Phase4-1 Last "nightmare"
カカシは多分元気です
タツヤが合流し、現場にはリョウ、ミユ、タツヤ、アヤカの4人が揃った。
「少ないわね」
「ああ」
リョウとアヤカは、変身解除をしなかった。
アヤカは、確実に来るであろう『カブトムシ』の為に。
リョウは、確実に来るであろう『父親』の為に。
「お見事だ、望団」
どこかから聞こえてくる拍手の音。
その時、背後のマンションの陰から出てきたのは首相だった。
「……俺は、『責任』を果たさなければならないようだ」
リョウは、首相の存在に直ぐに気付いた。
「そうかいそうかい。そういう言い方をするということは、事実を知ったのだな?」
「ああ。北原家のことも、お前の所業の全ても…………何から何までな」
「さぁ……もうじきカブトムシの時間だ。お前達でどうにかできるかな? あ、この機械は使い物にならんから返す」
首相は、持ち逃げしていたデバイスを、ミユに返した。
「"非日常"の時間だ」
ミユが受け取った瞬間、マンション付近から巨大化したカブトムシが出没した。
と、ここでリョウが改良後の再使用待機時間について触れる。
「……お前が変身を解除してからまもなく1時間だ。改良してからは、再使用待機時間を『絶対に一時間』とした。お前は、武器を渡したんだ」
「なにっ!?」
まさかの事実に、首相も、ミユ達も動揺を隠せなかった。
「じゃあ、俺も……」
「いける。伝達不足で申し訳ない」
リョウは言った。
タクミのデバイスは、再使用できると。
「今生き残ってる4人で、"非日常"と戦う。━━あの掛け声を言おう」
「お、言う気になったんだ」
「今までためらってたのにな」
「人らしくなったわね」
「こいつの前でいつもの態度でいるのは気持ちが悪い。だから━━」
『Go! RisingStreet!!』
ミユとタクミが変身し、4人が一斉に走り出す。
まずは、タクミがカブトムシを電流で縛る。
痺れて動けず、脚を痙攣させるカブトムシ。
そんなカブトムシに対し、アヤカが選択した属性は……
「ここで……光ね」
光。
放たれる電流の光。それは、カブトムシの眼に向けて進んで行った。
「カブトムシが……失明したか……?」
「電流を止めてみて」
タクミが電流を流すのを止めた。
直後、カブトムシが不安定な飛行を開始した。
「失明したな。ただ、放置はできない」
「なら、闇の力で叩き落とす」
アヤカが闇属性を選択し、即座に重力を局地的に操作し、カブトムシを叩き落とした。
「で……どうするんだ」
リョウは、この先どう戦うかをアヤカに聞いた。
「スピード勝負。風の力よ」
今度は風属性を選択した。
無数の残像が帯を形成する。
その帯の中心辺りに、傷がカブトムシの甲につく。
一部はヒビが入っている。
しかし。
「羽を広げちゃった!?」
「まだ動くのかよ!」
カブトムシは羽を広げ、再び飛行した。
それに合わせて、ミユがブースターを起動した。
直後に、リョウもブースターを起動した。
「アヤカとタクミは下で待機。俺とミユでこいつを落とすから迎え撃て」
「「了解」」
リョウとミユは、空気を割るように飛び立った。
「ちょっと!? こんな奴を倒せって言うの!?」
「ああ。これが、俺達がやることだ」
「あーもう! 分かったよ! この先は、全力で戦っていくからね!?」
空中でカブトムシと交戦する2人。
ミユは、やや苦戦していた。
(夢で見たような……気のせいか)
「全力でやる。Sブーストだ!」
「了解したっ!」
謎の既視感に囚われながらも、リョウがSブーストを使うことを指示した。それを、ミユは了承した。
2番のボタンを押して、
「「Rising! Supreme motion!」」
何故か息が合った掛け声を発した。
そして、レバーを戻し、再び倒した。
紅き炎と、蒼き水が入り交じる。
それらはそれぞれに向かっていき、2人は普段とは違う姿になった。
リョウは本日2度目だが、ミユは初めてである。
「おお……なんだか強そう」
「そうだ。こいつで撃ち落とす」
強化された2人は、カブトムシのヒビを狙って銃を撃った。
しかし……
「だめ……!?!?」
「嘘だ……クワガタには効果があったはずだが」
銃弾をものともしないカブトムシ。
カブトムシは、リョウとミユに突進した。
2人は、バランスを崩して、ブースターによって逆に地面に叩きつけられた。
「うがッ!」
「あぁっ!」
隕石のような速さで地面に叩きつけられる2人を見たタクミとアヤカ。
「まずい……2人で粘るぞ」
「そうね」
接近するカブトムシに、武器を構えて立ち向かうタクミとアヤカ。
「来るぞッ!!」
プロペラ機のような羽音を響かせて、地に向かうカブトムシ。
「━━速すぎるッ!!」
「タイミングが掴めないわ……!」
手も足も出ない。
速すぎるカブトムシは、2人に向かって体当たりした。
あまりに速いカブトムシに正面から衝突し、数百メートル突き飛ばされた。
「━━もう、これしかないか」
リョウは、この戦況を見て、全てを察したかのようなことを言った。
そして、首相に問う。
「東山カズヒロ。これが最後の"非日常"なのか?」
「まぁ、これが最高傑作だからな。固い甲と機動力。これが最後だが、放置すれば北九州は壊滅だな」
「なら、ここで『責任』を果たすか」
そう言って、リョウは『3番の』ボタンを押した。
直後、リョウ以外全員の変身が解除された。
「え!? ……リョウ!? 何するつもり!?」
変身を解除させられたミユが叫んだ。
「『3番を使う時は要相談』。これの意味の1つは、使った奴以外全員の変身が解除されることだ」
「1つ……? まだあるの?」
「ああ」
7色の光に包まれるリョウ。
すると、リョウがどんどん苦しむようになった。
「リョウ!? 大丈夫!?」
「あと1つの意味を言っておく」
『使えば、変身解除後の負荷に耐えられずに死ぬ』
「え……」
リョウの口からは、あまりにも残酷な事実が告げられた。