プロローグ
俺は廊下を歩いていた。向かう先はPICT本部の管制室。扉の前に立つと勝手に左右に開く。
中には既に2人の人物がいた。
「あ、レイハルトも呼ばれたんだ」
手前にいた金髪の少女、アリスがこちらに気づいた。
「揃ったようだな」
奥には壮年の男性がいた。彼はギルザス。PICTの七星の1番だ。
「俺たち二人を呼んで何のようだ?ギルザス」
俺はギルザスに問うた。
「二人には惑星ジストアに行ってもらいたい」
「ジストア?」
聞いたことがない名前だ。
「ここから1.5光年離れた惑星だ。そこのPICTから救援要請が来た」
「1.5光年、て」
この惑星に来た時のシップで光の2倍の速さ、その小型のスモールシップで光の1.5倍の速さが出る。
「行くとしたらスモールシップだろ。1年かかるじゃんか」
「安心しろ」
ギルザスがモニターを指さす。そこには宇宙に巨大な輪が浮かんでいた。
「今回は転移ゲートを使う。すでに向こう側は開いているようだからこちらが開けばすぐに行ける」
「転移ゲートなんて久しぶりね」
アリスが懐かしそうにする。
「使ったことがあるのか?」
「うん、前に一回だけ」
俺の問いにアリスが頷く。
「あの時は3光年離れた惑星だったかな」
アリスが思い出に浸っているとギルザスが咳ばらいをした。
「ジストアでは魔物の大量発生と凶暴化、それと謎の敵対勢力がいるそうだ」
「その敵対勢力の情報は?」
アリスが聞くがギルザスは首を横に振る。
「ほとんど何もわかっていないらしい。ただ、凶暴化の原因ではないかと考えてはいる」
「分かった、あとは現地で調べるね」
「頼む。今回は他の七星も数人同行させる。大丈夫そうなら増援も送ろう」
俺たちは頷いた。
「じゃあ、私は準備に入るね」
アリスはそう言うと管制室を後にした。
「レイハルト」
アリスに続いて出ていこうとした俺をギルザスが呼び止める。
「なんだ?」
ギルザスは少しだまりこむ。
「……、アリスを頼む」
ギルザスも気づいているのだ。
「アリスは俺より強いぞ」
「それでもだ」
ギルザスは俺の目をしっかりと見てくる。
「分かった」
「感謝する」
そして俺も管制室を後にした。
レイハルトは目が覚めると先ほどの夢のことを考えていた。
(さっきのはほかの惑星に行くイベントのシーンか。でも、画面越しって感じじゃなかったな)
おそらくあれは「レイハルト」の記憶なのだろう。ゲームではそもそも自分の声はストーリー内では出てこない。
そして、さっき出てきた人物について考える。
レイハルトに指示を出していた男、ギルザス。彼はPICTの中でも七星と呼ばれる実力者の№1だ。
七星とは、この惑星に来てからとある厄災と対峙したときに活躍した英雄が七人だったためつけられた称号だ。七星は受け継がれている。
そしてもう一人。一緒に行くことになったアリス。
七星の0、極星のアリス。PICT1の実力者で独断行動が可能な存在。ストーリーでは途中までその存在は隠されていた。
ちなみに主人公は最初の任務で彼女に助けられるところからストーリーが始まる。
彼女の公式の能力は正直チート。MPが馬鹿みたいに多い。
現在のレイハルトが約500、魔技に特化したスキル構築をしたチームメンバー、通称魔女でも700。しかしアリスは1500とレイハルトの3倍、魔女の2倍とばかげていた。
その理由はまだ明かされていないが主人公が絡んでいるのではないかとユーザーたちは予想していた。その理由として、アリスが初めて主人公に会った時驚いたような顔をしたからだ。
(もしかしたらアリスに会えば、無理か)
あれから数百年経っている。さすがに生きていない。
ちなみに七星、極星という言葉が出てきているがこの惑星からは北斗七星も北極星も見えない。
レイハルトは頭を切り替えようと着替えて食道に向かった。
ここからEPISODE1第2章開始です




