四話
ギルドで気絶した女の子だった。するともう一人もフードを取ってお礼を言って来た。
「ごめんなさい。妹を助けてくれたのにお礼も言わずに」
恐らく双子なんだろう。そこには同じ顔が並んでた。
「気にしないで、困った時はお互い様でしょ」
俺はそう言ってしゃがんで二人の頭を撫でる。小学生位とは思ったけど低学年位か?思ったより小さい。姪っ子を思い出す。
二人は固まってしまった。いきなり距離が近かったかな?俺は手を退けてしゃがんだまま話しかける。
「ところでなんで朝から依頼を受けようとしたの?落ち着いてからでもいいんじゃない?」
すると二人は一瞬キョトンとしてから教えてくれた。
「もしかしてここには来たばかりですか?」
「今朝到着したばかりなんだ」
「やはりそうですか。ちょっと説明しますと、この開拓村には門が三つありまして正門以外は開く時間が決まっているんです」
「門が開くのは朝に一回、昼に一回、夕方に一回、それぞれ一時間です。私達はいつも採取依頼を受けるんですが門の周りはもう採り尽くされていて少し奥まで移動しないと無いんです。朝一で依頼を受けないとその日の内に村に入れなくなるのです」
おお、時間は時間でいいんだ。〜の鐘、とか〜刻じゃなくて良かった。
と言うかなるほど。何故あんなにも冒険者達が慌ただしくしていたのかわかった。
「教えてくれてありがとう。自己紹介がまだだったね。僕はハチ。ハチって呼んでね」
「私はミミです」
「リリです」
お姉ちゃんのほうがミミで妹がリリか。
「リリはもう大丈夫なの?」
「ご心配お掛けしてすいません。もう大丈夫です」
「本当にありがとうございました。いつもは私が依頼表を取りに行くんですが。忘れ物をしてしまって」
「冒険者達が寝泊りしている区画とここの一般区画の間にも門がありまして、急いで依頼を受けないと外に出ることも出来なくて慌ててしまいました」
門が三つあるって言ってたけど全部が外に出る門じゃ無くて村の中にも仕切りの様な門があるって事か。
その寝泊りしている区画が何処にあるかは分からないけど恐らくそれ程急がないといけない位の距離にあるってことかな?ってあれ?そう言えばさっき採取っていってたよね?
「さっき採取依頼って言っていたけど薬草採取?」
「そうです。報酬は安いですけど私たちではその他の依頼は難しいので」
「そっかぁ〜、それなら明日からはゆっくりで大丈夫だよ」
「「えっ?」」
「これから時間あるかな?依頼の受け方が少し変わったんだ。よかったら僕が説明するけどどうかな?」
「はい、お昼も食べたので大丈夫です」
同意も得られたので三人でギルドへと向かう。道中二人の事を色々知ることが出来た。二人は薬草採取を得意としているらしく開拓村など森の近くにある場所で活動しているらしい。
ただ最近、近場での採取が難しくそろそろ他所に移動しようか悩んでいたとの事。
それと衝撃の事実が。小学校低学年位かと思っていたら実は同い年。えぇ、全力で謝りましたとも。だって頭なでなでしちゃいましたからね。
「気にしないで下さい。種族特性で幼く見えるので、よく間違えられます。ハチさんだけでは無いですから」
彼女達は両親とも人族だが、恐らく遠い祖先に精霊の血が混じっているとの事。この世界では特別珍しい事ではないらしい。
「なので他の人よりちょっぴり魔法が得意だったりします。主に私が土と水で」
「私が土と風です」
やっぱり魔法のある世界らしい!話によると魔法は四大属性の火、水、風、土からなりその他にも色々属性があり得意属性は人それぞれ。
冒険者ギルドで得意属性を調べる事も出来ると言うので後で調べてもらおう!
ちなみに一般の人でも低級より下、いわゆる生活魔法を使えるらしい。
二人が歩きながら飲み水を出していたので真似してみたらあっさり出来てしまった。
小躍りしそうになったのをなんとか自制したけど顔はかなりにやけていたと思う。
そんなこんなでギルドへと着いた。
中へ入ると数名の冒険者に何やら説明しているエミリーさん達。一緒に入ったミミとリリは依頼表の方を見て驚いている。試しに聞いてみる。
「今までと少し変えたんだけど、わかる?」
「は、はい!凄い分かりやすいです!」
「すごい……ここまで見やすいのは今まで見た事ありません」
ミミは興奮した様に、リリは感嘆する様に言った。
「……この面はEランクとDランクの依頼で、その他はあっちの壁にあるんですね!」
「正解、他には何か気付いた事はある?」
「そうですね、ランクと種類毎に分かれて見やすいです」
「これなら少し遅れても直ぐに依頼を受けられそうです。……あれ?」
リリがそう言って他のランクの所へと小走りに確認しに行った。気付いたかな?
「どうしたの?」
「え?いや……薬草の納品依頼が見当たらなくて」
「そうだよ。ここから薬草の依頼書は撤去したんだ」
「「えっ?」」
二人の声が重なる。