Phase3-1 Honest answer
「何故……そんなことを始めた!?」
"非日常"。
それは、今まで望団が戦い続けてきた"日常を破壊する悪夢"。
それの元凶が、一国の日常を握るはずの首相だったのだ。
「人間ってさァ……醜いよなァ…………」
「それとこれの関係はないだろ!」
「今から言うからァ……聞けェ……」
首相は、自分の過去を語り出した。
俺の幼少期は、虐められてばかりだった。
『運動音痴』だとか、『能無し』だとか言われ続けた。
そんな奴らを鼻で笑ってやるために、俺は勉強の末、上手いこと政治家になった。
だが、政党の下っ端だった俺は、上に色々言われ続けて、そういった変な規則が存在するのが嫌になってきた。
んで、俺はこう思った。
そんなルールまみれな世界など、ぶっ壊してしまえ……とな。
計画を実行に移した。
まずは、国のトップに立って、『ルール』をこっそりと破壊した。分からないように。
それで、歯向かうやつを殺して、『やりたいことの為にする恐怖政治体制』を築いた。
次に、大学だとか、研究所に『薬』の開発を急がせた。
恐怖政治は便利だ。ここで脅して、やりたいように物を作らせられる。
そして出来上がったのが、『細胞分裂増強剤』だ。
生物の細胞分裂の限界を無理やり引き伸ばし、巨大化させることを現実にした。
少し話が変わるが、俺には2人の子供がいた。
まずは、東山ユウカ。
頼れる姉って感じだった。模範的な姉に育ったと感じた。
そして、年齢差10歳の東山リョウ。
そいつは、脳の医者から友達を欲しがらない子供になると分析された。
そういうことで、割と関係があった北原家の双子の片方であるミヅカを、まだ2歳の頃に貰って━━
「待て! ……リョウとミヅカは双子でもなければ、血縁関係さえもないのか……!?」
タクミが、話を遮って『双子』の件を口に出した。
「正解ィ……。あの馬鹿には何も説明してないからァ……互いに双子だと勝手に認識してしまっているなァ……」
「ということは……ミユとミヅカが双子……いや、見た目が違いすぎる」
「二卵性双生児ってやつだァ……お前がイメージしているのは一卵性双生児だァ……」
「偶然似ていたから、ミヅカを引き取ったのか……?」
「まぁなァ…………」
「お前は……1つの姉妹の運命を狂わせてるんだよ……」
タクミは、この話に対して猛烈な違和を感じていた。
それで、計画の第二段階。
最初に、ユウカを毒殺した。
そうすることで、リョウ達を北九州に飛ばさせることが出来るだろう?『殺し屋に命を狙われている』って理由を付けてな。
それで、あの2人を北九州に飛ばさせた。
だが、まだ計画の『第三段階』には移していなかった。
実験が長引いたり、途中で俺が病に倒れたからな。
んで、俺が政界に戻る直前に、『リョウ達がいる北九州をぶっ壊せ』という指示を送った。
実行は2019年4月6日。そうするように、北九州の役所の連中と、北原家に言った。
「ふざけるなよ……」
タクミが、感情を露わにした。
「流石に……論外な話だわ……」
アヤカも、怒りの下に拳を握っていた。
「なぜそんなに怒っているゥ……?」
「当たり前だ!!! 俺達がいる学校が……今までの"非日常"に関わっていたんだから……!」
「愚かすぎるわ。ふざけた計画のせいでリョウの感情が狂ったのだから」
「何を言っているんだァ……?」
首相は、今のようなリョウが出来上がったきっかけを知らなかった。
「リョウは、姉を失ったせいで性格が180°変わった。私が勝手に分析しただけなのだけど、本当な気がする」
「馬鹿みたいな話だァ……。フヒッ……もういィ……。そろそろクワガタが巨大化するゥ……。頑張って戦えェ…………」
「逃げるな! おい!」
首相は、クワガタを放置して立ち去ろうとしたが……
「逃げるな。クソ親」
前に立ちはだかった、低い背の、男……だと見ていいのだろうか。そんな姿。
白地に赤帯。足に備え付けられた、飛行機のエンジンのような機械。
「ここまで来てェ……歯向かうかァ……?」
「いつまでラリってるんだ! 正気になれ!!」
ギリギリ届く首相の頭を殴ったのは……
「リョウ……お前、生きてたのか」
「大丈夫……みたいね」
西原……いや、東山リョウだった。