戦況
「この状態で聞くのもなんですが、腕、大丈夫ですか?」
戦闘の際はどの程度動けそうですか?という意味だ。
「ああ、片手でもマシンガンは撃てるさ。それに腕もまぁこの程度、問題ない」
「まじすか」
腕一本無くしたのは大問題な気がするが、会話にはどことなく余裕が感じられる。
「手持ちはブルちゃんのマシンガン、アタルんとあたしの拳銃くらいかぁ」
早くも変なアダ名が付いてる気がするが、今は置いておこう。
「この威力、スナイパーライフルというより機関銃みたいですね」
会話しながらマップを確認する。
現在地は草原を背にした森の南側。
スナイパーは反対の北側にいるとなると、距離から推測すに向こうも海岸から森に入ったばかりのようだ。
マップを探ると、ちょうど木々が目隠しとなるようなルートで、地形的に袋小路になっている岩場を見つけた。
「ブルさん、そこの木々伝いに向こうの岩陰までいけますか?」
「おう、動けはするが。一旦退くのか?」
「いえ、距離的にはまだ遠いですが、この地形を考えるとすぐ詰めてくるはずです。戦闘は避けられない」
このまま相手と反対方向に退いた場合、隠れ場所の無い草原に出てしまう。
複数人相手でしかも一人はスナイパーとなると、遮蔽物の無い草原に出るのは自殺行為だ。
まして、負傷しているブルさんには機動力は期待できない。
会敵した場合は、最悪正面からマシンガンで迎え撃てる形で待機してもらう。
「開始直後で向こうもまだ態勢は万全ではないはず。ここで叩きます」
いつの間にかこの状況に馴染み、自信すら湧いてくる自分がいた。
FPSをプレイしている時のように、頭が冴えているのがわかる。
「そうだね、いきなりジリ貧だけどやるっきゃないね!」
「初陣にしては丁度いいハンデだな!ガハハ」
悲壮感が微塵も感じられないのは心強い。
「スロープはものすごく目がいいから、索敵は任せて!」
「よし!ではブルさんは向こうの岩陰に移動、シェスはブルさんの進路をカバーしながら索的をお願い」
「索敵が成功したら、俺が詰めてくる奴らに奇襲をかけます」
「俺が注意を引きつけている間に、シェスの機動力でスナイパーを詰めてくれ」
「了解!」
「ラジャ!あとシェスカね!シェスじゃないよ〜!」
スナイプされた方向から死角になるようなルートを選び、俺たちはそれぞれ移動を開始した。
勢いでつい仕切ってしまったが、みんな従ってくれたのはありがたい。
とはいえ、シェスが言うように態勢は最悪だ。
こちらは1人手負い、しかも退路が塞がれている状況で、3人を相手にしなければならない。
また、無警戒のところをスナイプされた時点で、ある程度観察され、こちら側の装備や構成を把握されているのは確実だ。
この状況で最前と思われる指示は出したものの、索敵、奇襲どちらを取っても失敗はできない。
言葉に出さずとも、二人ともそれは理解している。
改めて考えると、ジリ貧どころか、絶対絶命だった。