Phase3-3-another Knowing truth
「ミユは何処にいる!? 言え!!」
警察署の受付に、銃口を突きつけてミユの居場所を探るリョウ。
それは、まるで強盗の様である。
「拘留してます……」
「分かった」
リョウは、拘留所へと向かった。
ミユは、椅子に座って願っていた。
(リョウが助けてくれる……絶対に!)
「まだ願っているのか。まぁ、少し話をする」
「どうでもいい話は聞かないよ」
「いや……首相の話と、お前の親とかの話だ」
監視役が、話を始めた。
正直に言う。
俺は今の体制を嫌っている。
面と向かって話はできないし、何かあれば殺される。
こうやって言えるのも、この拘留所故の話だ。
俺は先代の総理のSPを務めていた。
しかし、政権交代が行われて職を失いかけた。
運良くここに流れ着いたが、それでも昔ほど金は入らない。
俺には、4人の子供と、要介護の両親がいる。
今の給料では、とても賄えなくなってしまった。
だからと言って、あいつのSPをしようとは思わない。
変われないから、俺は……
「何を言ってるの?」
「え?」
「変わろうと思ってない癖に事を語らないでよ」
監視役の話を、ばっさりと切り捨てた。
「もう話は……」
「いや、主将と北原家の関係とかの話が残っている」
「え……?」
監視役が、話を続けた。
「あの人は、北原家に『西原リョウ』と『西原ミヅカ』の2人を送り付けた。内容は、『姉が反政府組織に殺された、狙われるから匿ってやってくれ』だった。そう言われただろ?」
「……うん」
ミユが頷いた。
これが、ミユが聞いている事実だ。
「申し訳ないが、約10年間信じていたその話は偽りだ」
「え……!?」
首相は、この日本の『ルール』といったものを、何故か強く憎んでいた。
そこで、『頂点に立って、ぶっ壊す』を実践することにした。
まずは法律などを弄った。
それで、『反逆因子』を消すことが出来るようになった。それで容疑をかけられる罪状が、『反逆罪』なのだ。
それを整えた、つまりは脅しの材料を組み立てたから、次にやることは『街を物理的に壊す』ことを実践することにした。
しかし、部隊を出動させたりすると、世界各国から狙われてしまう。
そこで、汚い手口を考えた首相は、『原因不明に見せかけられる兵器』を開発することにした。
大学や研究所に出向いて、『動物の細胞分裂の限界突破』と『巨大化』を促進させる薬剤を作らせた。
勿論、大学も研究所も反対した。
しかし、ここで『反逆罪』の出番だ。
歯向かえば殺される。その恐怖から、やむを得ずに開発させられることになった。
並行して、『どこから壊すか』を考えた。
そこで、学校運営で儲けていて、『孤児院が存在する』北原家を狙った。
その内容は以下の通りだ。
0,計画の実施の前に、『反抗武器を作る分の頭脳』を、リョウに組み込ませる
1,まずは、北原家に生まれた双子のうち、リョウに似るとされたミヅカを引き取る
2,リョウとミヅカを双子であると偽装する。検査等も、圧力で通す
3,家庭内では『双子』ではなく、『兄妹』と言うようにする
4,兄妹云々の話の違和感に気付いた段階で、姉であるユウカを組織に狙われたと見せかけて殺す
5,リョウとミヅカを北九州市内の孤児院に入れる
6,北九州にて『兵器』を試用する
7,それで、『偽りの双子』がどう動くかを確認する
そんな感じだ。
「え……待っ……て……」
その話の中には、ミユが知らない衝撃的な内容が多く含まれていた。
リョウとミヅカが双子では無いこと、自分とミヅカが双子であること、"非日常"の元凶が首相であることなど。
しかし、ミユが信じたくないことが1つあった。
"非日常"に対する、北原家の関与の程度だ。
監視役は、動揺するミユをやや心配そうに見ていたが……
「いいから……続きを」
話の続きを求めたため、話を続けることにした。
北原家は、当初は反対した。
『北九州を壊したくない』と。
しかし、『反逆罪』の存在と、巨額の裏取引を持ちかけられた。
裏取引の額は、史上最大規模だった。
それ程、ミヅカが欲しかったのだろうか、それとも、あまりにも計画に都合がよかったのか。
そんなこともあってか、北原家は契りを交わすことにした。
双子を『双子でなく』させて、一人っ子にした。
街のことよりも、我が命と金を優先させた。
娘なんかどうでもよかった。
SPという立場である以上、この話を聞いていた訳だが…………
「これを事実と見るかは、そっち次第だ」
話が終わった。
ミユは、足と手、さらには目も口も震わせ、余りの衝撃に失禁し、言葉を完全に失ってしまっていた。
「ぇ…………そん……な…………」
状況が処理できないし、出来るわけがない。
状況が理解できないし、したくない。
状況が信じられないし、信じたくない。
ミユは、頭を抱えて、塞ぎ込んでしまった。
その時。
ドアを開ける音。
直後に銃声。
肉と血が飛び散る音。
「リョ……ウ……」
監視役を撃ち殺した、赤地に白帯のスーツに、黒地に赤帯のパーカーを羽織った者。
━━リョウだった。
「━━ごめんね……全部……全部言うから…………殺して…………」
「何を言っているんだ!? とにかく話せ!」
ミユが、全て話すから自分を殺せと懇願してきた。
リョウは、混乱しつつも、ミユの話を聞くことにした。
「私の家族の話から━━」
「━━そうか」
「だから……殺して……」
「殺さない」
「え?」
「俺はお前を殺せない」
「何で……?」
「お前は、俺と同じ被害者だ。きっと、こいつもそうなのだろうが…………」
「監視さん……」
「……最後にすべきことが分かった。それで、"非日常"は終わるのだな」
「きっと…………そう」
「ミユ、ここから出るぞ。」
「……うん」
再び、戦場に戻って行ったのだった。
暴走したミハヤを止めるために。
「アヤカ、残酷なことを言うかもしれないが……」
「何かしら」
「『Sブースト』を使って暴走してしまったら、殺す以外に道がない」
「……開発者なのでしょう。どうにかしなさいよ!」
「━━今のミハヤなら行けると思った。だが、それは油断というものだった」
「それを、ヒカリに言え……と」
「ああ。言葉を濁らせるかどうかは任せる。ただ、あいつのことだ。理解するだろう」
「なら、直接言いなさい。私がヒカリの横に行ってくるわ」
「ああ、頼んだ」
━━責任しかない。
━━今の俺には、責任を果たすしか、償いへの道はない。
その覚悟の下に、この件をヒカリに告げよう……。
…………許してくれ。
~~~~~~~~~~~~~~~
━━そうか、そういうことか。
俺は理解した。
ミヅカの性格が、俺とかけ離れていて、そしてミユと仲が良かった理由を。
俺は理解した。
姉貴を殺した犯人があのクソ親だということを。
俺は理解した。
北原家は、迫害に負けて故郷を捨てたことを。
俺は理解した。
故に、ミユは『被害者』なのだと。
俺は理解した。
今まで、俺達が戦い続けた"悪夢"の元凶が、父親なのだと。
━━今、俺がすべきことは二つある。
それは、俺があの親を殺すこと。
そして…………
『責任』を果たすこと。