルと木を登っていくとあっという間に見えなくなった。少し間を開くと登った方とは反対側からロープを持って降りて来た。



「よーし、お前らしっかり張れよ!」



 いつの間にかやって来てた親方さんの仲間達が二手に分かれてロープの両端を同じ方向に引っ張る。



「今、他所に倒れない様にしているからそれが終わればいつでもいいぞ」



 そんな話をしていると、いつの間にかロープの先端に杭が打たれて固定されていた。



「にいちゃん、見たところ何も持っていないが得物は何を使うんだ?なんならそこら辺の斧を使ってもいいが」


「いいえ、僕は斧は使いません」


「それじゃ剣か?」


「いいえ、剣も使いません」


「??にいちゃん、それじゃ木は切り倒せないぞ」


「はい、僕達は木を切り倒しません」



「「「「「……はぁ?」」」」」
















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