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SFゲームの1000年後はファンタジー(旧名SF世界からの漂流者)  作者: アロマセラP
EPISODE1 第1章
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帰還

 気を失っている奴らをそのままにしておくわけにもいかないので、ユリスを報告のために先に王都に向かわせて、彼らが起きるのを待つ。


その間にレイハルトは魔技で回復しておく。


 全員が目覚めた時はすでに朝日が昇っていた。オグゾルは一番早く目覚めたがドラゴンの死体をもう一度見てしまいまた気絶してしまった。


 帰りも行きと同じように5日かかった。行きと違ったことは馬車の中でリリアとレイハルトがほとんど会話をしていないことだった。


レイハルトは考え込んでいるのか声をかけても返事をしない、リリアは反応はするが適当に相づちを打つか睨み付けてくるかのどちらかしかしなかった。


(あの感覚はなんだったんだ)


 レイハルトはドラゴンと対峙したとき、ベルセルクを起動したときの気分の高揚について考えていた。


 もし、レイハルトがゲームの「レイハルト」なのであればストーリー設定的にああはならない。強敵と戦うことで気分が高揚するような狂戦士ではなかった。


強い奴ほど燃えるのはどちらかといえば「俺」の方である。しかし、それはゲームでの話であってただの高校生である自分が強敵とリアルで対峙した場合、例えばテロリストと対峙したらああなるかと言われれば多分ならない。


死の恐怖で身体が竦んでしまうだろう。強敵相手に興奮するのはあくまで自分が死なないゲームだからだ。


(そうなると考えつくのはこれか)


 このレイハルトの精神は「俺」と「レイハルト」が混ざっている。実際に今回自分ではないものを感じた。


しかし、そうなるとおかしなことも出て来る。レイハルトが盗賊を切り殺した時だ。あの時は自分が人を殺したという事実から発狂してしまった。


「レイハルト」はゲーム内で敵の人間を殺したことがある。つまり、敵であれば殺せるはずだった。あの時はまだ「レイハルト」と混ざりきれていなかったのかもしれない。


 そこまで考えて「レイハルト」の記憶を探してみた。驚いたことにゲームで見た光景を画面越しではなくその場にいた記憶があった。そして「俺」の記憶も思い出してみた。こちらも難なく思い出せた。


 しかし、どうしても思い出せないものが2つあった。1つはゲームでのラグナレク戦の記憶。それと、「レイハルト」の過去、ゲーム以前の自分の記憶がなかった。


(つまり俺は、()な(・)ん(・)だ(・)?)


 過去の記憶は「俺」のもの、しかし、途中から「レイハルト」の記憶もある。


異世界転生、異世界召喚の類ではたいてい地球での記憶しかないかそれとその世界での記憶すべてがある。


つまり、2人分の記憶があるのだ。しかし、レイハルトには2人分の記憶は途中からしかない。


(こっちの世界の俺はどこから来たんだ?)


 ゲームでは明かされていない、主人公の背景。その本人になってもそれが分からない。


それが今になって怖くなってきてしまった。自分は何者なのか。



 

 王城に着くと門の前で騎士が並んでいた。一番前にはグランツがいる。


「抜刀!」


 レイハルトたちが馬車から降りるとグランツがそう言い、騎士全員が剣を抜いて身体の前で上に向ける。


(テレビとかマンガで見たことはあったけど、実際に見ると結構迫力あるな)


 レイハルトはそんなことを考えながら門をくぐる。


 玄関までくるとセリナが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、国王陛下がお呼びです」


 レイハルトとリリアとオルガはセリナに付いていく。着いたのは謁見の間ではなく部屋の前だった。


「レイハルト様とフィルリリア様をお連れしました」


「入れ」


 セリナが扉を開けて中へ促す。どうやら彼女は入らないようだ。


「疲れているだろうが、着いてすぐすまないな」


 2人と1匹が入ると国王がそう切り出した。


「すでに話は聞いている。ドラゴンを単独撃破したそうだな。まずは感謝を。あれには我々も頭を悩ましていたのだ」


 国王の隣にいた初老の男が革袋を持ってレイハルトに差し出した。


「スレンディット公爵からだ。金貨10万枚だ」


 レイハルトはそれを受け取る。ずっしりとした重みを感じられる。紙幣や電子マネーがある日本ではまず感じられない重さだ。


「確かに、受け取りました」


 このためだけに呼んだのだろうか?


「実はもう一つ、私からも褒美を用意した」


 レイハルトは驚いた。そして少し慌てた。


(まさか国王自ら褒美を用意するなんて。まさか爵位や領地じゃないだろな)


 そんなものを下賜されたら旅ができなくなる。


「其方をフィルリリアの婚約者候補に入れようと思う」


「「え!?」」


 リリアとレイハルトの声が被った。


(俺が、リリアの婚約者候補?)


「私が、姫の婚約者候補、ですか?」


「そうだ」


「私はただの旅人ですよ!」


 レイハルトはつい声を荒げてしまった。


「私とでは身分が釣り合いません」


「問題ない」


「え?」


 王の言葉に耳を疑う。


「其方はフィルリリアの専属騎士としての身分を持っている」


「しかし、私は貴族ではありません」


「力のあるものが貴族と結婚するのはよくあることだ」


 政略結婚か。リリアはどう思っているのか横を見てみると、顔を赤くして、うつむいていた。表情が見えないのでどう思っているのかは分からなかった。


「リリアでは不満か?」


「そのようなことは!」

「では良いな」


 レイハルトは観念した。


「謹んで、お受け、いたします」


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