VSドラゴン3
「レイハルト!」
リリアは目を背ける。彼が死ぬところを見たくなかった。
ドラゴンが尻尾を振り下ろす。あるものは絶望し、あるものは喜びに口をゆがめていた。
「gagyuaaaaaaaaa!」
ドラゴンの声にリリアは顔を上げた。その声は敵を倒した喜びの声ではなく、苦痛によるものだったからだ。
リリアは、いや、その場の全員が目を疑った。
ドラゴンの尻尾は途中から切断され、その先と思われるものがレイハルトの後ろに転がっていた。
そして、レイハルトは先ほどまでの片手剣ではなく双剣、ダガー2本ではなく直剣2本を頭の上で交差されていた。
「ば、馬鹿な」
レイザスが恐怖するような声を上げる。
ドラゴンは警戒するように距離を取る。レイハルトはゆっくり双剣を下ろす。
「あはっ」
レイハルトは短く笑うと一気に突っ込む。その速さは先ほどよりずっと早く、リリアとオルガ、ユリス、近衛兵の1名以外は目で追うことができなかった。
レイハルトがドラゴンの翼にジャンプしながら切り込む。ジャンプ力も先ほどの比ではなかった。
レイハルトの速さに対応できなかったドラゴンは翼に1撃もらう。翼に大きな切れ込みが入る。
「レイハルト!貴様、その妙な術を解け!」
オルガが珍しく声を荒げて叫ぶ。
「妙な術?」
「あやつ、普段身を守るのに使っていた魔力と生命力のほとんどを身体強化に回しやがった」
「な!」
オルガの説明に絶句するリリア。
ベルセルク、アクションスキルで5分間自分の防御力と最大HPを10分の1にする代わりにその分を攻撃力、素早さ、MPに振るというもの。
この時の防御力とは防具の補正も含むものなので、今のレイハルトの防御力は防具無しとほとんど変わらない。
(なるほど、そういう風に見えるのか)
オルガの解説に納得しながらアクションスキルのマジックブレイドを起動する。
双剣専用のスキルで、3分間8本の魔力でできた剣が剣の通ったところをなぞって追撃をする。
ドラゴンが火球で攻撃してくるが遅い。一気に距離を詰めて翼に攻撃する。
先ほどの切り込みに沿う様に攻撃し、切れ込みが翼の半分くらいまで行く。ドラゴンが飛ぼうとして翼をうまく使えずバランスを崩し落ちる。
「はは」
この隙を逃すまいと反対側の翼に双剣武技「ツインシュニット」を起動する。
右手の剣を切り下ろし、次いで左手の剣で切り上げる。翼の3分の1まで切り込みが入る。
「gugyaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
ドラゴンは叫びながら起き上がる。
レイハルトは跳躍し首を狙う。しかし、首は他よりも丈夫なのかあまり深く入らなかった。
リリアは鳥肌が立つのを感じた。その対象はドラゴンではなくレイハルトだ。
(なに、これ?)
レイハルトが怖い。彼を見ているとそう感じた。今まで彼の強さを何度か見てきたがこんなことは初めてだった。
レイハルトはドラゴンのわき腹をえぐる。
(ああ、楽しい、楽しい、楽しい、楽しい!)
レイハルトはこの上ない高揚感に包まれていた。
しかし、この楽しさをずっと味わっていられないことも分かっていた。この5分で何とかして倒す。
ベルセルクは効果が切れると3秒間の硬直時間がある。それだけあればドラゴンはレイハルトを殺せる。
ドラゴンがブレスを放とうと口を開く。
(口、そうか!)
横なぎのブレスをステップで回避、さらに切り付ける。
マジックブレイドが切れるとレイハルトは最終段階に移行する。
ドラゴンの脇腹辺りに足をかけて剣を杖のようにして背中によじ登る。さらに強化した脚力を使ってドラゴンの頭からさらに上に跳ぶ。
レイハルトが上に跳んだことでドラゴンも上を向く。
レイハルトは武器を弓に持ち替える。ドラゴンがブレスを吐くために口を開ける瞬間に「ボマーシェイプ」をレベル20で3発打ち込み、矢が上顎に突き刺さる。
どんなに外が丈夫でも身体の内側は柔らかいのだ。
ドラゴンが痛みに口を閉じた瞬間爆発が起こる。
頭から煙を上げながら倒れてくる。
煙が晴れると下顎だけが残ったドラゴンの死体があった。血がとめどなく流れているがそれが止まる気配はない。
レイハルトが地面に着地するとほぼ同時にベルセルクが切れる。
「な、な、な」
貴族連中が信じられないと言った表情でこちらを見ている。
そして、ドラゴンの死体を確認するとオグゾルとオルキスは泡を吹いて倒れ、レイザスも吐き気をもよおしたような顔をしている。後ろで近衛兵の何人かも泡を吹いて倒れていた。
レイハルトは斥力バリアを解除する。
「さ、終わりましたし、帰りましょう」
下顎だけが残ったドラゴンを見た皆さんはSANチェックです。
何人か失敗したようですね。




