王宮での暮らし1
今はリリアと中庭を歩いている。
この城を案内したいそうだ。
宴の後のリリアの行動は早かった。レイハルトを専属騎士にし、それ以外の護衛の騎士や近衛兵全ての任を解いた。
もちろんそれに反発する者もいたが、レイハルトの戦闘の邪魔になるだけだからと返した。
レイハルトが戦っている間に姫を逃がすには人手が必要だという意見には、リリアにはオルガがいるし、レイハルトのそばが一番安全だと言った。
そもそもレイハルトが苦戦する相手であったらこの城の兵士では対処できない。
他にも反対意見があったが自分の護衛になりたかったらレイハルト並に強くなれと言って皆を黙らせた。
正直これはありがたかった。これから公爵を相手取る以上リリアの周りにはあまり人がいない方がいい。どこから話が漏れるか分からないからだ。
しかし、これはとある噂も立ててしまった。「フィルリリア姫はレイハルトと恋仲である」というものだ。
オグゾルには駆け落ち云々の話をしたし、リリアがレイハルト以外を寄せ付けないようにしているからそう疑われるのも仕方がない。
そのせいでレイハルトは若い貴族から物凄い鋭い視線を浴びせられることになり、疲れることこの上ない。
一方リリアはあまり気にしていない様子だ。まんざらでもないのか、それとも気にしている余裕がないのか。
どちらにせよ平然としている。その態度がさらに貴族を煽ることになっているのだが。
「どお、ここきれいでしょう」
リリアに案内された場所は一面に花が咲き誇っている場所だ。色とりどりの花が咲き、花の絨毯が出来上がっている。
「ここ、昔から好きだったの。城から出られない時はよくここに来てた」
花畑でうれしそうな顔をしているリリア。その姿を見ると普通の女の子のように見える。
(言ったら絶対怒られるから言わないけど)
その後も城のいろいろな場所を回った。正直めちゃくちゃ広くて覚えられる気がしない。そして、リリアの部屋へ。
ここは広い。レイハルトが使っている部屋の3倍はありそうだ。部屋には天蓋付きのベッド、クローゼットのようなもの、机に化粧品棚だと思われるもの、本棚、そしてオルガの寝床があった。
「さて、行きましょう!」
「行くって何処に?」
目を輝かせるリリアに対してよくわからないと返す。
「何処にって遺跡よ。調査したいんでしょ」
そういえばそんなこと言っていたな。環境が一気に変わったせいで忘れてた。
「遺跡に行くってここから出たらばれるぞ。絶対」
「あなたの魔道具を使えばいいじゃない」
「行っている間に誰か呼びに来たらばれるだろ結局」
リリアは顔を膨らませる。
「その前に少しやっておきたいことがあるんだ」
「やっておきたいこと?」
首を傾げるリリアにオグゾルと対峙したときに考えていたことを話す。
「この国の、いやこの星の歴史や伝承が載ってる本てここにないか?」
「ここの書庫なら多分、そんなもの見てどうするの。もしかして本当にあの伝承を信じているの?」
リリアには信じられないのだろう。昔の方が今よりずっと発達していたなどとは。
だがレイハルトの仮説を立証するには読んでおく必要がある。もしかしたら違うかもしれないから。
「まあ、そこまで言うなら、一緒に行きましょうか」
書庫に行くと決まったところで部屋の扉がノックされる。
「どうぞ」
入ってきたのは一人のメイドだった。
「フィルリリア様、レイハルト様もご一緒でしたか。レイザス様がお呼びです」
「レイザス兄様が?」
「はい。内密な話があるそうで二人だけで来て欲しいとのことです」
二人は顔を見合わせた。あの暴君が内密に話。嫌な予感がする。とはいえ王子からのお呼び出しだ、行かないわけにもいかない。
「分かりました。すぐに向かうと伝えてください」
メイドは分かりましたと一礼して部屋を後にした。
「レイザス兄様が話?何かしら」
「さあ、ただいい話じゃないと思うがな」
「同感ね」
嫌な予感を感じながらレイザスの部屋へと向かった。
ここから何回かは王宮での暮らしを書きます。少しの間探索やバトルはお休みです




