王宮での暮らし6 騎士との訓練
「レイハルトさん、となりいいですか」
騎士の一人が声をかけてきた。今は食事中。リリアとは別行動している。
食事は王族とそれ以外で分けなければならないらしく、専属騎士といえど同席は許され
ない。
レイハルトは頷いた。
「昨日一般の奴らの訓練を手伝ったそうですね」
「はい、まあ」
「あなたほどの実力者だと、一般相手では物足りないでしょう」
「そんなことはありませんよ。自分と違うタイプの人と手合わせするのは新たな発見もあ
ります」
「そうなんですか」
「そうですよ、それに教えていると今まで気が付かなかったことに気づいたりもします」
「グランツ将軍と同じことを言うんですね」
「グランツ将軍も?」
「ええ、『教えることも訓練だ』と言われています」
さすがグランツ将軍。よくわかっている。
「ではなぜ、騎士は別れて訓練されているのですか。一緒にやればいいのに」
「それは、まあ、いろいろと」
騎士はそこで言葉を濁す。
「それより、この後我々の訓練に付き合ってもらえないですか?」
「自分はフィルリリア様の専属ですので、フィルリリア様に聞いてみないことには」
「そうですよね」
「この後聞いてみます。大丈夫なら訓練場に向かいます」
「ありがとうございます」
「騎士団と?いいわよ」
昼食後、リリアに相談しに行ったら即答でOKをもらえた。
「いいのか?朝今日こそは遺跡にって言ってたのに」
「まあ、そうなんだけど。今後のことを考えると軍関係とのつながりは強くしておきたい
し」
「分かった。今日はこれから騎士団のところに行くよ」
「私も付いていくわ」
今日はオルガも含めた3人で移動した。本人は大丈夫だと言っていたがリリアがオルガ
に運動をさせたいらしい。
「レイハルトさん、お待ちしておりました」
訓練場につくと先ほどの騎士が出迎えてくれた。軽く挨拶をして訓練に入る。
手伝うと言っても模擬戦の相手をするくらい。武技は(身体が勝手に動くから)教えられな
いから。
「そういえばレイハルトさんは鎧は持っていますか?」
「鎧?」
「はい。我々は実践を想定して鎧をつけた状態でも訓練をしていますから」
鎧と聞いて防具の存在を思い出した。今はステルスにしていて見えていないがつけてい
るはず。
そう思ってARパネルを操作して防具を確認する。
防具にはアーム、レッグ、ボディーの3種類がある。
きちんと3つともあった。
今はどれもヨグスシリーズという最高レアリティの防具で固めている。
とある邪神をモチーフにしているらしい。
(運営、絶対あの神話好きだよな)
なぜ最初に防具を確認しなかったと思うと同時にそんなことを思った。
「一応持ってます」
そういってステルスを解除しようとした。だがここで解除するとその方法を聞かれそうだったので、持ってくると一言言って陰に隠れて解除した。
「お待たせしました」
ヨグスシリーズは白地に黒の線が入ったデザイン。防具と言っても篭手、脛あて、胸あてのような感じである。これで全身の防御力が上がるのだからすごい。
「全身鎧ではないのですね」
「旅をする上では全身鎧では邪魔ですから」
それからまたしばらく特訓の相手をした。
「レイハルトさん、これからも訓練に付き合ってもらえますか?」
訓練の終わりにそんなことを言われた。
レイハルトはリリアの方を向くと任せると言われた。
「そうですね、ただ、一般のみんなの方も見に行く予定なので毎日は難しいですね。あとフィルリリア様のご予定にもよりますし」
「フィルリリア様の専属護衛ですからね、仕方ないです」
「向こうも見に行くのですか?こちらだけでよいではないですか」
別の騎士がそんなことを言ってきた。
「そんなわけにはいきません。将軍に頼まれていますから。どうでしょう。一緒に訓練するというのは」
「彼らとやっても身になりませんよ」
「しかし、いざというときにバラバラでは戦いに勝てませんよ」
「個々が強ければ負けません」
「それは違います」
「え?」
今現在、一番強い人がそんなことを言う。それが信じられなかったのだろう。
「連携が取れなければたとえ数で優っていても負けます」
「それはどういう」
「そうですね、10人いたとして、それが個々に動いていたら戦力は足し算で10です。対して相手が7人しかいない。でも、彼らは3人と4人に分かれさらにその二つで連携した場合掛け算となり3×4で12となり、10が負けます。私もそれで負けた経験があります」
周りは信じられないと言った顔をしている。事実、ゲームでは唯一のPvPとしてチーム対抗戦があった。
そこでレイハルトのチームはこちらが12人で行ったのに対し、相手は6人。だが相手の連携になすすべもなく負けた。
「ですので、これからは全員一緒に訓練しませんか」




