王宮での暮らし3 婚約者!?
読み進めるとダークネスと思われるものが書かれていた。
突如として現れたPICTの敵、PICTとは別の方法で魔力を操る者たち。
途中からPICTの話は惑星調査からダークネスとの戦いの話に変わった。
さらに読み進めるとレイハルトのことが書かれていた。いや、レイハルトのというよりはゲームの主人公の、だ。
主人公は正義感と行動力で数々の事件を解決していく。
時には上層部と対立し、時には死にかけ、そして最新の8章では上層部の一員になっていた。
そんなところまでこの「創世記」には書かれている。
しかし、一度もPICTの名前は出てこない。全て「彼ら」となっている。
「どう、何か分かった?」
読み終えて顔を上げるとリリアが声をかけてきた。
「そもそも内容が分かった?特に最初の方。馬より早く動くものとか船が空から来たとかどういうことなのかしらね。機械ってのもよくわからないし。全く想像できないわ」
現代人だったレイハルトは前者は車、後者はスペースシャトルか宇宙船だろうと予測がつくがそれを知らないリリアはさっぱりのようだ。
彼女が分からないと言ったものについて説明できるがしたらしたでなぜ知っているのかという風になるので言わないでおく。
「俺にもさっぱりだ。やっぱり遺跡に行ってみないと分からないな」
そういって首を振るレイハルト。まだ、本当のことは言えない。いや、言ったとしても信じてもらえないだろうが。
「それじゃあ、明日、遺跡に行きましょう」
夜、レイハルトは今日調べたことを思い返した。
歴史の本や伝承には有力な情報はなかった。
おそらくはダークネス・ラグナレクとの戦いのあとのことばかり書かれている。
しかし、「創世記」は違った。あれは惑星激録の設定資料集とほとんど同じことが書かれていた。やはりこの世界はゲームの未来の世界なのだろうか。
ただ、「創世記」にもダークネス・ラグナレクとの決戦の話はなかった。だからまだ確証は持てない。だが、そこが分かれば自分がこの世界に来た理由も分かるかもしれない。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
朝ごはんのあと3人はリリアの部屋にいた。
「早くあの魔道具を使いましょう」
せかしてくるリリア、なぜか少し焦っているようにも見える。
「どうしたんだ、そんなに慌てて。それにまだ外出をばれないようにする方法も決まってないのに」
いったいどうしたと疑問に思いオルガを見る。するとオルガは顔を背けた。
「???」
「そんなの後で考える!ほら早く」
リリアにせかされながらアイテムストレージを操作しているとドアがノックされた。
「フィルリリア様、オルキス様がお見えになりました」
「遅かったか」
リリアはものすごく嫌そうな顔をしていた。
「すぐに行くわ。レイハルト、付いてきて」
二人はオルガをおいてオルキスなる人物のところへ向かった。
「マイハ二―、やっと戻ってきたんだね。会いたかったよ」
一人の男が前から歩いてくる。そしてリリアを見つけると速足で寄ってきて抱き付こうとする。
その抱擁をリリアはバックステップで回避した。いやそいつはエネミーじゃねえぞ。
抱擁を躱された男はいつも通りとでもいうようにすぐに笑顔に戻った。
「全く相変わらずだな、リリアは」
前髪を掻き上げる男は貴公子然としたイケメンだった。
「2年会わない間にさらに美しくなっているね。おや、彼は?」
イケメンがレイハルトの方を見る。
「彼はレイハルト、私の専属騎士よ」
「へえ、彼が」
礼をするレイハルトをイケメンがしげしげと眺めてくる。
「レイハルト、紹介するわ。彼はオルキス。私の婚約者候補よ」
「候補だなんてつれないな。もう君と僕の婚約は決まったようなものだろう。おっと失礼僕はオルキス・スレンディット。彼女の婚約者さ」
スレンディット!ということは彼は。
「スレンディットということは公爵の」
「そう、僕はスレンディット公爵の次男だ」
まさかこれから敵対するかもしれないものの家族とこんなところで会うとは。
「騎士レイハルト。連れてきてくれてありがとう。もう大丈夫だ、下がってくれたまえ」
そうは言われたもののどうすればいいか分からないレイハルトはリリアを見る。
「レイハルト、専属騎士として私のそばを離れることは許しません」
「だ、そうです。公爵殿下」
オルキスは少し渋い顔をした。
「まあいい。僕たちの邪魔さえしないならな」




