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八話

 その後も、倒れた木から木材を切り出す所を見学させてもらったりと色々見て回る事が出来た。


「んで、最後の締めはこいつだな!」


 最初に案内されたのは切り株の所につくなり親方はそう言った。


 切り株には穴が開けてあって丁度その穴に鉄?の一本棒を差し込んでいた。他にも三人いて親方さんと一緒にその鉄の棒を肩に乗せるよう腰を落とす。


「おっし!あんちゃん!ちょっと下がってろ!嬢ちゃん方!一人銀貨二十五枚でどうだ?」


「「分かりました!」」


 なんだかあれよあれよと進んで行き僕は一人蚊帳の外に出された気分で遠くから眺める。ミミとリリは切り株を挟んで向き合う形で待機している。


「「いきます!!」」


「「「「どっせぇいっ!!!」」」」


 そんな掛け声と共に切り株を貫通している鉄の棒を担ぎ持ち上げる。あの棒も不思議素材で無い限り僕ではとても持ち上げられそうに無い。


 四人であの大きさの切り株は流石に無理だろうと思っていたら、なんて事はない。ちょっと重いものを持ち上げましたと言わんばかりの勢いで地に張る根ごと綺麗に持ち上がった。親方さん達はそのまま息のあった動作で持ち上がった反動を利用し肩に担ぐ形だった鉄の棒を両手に持ち直し一度タメを作ると、ひっくり返すように放り投げた。

 ちなみにミミとリリは切り株が持ち上がった時点で反対方向へと走っていた。


「ふぅ〜、一丁上がりだ。やっぱ嬢ちゃん方の魔法は格別だな!」


「そうですね。この間来た野郎の魔法だと、持ち上げた瞬間俺ら首まで埋まりましたからね!」


「その分。姉妹の魔法はほんと丁寧だよな」


「助かる」


「「いえいえ、お安い御用ですよ!」」


 二人は笑顔で先程切り株を取り除いて出来た穴を塞ぎながら返事をした。

 確かに銀貨五十枚じゃ安いな!、と親方さんが笑いながらカードの様なものを取り出し二人と何かをしている。暫くして二人は離れて見ていた俺に気が付きこちらへやって来た。


「ハチさん臨時収入です!」


「やりました!」


 そこで俺はふと気になる事を聞いてみた。


「二人とも凄いね!あれは魔法かなにか?」


「はい、土魔法です」


「土を柔らかくする簡単なものですけどね」


 そんな話をしていたら親方さんがやってきた。


「ははは、簡単だなんて馬鹿言っちゃいけねえよ。柔らかくするだけなら簡単だが俺達の足元は固めたままで、しかも木の根っこも動かしてくれているんだ」


 引っこ抜かれた株を見てみると根っこが不自然に束ねられている。


「親方さん達が持ち上げても当たらないようにしてあるだけです」


「足元を固めるついででもありますし」


 もう一度切り株を見てみると、確かに親方さん達を避けるように根っこが束ねられているように思える。


「嬢ちゃん方に頼む時は根切りしなくて済むから楽でいい!」


「また機会があればよろしくお願いします!」


「ああ!こちらこそまたよろしく頼む!んで、だいたい一通り見てもらったがどうだ?」


「ありがとうございました!とても勉強になりました!」


「そいつは何よりだ!俺は毎日ここにいるから何かあればいつでも来い」


 豪快に笑いながら親方さんはそう言い、僕達はお礼を言って親方さんと別れた。


 取り敢えず作業の邪魔にならない様に門へ向けて歩き出す。


「二人はさっきみたいな手伝いをよくするの?」


「はい、たまにですけど」


「少し申し訳ないのであまり受けない様にはしていますけど」


「申し訳ない?」


「はい、直接ギルドから依頼された訳ではないので」


「報酬は親方さん達からの支払いになります。心苦しいと言うか申し訳ないと言うか」


 なるほど。二人が依頼を受けると親方さん達の取り分が減るから気にしていると。二人とも優しい子達だ。

 門が開くまではだいぶ時間がありそうなので少し踏み込んで聞いてみるか。


「いきなりだけど、二人はなんで冒険者になったの?」


「生活の為…ですかね」


「私たちは普通のお仕事につくのが難しいので」


 よくよく話を聞いてみると、さっき話してくれた種族特性のせいで職にありつけないらしい。…見た目小学生だしね。この世界でも差別や偏見の様なものもあるのだろうか?


「私達本当は…」


 二人はそこで言葉を切り、恐る恐るといった感じでこちらを見る。


「笑わないでくださいよ?」


「笑わないよ」


「私達…お花屋さんを開きたいんです!」


「いいじゃない!」


 二人が花を包みお客さんと接客する姿を想像すると自然と笑みが溢れる。


「「笑わないっていったじゃないですか!?」」


「ごめんごめん。二人がお店を切り盛りしている姿を想像したらほっこりしちゃって」


「「うぅ〜」」


 二人が顔を真っ赤にさせてフード越しに睨みつけてくるけどそれもまた可愛い。


「でも、どうしてお花屋さんなの?」


「…水と土の魔法が得意なせいかお花がとても元気に綺麗に育ってくれるんです」


「前に父と母に褒めてもらったことがあって…」


 そう言って二人は俯いてしまった。もしかしたらもうご両親は…





















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