馬車の中、王都に向かって
レイハルトたちは王城へ向かうため、オグゾルが乗ってきた馬車に乗っていた。ここの遺跡を調べてからにしたいと言ってみたが却下された。
一日でも早くリリアを城に戻したいようだ。いつでもここに来れるようにテレポーターは設置しておいたが。
馬車にはレイハルト、リリア、オグゾル、副官が乗っていた。
最初、レイハルトが馬車に乗るのを嫌がっていた。なぜ下民をこの馬車に乗せなければならないのだと。
しかし、リリアが「彼は私の命の恩人です。彼を歩かせるなら私も歩きます」と言ったのでオグゾルも流石に王族を歩かせるわけにもいかず、レイハルトが馬車に乗るのを渋々了承した。
「おい、下民。私の馬車を汚すんじゃないぞ!」
その下民ての止めてくれないか。せめて平民といって欲しい。
馬車ではレイハルトは終始オグゾルに睨まれていた。それも仕方のないことで、リリアがずっとレイハルトに話しかけていたのだ。
オグゾルが何か話しかけても、「ふーん、そう」と言った感じでそっけない態度を取り、すぐにレイハルトとの話に戻ってしまう。
「貴様!さっきから聞いていれば、姫様になれなれしい態度を取りおって」
「黙りなさい、クラーキス伯爵。これは私が彼に許可したことです。あなたがとやかく言うものではありません」
「ですが、姫」
リリアはそれ以上取り合わず、レイハルトとも話に戻る。
オグゾルとしては貴族である自分よりも平民であるレイハルトを優先されているのが我慢できないのだろう。
リリアのほうはオグゾルのことが嫌いなのかなんなのか、話しているときの顔はものすごく嫌そうな顔をしていた。
「姫様のあそこまで楽しそうな顔は初めて見ました。やはり彼は」
「フィリップ!何を言っている!」
副官、フィリップが言ったようにレイハルトと話している顔は最高に楽しそうな顔をしている。
二人が恋人同士だと思っても仕方のないほどに。リリアがそんな顔をしているがレイハルトはとある理由のお陰でリリアから顔をそらさずにすんでいた。
レイハルトは、生まれて初めての馬車に興奮していた。この世界に来てからだけでなく、日本にいたころから含めて初めてだ。
だから気分が高揚していたレイハルトはリリアの輝くような笑顔を受けとめられていた。
あの村から王都までは馬車でも2,3日かかるようで途中の宿場町で止まることになった。
そこで宿を取ったとき、リリアが兵士の護衛を断り、護衛はレイハルトだけにしろと言ってまた、オグゾルと言い争った。オグゾル、よっぽど信用されてないんだな。
結局また、リリアが駆け落ちだなんだと言い出すのを恐れてリリアの提案を受け入れた。
翌朝の早朝には出発し、馬車の中では昨日と同じことが繰り返されていた。
リリアの話は王都の話が多く、リリアの話だけで王都の様子が大体わかってきた。その間、オグゾルはレイハルトを睨み続け、フィリップは優しい顔を向けていた。あの、そういう関係ではないですよ、俺ら。
道中は、エネミーも盗賊も特に出てこなかった。比較的安全な街道を選んだためだろう。
特に何も起きずに王都まで来ることができた。王都の中に入ると皆道の端によって、頭を垂れていた。
(この光景、前にも見たな)
そんなことを考えながら窓の外を見ていると、リリアが顔を近づけて小声で話しかけてきた。
「ほら、あそこ。昨日言った珍しい肉を扱っている店」
「ほう、あれが」
「なかなか珍しいお酒も扱っているの。今度飲みに来ましょう」
「ああ、そうだな、ちょっと待て」
頷きそうになったが、聞こえた単語の一つに反応した。
「さ、酒?俺まだ17歳だぞ?」
「え?なら大丈夫じゃない」
リリアが何を言っているのというような口調で返してきた。酒は20歳になってからじゃ。
そこまで考えてからここが中世ヨーロッパのような世界だということを思い出す。もしかしたら酒を飲める年齢が低いのかもしれない、成人も16歳とか。
「なあ、リリア。この国では何歳から酒が飲めるんだ?」
「年は決まってないわよ。まあ、大体12歳の成人の儀で初めて飲むことが多いかしらね」
12歳!?早すぎでしょ!と思ったが、日本の元服もそれぐらいだったと思いだす。
「あなたの国では決まっていたの?」
「ああ、俺の国では酒は20歳になってからだったから」
「20歳、そうなの」
リリアは驚いた様子だった。まあ、12歳で成人の世界だからな。無理はないか。
「じゃあ、お酒はやめておく?」
「うーん、少し考えさせてくれ」
「分かったわ」
酒に関してはさすがに抵抗が、いくらこの国では大丈夫だと言っても。
オグゾルはくっついて話している二人を、特にレイハルトをものすごい形相で睨んでいた。
ここまでリリアがいちゃついてくるとはよっぽどクラーキスと話をしたくないんでしょうね。




