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SFゲームの1000年後はファンタジー(旧名SF世界からの漂流者)  作者: アロマセラP
EPISODE1 第1章
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討伐依頼

スレンディット公爵は自室で険しい顔をしていた。そこへドアをノックする音が聞こえた。


「クラーキス伯爵がいらっしゃいました」


「通せ」


 メイドの言葉に公爵は短く返す。ドアが開き、オグゾルが入ってくる。


 部屋に入ったオグゾルは険しい顔の公爵を見て首を傾げる。


「公爵、何かございましたか」


「まあ、な。城での話は聞いているか?」


 オグゾルは頷く

「近衛兵の一部があれのもとに入ったことでしょうか」


「そうだ」


 公爵は机に置いてあったティーカップに口を付ける。


「そして、私の研究も少々詰まってしまっていてな」


 オグゾルは黙って聞いている。


「このままでは第二王子はフィルリリア姫に王位継承権を取られるかもしれん」


「しかし、姫は女性です。そのようなことはないのでは?」


 疑問を口にするオグゾル。普通は息子を置いて娘が王になることはない。


「しかし、多くの民が姫を指示した場合、または多くの民が第二王子の即位を反対した場合は分からん。戦争になる可能性がある。その場合、姫は民の方に着くだろう」


 もしそうなって、民側、姫側が勝った場合。王位を継ぐのは姫になる。そしてその可能性が今は十分にある。


「やはり、早いうちに彼を排除しておいた方が良いな」


「しかし、どうしますか?彼は姫のお気に入り。単独行動させるのは難しいでしょう」


「一つ方法がある」


 考え込んでいたオグゾルは驚いたように公爵を見る。


「単独行動はさせられないが、どちらに転んでも我らの益になる方法がな」


「いったいそれは?」


 公爵は口元を歪める。


「彼に竜討伐の依頼を出すのだ」


 この近くには10年ぐらい前に現れたドラゴンが山に住んでいる。近くを通りかかったものを全て襲う凶暴なやつだ。


「討伐に失敗し、死んでくれればありがたい。逃げたら逃げたでそれを理由に追求できる。仮に討伐した場合は我らの研究材料の必要なものが手に入る。まあ、無理だろうがな」


 そのドラゴンには過去何度か討伐隊が編成されたが全て失敗に終わっている。普通の人間では倒せない。


「断られないでしょうか?」


「民の為だといえば姫が説得するだろう。問題はない」


「では、明日早速彼に依頼を出してきましょう」


 そういってオグゾルは部屋を後にした。

 



 レイハルトがリリアを伴って訓練場に向って歩いているとオグゾルがやってきた。


「ここにいましたか、レイハルト殿」


 なぜかレイハルトに対して敬語を使うオグゾル。


「どうかしましたか、クラ―キス伯爵」


 それに答えたのはリリアだった。


「実はスレンディット公爵よりレイハルト殿に依頼を持ってきました」


 スレンディット公爵の名に顔をしかめる二人。普通の依頼の気がしない。


「それで、依頼の内容は?」


 リリアが先を促すとオグゾルは一枚の紙を取り出した。そこにはドラゴン討伐の依頼が書かれていた。


「ドラゴン?火山か?」


 ゲームでは竜族は基本火山にしか住んでいなかった。だから、レイハルトは当然火山にいると思った。


「違うわ、王都から馬車で3日くらいのところの山の頂上よ」


 違った。


「なに?貴方、火山でドラゴンにあったことがあるの?」


「ドラゴンというか竜族にな」


 別に隠すことではないと思い正直に話す。


「あいつらは自分の領域で何かしない限り基本攻撃してこないはずなんだがな」


「そうなの!?」


 リリアとオグゾルが驚いてる。


「そのドラゴンは違うのか?」


「ええ、近くに通った商人や旅人を片端から襲っていたわ。過去に何度も討伐隊が編成されたし」


 リリアの話を聞き、レイハルトはダークネスの浸食を考えた。


ダークネスは眷属と呼ばれるものを使って原生生物を浸食し力を蓄えていっていた。


しかし、もうダークネスはいないはずだとその考えを捨てる。


「気性の荒いドラゴンなのか?そうなると撃退じゃだめか」


「ええ、できれば討伐していただきたい」


「別に俺は構わないが」


 レイハルトがリリアの方を見ると、リリアも頷いた。改めて依頼書に目を通す。成功報酬は金貨10万枚。


「討伐した死体は貰っていいんだよな?」


「は?」


 オグゾルが何言ってんだというような顔をした。


「だから、討伐したドラゴンの死体は貰っていいんだよな?」


「それは出来ませんな。死体はスレンディット公爵が実験に使用するとのことです」


 それが狙いか!


「そうか、じゃあ依頼は受けられないな」


 自らスレンディット公爵に益を与えてやる必要はない。


「なぜ!貴様がドラゴンを何に使うというのだ!」


 口調が戻ってるぞ。


「俺の武器の手入れに必要なんだよ。手持ちのがそろそろつきそうだからちょうどいいと思ったんだがな」


 嘘は言っていない。武器に特殊能力を付けるエンチャントには竜族の素材も使う。


「だから、ドラゴンの死体をもらえないなら受けられない」


「くっ!姫からも言ってください。民のために討伐してくれと!」


 どの口が言っている。


「ええ、レイハルトに討伐した死体を渡すのなら私からも命令しましょう」


 さすがにリリアもスレンディット公爵の益になることには加担させたくないようだ。まあ、実験の内容を知っていれば当然か。


「分かりました、公爵に確認してくるので少々お待ちを」


 その日の午後にオグゾルがまた来た。


「公爵によりますと頭だけくれればよいとのことでした。それでよろしいか」


「頭か」


 残せるだろうか。


「なんだ?貴様も頭がほしいというのか」


「いや、そうじゃない」


「じゃあ、何で」


「討伐隊が何度も失敗してるようなドラゴンだ、おそらく手加減できない」


 そこまで言ってリリアは気付いたようだ。


「あ、そうか。あなたの戦い方は」


「戦い方が何か、あ、そうか。確か貴様は」


 伯爵も知っていたか。


「ああ、頭を吹き飛ばして魔物を倒す」


 だから、頭が残せるか分からない。


「だから公爵には善処しますと伝えておいてくれ」


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