お茶会
「お茶会?」
ここ数日は特にいざこざもなく平和に過ごしていた。
「そう、お茶会。お父様が戻ってきたんだからそれくらい行けって」
中世の貴族のお茶会はただ仲良し同士でお茶を楽しむものではなく、社交の場の一つだ。情報の交換などが主な目的となる。
「2年間も社交界から離れていたんだから情報を集め直せと」
「まあ、そういうことね」
「それでいつなんだ?」
「3日後ね。ハワード伯爵家に行くわ」
「一応聞くが、その家とスレンディット公爵との関係は?」
「2年前と同じなら特に何もないわね」
それが変わっていなければ大丈夫だろう。
(一応警戒はしておくか)
「フィルリリア様、本当に彼一人でよろしいのですか?」
「問題ないわ。人が多ければ多いほど彼の邪魔になってしまうし」
今馬車にはリリアとレイハルト、それと侍女が2人である。他の護衛はリリアが全て断った。
まだ何か言いたげなセリナを無視して、リリアは馬車を出発させる。
ハワード伯爵は今王都の別荘にいるらしくすぐに着いた。
別荘の中に入るとハワード伯爵婦人が草木を好きということもあり、手入れの行き届いた庭園が広がっていた。
「お待ちしておりました。フィルリリア様」
玄関まで来ると30後半から40位の男性とその隣に30代半ばと思われる女性、その後ろにリリアと同い年くらいの女の子が立っていた。
「お招きいただきありがとうございます。ハワード伯爵」
リリアは馬車から降りると頭を下げた。
彼らに連れられて庭園の一角に移動した。テーブルがいくつかすでに置かれていてその上には蓋のされた皿やポットが用意されていた。椅子はない。
「外で、立食?」
「レイハルトは初めてかしら」
レイハルトが不思議そうな顔をしながらぽろっとこぼした言葉をリリアが拾う。
「ハワード伯爵のお茶会は婦人のご意向でいつもこうなの」
すでに何人か来ており、リリアを見つけると、こちらへ挨拶へ来る。
(さすがは王族)
彼女に挨拶に来た貴族たちを見ていると若い男性はレイハルトの方を恨めしそうに見ていく。
しかし女性と貴族の付き添いたちはこちらに暖かい目を向けてくる。その視線の意味をレイハルトは理解できなかった。
それから徐々に人が増えてきた。
「みなさんお集まりいただきありがとうございます。今回は私たち主催のお茶会に参加していただき一同とても感謝しています」
ハワード伯爵が1段高いところに上って話し始める。
「今日はシェフが腕によりをかけて作った料理を用意しています。どうか楽しんでいってください」
控えていた侍女や執事が蓋を開ける。そこにはいろいろな種類のお菓子が並んでいた。多いのはクッキー系の物だ。プレーンの物から果物やジャムが添えられた物と数多くある。
またケーキの類もあった。スポンジに生クリームを塗ったいわゆるショートケーキがほとんどで、乗っている果物はそれぞれ違っていた。ただ、クッキーにもケーキにもチョコレートは見受けられなかった。
(まだカカオは見つかってないのか?それともこの世界にはないのか)
「それではみなさん、召し上がってください」
貴族の人たちがお茶会を始める。従者や護衛は外で見守る。
レイハルトが観察していると男は男同士、女は女同士で固まって会話を始めた。貴族社会とはいえ、こういったところは世界が変わっても変わらないようだ。
リリアの方に目を向けると、どうやら普通に他の女性陣と話しているようだ。2年間離れていたとはいえさすがは王族と言ったところか。
話している内容は聞こえてくる限りだと最近の流行や新しいお菓子について、ガールズトークそのまんま。
「あんたか、フィルリリア姫の専属騎士ってのは」
レイハルトは後ろから声をかけられて振り返った。そこには、数人の騎士然とした男がいた。
投稿遅れてすみません。ここからはもう少し定期的に出していこうと思います。




