この世界の魔法
「ファイア」
ラレナが魔法で薪に火をつける。普段はレイハルトがやっているがラレナが一時的に仲間に加わったため今回はラレナにやってもらった。
(この世界の炎の魔法はファイアというのか。ということは言語は英語に近いのか?)
この世界に来た時からすでに翻訳システムが働いていたレイハルトにはこの世界の言語がどのようなものか分からなかった。
だから、魔法の「ファイア」という言葉からそう想像した。ちなみに惑星激録の言語は英語とドイツ語が混じったようなものか、完全にオリジナルの言葉だった。
「お二人は魔法は使えないんですか?」
ラレナはレイハルトたちにそう聞いてきた。
魔法が使えるラレナに火を頼むことからそう予測したのだろう。確かに魔法は使えない。
「一応レイハルトが使えるわ」
魔法ではなく魔技だがな。
「そうなんですね、レイハルトさんはどんな魔法が使えるんですか?」
どう答えよう。そもそも魔法じゃないし、炎の魔法を見た限りじゃ多分全部名前も違うし、さて、
「火と氷と風は見たわね」
リリアがそういう。これはありがたい。属性だけでよさそうだ。
「それと雷と光と闇。全部攻撃系だけだがな、あと回復が少し」
この世界に攻撃魔法以外にあるのかどうか分からないがとりあえずそういっておく。
「攻撃特化?極端ですね」
ラレナが不思議そうな顔をする。この反応を見る限り生活系の魔法もありそうだな。
「そういう君はどうなんだ?」
「私ですか?」
「ああ、君はどんな魔法が使えるんだ?」
こちらは明かしたんだ、そっちにもしゃべってもらう。こんな絶好の情報収集のチャンス、逃すわけにはいかない。
「私は火、水、風、氷、雷、土、光、闇ですね」
(そんなに種類多いのか)
レイハルトが使えるものとは種類数が違う。まあ、この世界は科学が発達していないみたいだから、その部分を魔法で補おうとしてそうなっているのだろう。きっとそうだ。
(ゲームのほうが劣っているなんてことはないはずだ)
そもそも、ものが違うのだから比べる必要はないのだがどうしても考えてします。
そんな他愛のない話(ただしいろいろ情報は入ってきた)をしながら食事を済ませると各々寝る準備に入った。火の見張りは最初はレイハルト。
「今日は三交代でいきましょう」
三人いるし妥当だな。
「へ?これではだめなんですか?」
ラレナが詠唱を始める。
「シールド!」
三人の周りにドーム状の壁が出来る。
「これは?」
「光属性の防御魔法です」
防御魔法、そんなものが。
「そういえばレイハルトはこれできないの?」
リリアが聞いてきた。出来ませんよ、だってゲームに無かったもん。
「残念ながら」
氷の壁ならもしかしたら出来るかもしれんが、多分もろい。そしてとてつもなく寒い。
「でもこれなら火の番もいらなさそうね」
「そうだな」
レイハルトも寝る準備に入る。この魔法が朝まで解けなければ魔物にエネミーに襲われる心配もない。まあ、火は消しておこう。二酸化炭素中毒で死にたくはない。
翌朝、起きてみると魔法の壁は消えていなかった。そして密室のはずなのに息苦しさも感じない。下に植物があるからか、この魔法は空気は通すのか。
(後者だとしたらどんな理論だ?実は小さな穴が開いてましたとかか?)
空気だけが通れる小さな穴。化学の授業でやった気が。思い出せないが。
「おはようレイハルト、ラレナ」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
全員が起きたので、ラレナが魔法を解除する。
レイハルトたちは服を洗っていた。返り血のついた服だ。ただまだ泉についたわけではない。では水はどうしたかというと。
「水、もう少しいりますか?」
「いやもう大丈夫だ」
ラレナの魔法である。魔法って便利。何もないところから水を出せるんだから。
「レイハルトも水ぐらい出せるんじゃないの?氷と火で」
「俺の氷は冷気を出してるだけだからな。一度冷気で凍らせてそのあと溶かす必要がある。結構時間かかるし、一回に作れる水の量も少ないぞ」
事実だ。レイハルトの氷の魔技は冷気を操るもの。冷気で空気中の水分を凍らせてそれを火の魔技で溶かす。失敗すれば全部蒸発するし、一回で大きな氷が作れるわけではない。どうしようもない時以外はあまりやりたくない。
「そうなの」
二人は服を洗う。血ってなかなか落ちないのな。




