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Phase4-2 My responsibility

使えば死ぬ。


デバイスに、そんな諸刃の剣を仕組んでいたリョウ。


「え……嘘……もう……3番のボタン……押しちゃったよね…………」


リョウは、それを発動させる『(ボタン)』を押した。


「ミユも……東山カズヒロ、お前も……見ておけ。これが、最後の生きた証だ」


そう言って、3つのボタンを、3、2、1、2、1、1、3、1、1、1、2、3の順番に押した。


瞬間、凄まじい光が天からリョウに降り注がれた。




それは、数百メートル離れていても鮮明に見えた。


「なんだあの光……」

「何が……起きているのかしら……?」


その光が示す意味を知らぬまま、飛ばされた衝撃で動けないタクミとアヤカは、その光を眺めていた。




その姿は、赤地なのには変わりない。

だが、帯の色は7色となり、更には装甲が、胸部装甲の上部が赤、下部が青となり、右肘装甲は橙色、左肘装甲は水色。肩部装甲は右肩が緑、左肩が銀。膝部装甲は、右膝が紫、左膝が黄色。

ヘルメットは黒と白を基調としていた。

それらの色合いは、まるで望団の全てを組み合わせたかのようなものだった。


「お前……何だそれは……」


「『Xバースト』。これを使えば、確実に敵は殺せる。己の命と引き換えにな。この場合は、それに見合った状況だから使った。そこで待っていろ」


武器はない。

リョウは駆け出し、カブトムシのいる方へと向かった。




カブトムシは、戸畑駅前で人々を捕食していた。

親子からは逃げる時に転んだ子を奪い、一緒にいる男女からは女を庇った男を奪った。

口からは唾液を垂らすように血液が垂れ落ちて、稀に肉片や骨も落ちてきた。


人々が怯えている。


その時、自分を殺すことになる7色の帯を纏った英雄が、カブトムシを殴った。

そして、レバーを引き、力を溜めて、その全てを拳に託し、カブトムシの顔面を吹き飛ばした。


『!?!?!?』


カブトムシは、顔面から崩れた。

カブトムシの体液と、餌とした人間の血液が噴出する。


「エグい……」


街の人々は、その絵面怯えていた。

しかし、怯えている間にも、7色の帯の英雄は立ち去っていた。

その英雄は、カブトムシの角を持ち去った。




「倒した。これで、"非日常"はおしまいなんだよな?」


リョウは戦利品である角を首相に投げ渡した。


「新たな方法を考えねば……」


「そうはさせない」


「何ッ!?」


その場から立ち去ろうとした首相を、力が溢れるその腕で止めた。そして、カブトムシの角を手に取り、


「お前……まさか……」

「そのまさかだ。『責任』。そういうことだろ?」


この状況を見たミユは、その二文字の意味に気がついた。


「━━リョウ、『責任』って……『敵討ちと己の死』なんだね……」

「正解だ」


ミユが、その答えを言った。


━━それは正解だった。


「最後に頼みがある」

「何……? なんでもいいから……」


今にも泣き出しそうな声で、願いを聞き入れようとするミユ。



「━━"日常"を取り戻してくれ」



リョウは、最期の願いをミユに託し、カブトムシの角を首相に力任せに━━



「さよなら、親父」



━━刺した。


首相の胸に刺さった角。

口から血を吐いて、首相が倒れた。痙攣している。


「━━最初と最後の"非日常"の存在は……お前だな」


生体反応を示す数字は0。

姉達の敵は討った。


そして、デバイスのレバーを元に戻そうとしたが……


「待って!」


ミユが、後ろからリョウに抱きついた。


「これを戻したら……死んじゃうんだよ!?」


そんなミユの叫びは届かなかった。

リョウは、黙ってレバーを戻した。


変身が解除された。


リョウの口からは、大量の血が吐き出され、身体中に刃物で切られたかのような傷ができていく。勿論、そこからも血が流れ出ていく。


リョウを抱いているミユの腕は、吐いたり吹き出たりした血が大量に付着していた。

リョウの身体中から傷が出来る訳だから、ミユの全身にも血が付着する。


ミユは諦め、そっとリョウを寝かしつけた。


「━━カッコよかった。とにかくカッコよかった。もしも生きてくれるのなら……せめて好きって言いたいのに…………」


ミユはこの現実に耐えられず、涙を溢れ出させてしまった。


「……ュ…………」


「ッ!?」


「ぉ前は……最後の最後まで……俺一筋だよなぁ……」


「リョウ!? 死なないで! 一緒に……日常を……見ようよ……」



「俺が……日常を見る資格は……こう生まれた以上……ない…………な………………」



リョウが薄くなっていく目を閉じた。

ミユが生体反応を確認するが━━


「━━リョウ、本当は見たかったんだよね……顔は嘘つかないよ…………」


リョウの目からこぼれる血混じりの涙。

それは、放った言葉とは真逆の意味を成していた。


━━数字は、カウントダウンのように減少していく。


ミユは、そのカウントが『3』になった時、リョウの傷が開いた箇所のある額に口付けをした。



「ありがとう━━━━」



━━━━カウントは、『0』になった。



━━タクミとアヤカが到着した時、倒れており、血混じりの涙を流し、少しだけ口角を上げたリョウの正面で、ミユが横たわっていた。手を握りながら。



~~~~~~~~~~~~~~~



東山首相の独善的な思想により発生した"非日常"。


それは、1つの家族を巻き込んだ。


首相の"計画"により、その家族に生まれた双子は引き離された。


その片方は、首相の子の双子として扱われることになった。


"偽りの双子"は、そのまま"双子"と思い込み、北九州に飛ばされて以降もその関係だと勘違いしたまま、ずっと成長してきた。



ある日、"計画"が実行された。


役人により、薬剤を注入された動物達は巨大化、凶暴化し、街を破壊して行った。


だが、そんな悪夢に立ち向かった学生集団があった。


首相の子を団員に含めた集団は、その悪夢にいつも立ち向かって行った。



しかし、戦っていくうちに団長が戦死した。


混乱の中、"双子の妹"が戦闘したのだが、負荷に耐えられず死亡してしまった。


相次ぐ死による暗い雰囲気を、どうにか払拭した学生集団に、更なる闇を吹きかけたのは首相。


理不尽に団員を殺し、さらには息子を拉致し、自分と戦わせて団員を戦死させた。


その中で、2人の仲の良い女子も、己の死を対価にして戦った。


明らかになった真実は、首相の子に『責任』を実行させる燃料になった。



その『責任』は、独裁に怯える国を救った。


彼は、『父親の責任とその血を背負う責任』を感じたのだろう。


そんな犠牲によって成り立った今の日本は、永久的に国民主権の国になることだろう。


それが、西原リョウ、本名・東山リョウが望んだ『責任』と、その対価なのだから。




「━━私の口から言いたいことは以上です」

「北原首相に質問ですが……その責任については、どのようなご意見を?」

「そんなもの、意見も何もありません」




今、こうして議論を交わせられることが、『責任の対価』なのですから。

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