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第三話



 署に戻ると夕刻になっていた。


 オードリー社で二十人に聞き込み調査をしたが、大した成果は上げられなかった。ジュリアの交友関係を疑ってみたがその容疑者が五百人以上もいるのだ。誰もが怪しく感じてしまう。もしかしたら全員がエドガーを欺いているのかも知れない。そんな妄想さえ抱いてしまう。


(疲れてるな……)


 素直にそう認める。


 官僚に就いて十年余り。ここまで必死に仕事をしたことはなかった。自分がやらなくても誰かがやってくれる。そういう意識があったのは確かだ。きっと誰もがそうだろう。そうすることで成り立っていたのだ。今までは。


(今回ばかりは、俺の手で解決したい。しなくちゃならない)


 淹れたばかりのコーヒーの表面を眺めながら思う。


 署に戻ってきたのは情報を整理するためだった。大した情報はないが、まとめておくことは重要だ。どこに大きな手がかりが隠されているか誰にもわからないのだから。


「まるで刑事(デカ)じゃないか、エド」


「ガブリエル」


 にやついた笑み。


 給湯室に現れたのは同僚のガブリエル・ウィンター。茶褐色のカールした髪はうなじの下まで伸びている。細面の長身でエドガーとはまた違う意味での大男だった。


「言ってくれるな。あんまりふざけると公務執行妨害で逮捕するぞ?」


「はっ、勘弁してくれ」


 そう言って笑いあう。


 いつもと変わらない、くだらないやり取り。張り詰めていた緊張が少し和らぐのを感じていた。だがしかし、ガブリエルの次の言葉はエドガーの表情を凍らせる。


「今回の事件、手を引くんだ。俺たちに任せろ」


 それが如何なる意味を持っているのか。


 エドガーは知っていた。ガブリエルのチームが動くということは、そういうことだ。


「まさか、冗談だろう?」


「いや……残念ながら、署長の判断さ」


 笑みは消えていないが、瞳は哀れんでいるように見える。


 ガブリエルはエドガーの手からコーヒーの入ったカップを?ぎ取って飲み干す。エドガーは空になった手をそのままに、立ち尽くしていた。


「馬鹿な」


 エドガーがやっと呟いた頃、ガブリエルの姿は消えていた。




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