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二話

 しばらくその景色に見惚れていたが視界の端にふと何かを捉えた。


 下を見れば鬱蒼とした森が広がっていて、果てまで続いているように思えた樹々が途切れ、そこから煙が上がっているように見えた。


 もしやと思い崖に沿ってまた歩き出す。


 だんだんと煙も大きく見えて来た時、踏み固められて出来た道に出た。煙の出てる方へ真っ直ぐ伸びている。


 その道を歩いて行くと徐々に集落の様な物が見えて来た。


 簡易的に作られた柵に少し頑丈に組まれた丸太組の門。そこに門番らしき皮の軽鎧を着た男性が一人。


「止まれ。ここへは何の用で来た?」


「えっとぉ、気付いたらここから半日程行ったところにいまして。ここから出てる煙を目印に来ました」


「……変わった格好しているな。口減らしか、可哀想に。仮の入場許可証だ。これを持ってあそこへ行ってくれ」


「ありがとうございます」


 ビックリして言葉に詰まってしまった。だって喋っている言葉は明らかに日本語じゃ無かったのに理解できたし。僕の言葉も伝わっていたみたいだし転移特典の一つかな?


 なんか色々勘違いしてくれたようで無事に中に入る事が出来て良かった。


 門番の人に向かう様に言われた場所へとやって来た。と言っても歩いて数十秒。周りの建物より少し大きく入り口には、


『冒険者ギルド出張所』


 と書かれた看板。


 おぉ〜早くも冒険者ギルドに到着!!はやる気持ちを抑えてドアを開け中へ入る。


 ここの作りが普通なのかはわからないけど酒場と併設はしていない。ギルド到着早々酔っ払いに絡まれるという名イベントは避けられそうだ。と言うか受付嬢以外誰もいない。


 ドアを開けて入った正面には受付カウンターがあり三席程設けてある。今は朝も早いので受付嬢は一人、しかも……寝ている。


 中を見渡すと右手の奥には壁がありドアのある壁と合わせて二面にびっしりと依頼書が貼り付けてある。


 看板も読めたので当然依頼書も読めた。薬草の採取依頼からドラゴンの討伐なんて物もある。んん〜ファンタジィ〜!


「ん、うぅん」


 夢の中から戻ってきたみたいだ。


「えっ?あれっ!あっ、すいません!」


「いえ、こちらこそ。先程門番の方からこれを持ってここに行くように言われました」


 仮の入場許可証を差し出す。


「え〜っと、ごめんなさい!ちょっと今から……」


「ごめんマリー!寝坊しちゃった!」


「あたしも〜ごめんね〜!」


 カウンターの裏から女性が二人、 駆け足で入ってきた。先に入ってきた女性が僕に気付き、にこやかな表情に変えて声をかけてきた。


「おはようございます。冒険者ギルド出張所へようこそ」


 そういった後マリーと呼ばれた受付嬢に渡した仮の入場許可証に気付き、


「申し訳ありません。まもなく依頼受付業務が開始されます。その後に登録手続き開始となりますがよろしいでしょうか」


「ごめんなさい。門番の方にこれを持ってここに行くように言われただけなのでこの後何をするのか分かっていなくて」


「では、簡単に。こちらで冒険者登録をして頂きます。登録後カードが発行され、それが身分証明書の代わりとなります。本来登録料に銀貨三枚掛かりますがこちらをお持ちの方は今後依頼を受けていただいた上でそこから最低一割ずつ引かせて頂く形になります」


 登録料が天引きされるのは正直助かった。だって一文無しだからね。お礼を言おうと口を開きかけると入り口のドアが開き、そこから沢山の人達が雪崩れ込んできた。


「申し訳ありません。依頼受付業務が終わるまでは端によりお待ち下さい」


 取り敢えず邪魔にならないよう言われた通り端による。


 その間さっき入って来た人達を見ると、全身鎧や大楯を装備した人達、皮の軽鎧を着た人や腰にダガーを装備している人達、中には杖を持ちローブを纏った人達もいる。おぉ!冒険者だ!!


 決して広くないスペース、大体二十畳位かな?に二十人前後の人達が、壁に貼られている依頼表を右に左に確認している。その際、武器や鎧がぶつかり合い怒号や罵声が飛び交う。

 と、その時とびきり小柄な白いローブを纏った人が弾かれるように飛び出して来た。


 そのままだと踏まれて怪我をしてしまうと思い、巻き込まれないように気を付けながら近寄るとどうやら気絶しているようだったので端に寄せる。


 フードから覗き見えるのは小学生位の女の子だった。


 そのまま横に寝かせて視界を冒険者達に戻すと、女の子の仲間かな?同じ様なローブを着た子が慌てて駆け寄りそのまま抱きかかえて外へ出て行った。


 他の冒険者は依頼が決まったのか依頼表を手に持ちカウンターへ駆け込む。一人また一人と我先にと集まり、先程と同じ光景がカウンター前でも広がっている。


 三十分位経ち、ようやく最後の一人の受付が終わるとマリーさんがカウンターに突っ伏した。


「おわったぁ〜」


 他の二人も苦笑いしている。マリーさんは僕が見ているのに気付き姿勢を正して声をかけてきた。


「先程は大変失礼しました。登録業務は登録と説明に少し時間をいただくので後回しにさせて頂く形になってしまいました。よろしければこのまま登録されますか?」


「もう大丈夫なんですか?」


「はい、ピークは過ぎましたので」


「いつもこんな感じなんですか?」


「そうですね。……でも今日はこれでもいつもより少し少ないんですよ」


「そうなんですか」


 ダメ元で言ってみるか。


「提案があります。もう少し楽に仕事をしたくありませんか?」


 うまくいけばさっきみたいな事故が減るはずだ。





















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