3人目 (挿絵あり)
ーーー殺し合い。
おじさんは、まるでそれが日常の一コマのように言い放つ。
話が唐突なのと、現実離れしているのとで、逆に頭が冷静になった。
「あれ、でも3人ひと組なら、なんで自分たちは2人だけなんですか?」
「ん?まぁ本来であれば固まって転送されてるはずなんだがな。まぁアイコン的には近くにいるようだし、生きてりゃそのうち会えるだろう」
殺されるかもしれないというのに、おじさんは終始楽観的だ。
参加者は傭兵や賞金稼ぎがほとんどというから、キモが座ってるんだろうか。
体格も合間って、頼もしさを感じる。
おじさんは迷彩柄のような服を着ているが、所々にあしらわれている鳥のような模様やフェイスペイントのために、どこかの民族のように見える。
俺が着ている服も迷彩柄だが、よく見ると全体的に真っ青だ。
FPSでよく使っていたスキンにどことなく似ている気がする。
「あの、おじさんは……」
「おお、すまんすまん、名乗ってなかったな。ワシはブルジル。ガント族だ」
やはりどこかの部族の人なんだろうか。
「さて、自己紹介も済んだ事だし、武器を探すぞ。木のうろをたどっていけば、何処かに武器が落ちてるはずだ」
そう言って話を切り上げると、ブルジル…ブルさんはすぐ近くの大木を指した。
さっきの説明によると、参加者は公平性を保つため、丸腰で転送されるらしい。
武器は島のいたるところにあらかじめ設置されていて、早い者勝ちで装備を整えていく。
「このルール、まんまFPSだな……」
もしやゲームの世界に転生でもしたのか?
なんて考えながら、とりあえずブルさんが指した木の周辺を探索した。
そのままいくつかの木々を探っていくと、数箇所目で木箱に入った拳銃と弾薬を見つけた。
「おお、そっちも見つけたか」
ブルさんは小さめのサブマシンガンのような銃を持っている。
ブルさん自体大柄なので、まるでおもちゃを持っているように見える。
「さすがに銃の扱いくらいは覚えてるよな?」
触ったことないです。
とは言えず、とりあえず手に取ってみる。
「ええと、弾を……」
マガジンを確認し、手癖のように前方に向かって照準を合わせる。
自分でも驚くほど自然な動きだった。
「様になっているじゃないか。ようやく調子が出てきたな」
木箱の中には、ホルスターと共に消音器も入っていた。
諸々ここで装着しておく。
サプレッサーの装着手順や銃の構えかた等、長年身体に染み込んでいるようにスムーズに身体が動く。
ゲームの世界に入り込んだようで、少しワクワクし始めている自分がいた。
俺が装着し終えると、ブルさんも丁度準備が整ったようだった。
「ちょっと装備が心許ないが、この辺りじゃこんなものだな。とりあえず移動しよう」
ブルさんは左腕に巻いた時計のようなものを確認した。
これはこの世界では一般的に普及している、時計型のマルチ端末らしい。
マップを確認したり、アイコンで仲間との位置を確認したり、マーカーを付けてチームで共有したりと、色々便利な機能があるようだ。
俺は手首やポケットの中を探してみたが、それらしい物は持っていなかった。
「ん?ノーマンはこんな物を使わなくても確認できるんだろ?仕組みはよくわからんが」
「え?なんですかそれ。うわっ」
マップが見たいと思った直後、視界いっぱいにマップが表示された。
島内各地の地名や気候、方角など様々な情報が確認できる。
「すごいですねこれ!……ん?」
現在地から割と近く、草原の方角から、こちらに向かって移動しているようなアイコンを確認した。
移動速度は車並みに速い。
「ブルさん!なにかスゴイのが近づいて来てます!」
「おおう!?」
アイコンは森に入る手前あたりで急停止した。
俺達はその方向に向け銃を構えながら、警戒体制を取った。
「あれ、よく見たらブルさんの位置も同じ種類のアイコンで表示されてる?」
これ、ひょっとしたら仲間のアイコンじゃないか?
「ピシュン!」
という考えがよぎった瞬間、銃弾が俺の頰をかすめた。
「うおっ!ちょっとタンマ!!タンマ!!」
俺が言わんとしている事がわかったのか、ブルさんも声をあげた。
「おおーい!お前、もしやワシらの仲間じゃないか?」
少しの沈黙のあと、入り口付近の岩場からひょっこりと頭が出た。
「頭から耳が生えてる?」
「ありゃ、あいつ獣人だな」