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SFゲームの1000年後はファンタジー(旧名SF世界からの漂流者)  作者: アロマセラP
EPISODE1 第1章
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リリアからの報酬

「良いのですか?」


「何がだ」


 レイハルトたちがいなくなると王の隣にいた初老の男、宰相が王に問いかける。


「身元も分からぬものを姫の婚約者にしてしまって」


 候補をあえて抜かした。彼らの中ではすでに決定事項だった。


「リリアもまんざらではなさそうだし、問題はなかろう」


「しかし、他の貴族が何かしら言ってこないでしょうか」


 宰相はスレンディット公爵を思い浮かべていた。


「スレンディット公爵か」


 王も同じことを考えていたようだ。


「言ってくるだろうな、次男がリリアに執心しているからな」


「でしたら」


「だが、このままあの者をそのままにしている方が危険だ」


「危険、ですか?」


 宰相は分からないと言った顔をした。


「そうだ、今はリリアと共にいるからよいが、あの者はもともと旅人だ。おそらくはリリアと手を組むこと、で今の目的を達成しやすいと考えたのだろう」


「リリア様に惚れた、または王家の力が欲しいだけという可能性は?」


「それはない」


 宰相の予想を即否定する。


「もしそうなら、先ほどの婚約者候補の件をすぐに受け入れただろう」


 宰相も確かにと思った。


「つまりだ。今はリリアと手を組んでいるがいつ、それが切れるか分からない。今の目的が達成した後この国を出ていく可能性もある」


「そうですね」


「そして、別の国でその国の貴族令嬢、または王女と結婚した場合、あの者がこの国に牙をむく可能性がある」


 宰相は驚いた顔をした。その可能性は考えていなかった。


「だから、この国にとどめておくためにもこの国で誰かと結婚して腰を落ち着けてもらう必要がある」


「しかし、姫である必要は」


「あれがあの者を手放すと思うか?」


 レイハルトがいるからと護衛を彼一人にした王女のことを考える。


「あり得ないですね」


「そういうことだ」


 宰相は納得した顔をした。


「では彼を筆頭に軍の強化ですか」


「まあ、強化は出来るだろうが、あの者を戦場に出すことは出来ない」


 また宰相が首を傾げる。


「リリアは彼以外の護衛を今つけていないだろう」


「そうですね」


「それはおそらく彼を軍事利用させないためだ」


「え?あ!」


「分かったようだな」


「はい、彼が戦場に行くとなれば、姫の護衛は彼一人ですから姫も戦場に行くことになる。しかし、それを認めるわけにはいかない。結果、彼は戦場には出せない」

 

「そう言うことだ」


 実際、リリアはそこまで考えていたわけではないが、レイハルトと離されないようにという考えはあった。


「彼を戦場には出せないが、我が国に攻め込まれるよりはましだ」



 

 翌日、レイハルトはリリアの部屋で正座させられていた。目の前には起こった様子のリリアがいる。


(怒った顔のリリアも可愛い)


 などと思ったが、今は冗談が通じなさそうなので黙っておく。別に正座しろと言われたわけではないが、相手が怒っているのでつい正座してしまった。


「レイハルト」


「はい」


「何で私が怒っているか分かる?」


 正直身に覚えがなかった。ドラゴン討伐後のことといえば婚約者候補の件を受けたくらいだ。


「勝手に婚約者候補の件を受けたことか?」


「別にそれは良いわ。むしろ歓迎してるし」


「ん?なんて?」


「なんでもない!」


 後半が聞き取れなかったから聞き返したら怒られた。


「リリアは貴様の妙な術のことで怒っているのだ」


「妙な術?ああ」


 オルガの言葉にうなずくレイハルト。しかし、やはりなぜ怒っているのか分からない。


「あんな危ないことして、死んだらどうするつもりだったのよ!」


(なるほど、そう言うことか)


「でも、あれをしなければおそらく倒せなかった」


「だからって、あんなに回さなくても」


 どうやらオルガはスキルのことを見ただけで大体わかったようだ。


「仕方ないんだ。そう言うスキルなんだから」


「だからって、10分の1にしなくても」


 調整できないんだ。すまんな。


「レイハルト、約束してほしいの」


「約束?」


 リリアが頷く。


「もう2度と、あのスキルを使わないって」


(なるほどな)


「それは難しいな」


「何で!」


 リリアが叫ぶ。


「今後もあれくらいの敵が出てこないとも限らない。使わずに勝てるならいいが、そうでないなら。それに、俺はリリアの専属騎士だ。リリアを守るために必要なら使う」


 レイハルトがそう宣言すると、リリアは顔を赤くして俯いた。


「ずるい、そういうこと言うの」


 リリアが顔を上げる。


「騎士レイハルト、命令です。次にあのスキルを使うときは、私に許可を取ること」


「はあ!?」


「い・い・わ・ね」


「はい」


 リリアにすごまれて頷いてしまった。


「それともう1つ、というかこっちが本題」


 リリアが改まって言う。


「私からもドラゴン討伐の報酬を出そうと思うんだけど、何か欲しい物とかある?」


(欲しい物、ねえ)


 今特別欲しいものは特になかった。しいて言うなら食事の味が濃すぎるくらいだが。


「そう、だな。厨房を貸してもらえるように言ってくれないか」


「そんなのでいいの?」


「ああ」


 レイハルトは試してみたいことを思いついた。


「別にそれくらいなら報酬じゃなくてもいいのに。分かったわ。でも他に何か欲しいものとかが出来たら言って」


「分かった」


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