quả sung
VI
午後の仕事を終え帰る途中に立ち寄ったパブで、読み残していた20000字相当のコピーを目で浚いつつ知己の心声を訊く
その遺志を叶える為いま私はこの地にいる
訪れた此処は目的の達成地という他に、生殖不能者の吹き溜まりくらいとしか感じていない
が、DoomsdaySeedsを含む多くの者達が自由な選択を許されず、世界から隔離されて生きるよう強いられてきた事象の嚆矢となる事件が、この地から始まったと最近になって知ったのだ
今は糸口を模索すべく入手し得る情報を漁っている
思い浮かぶ友人知人にも手助けを頼もうと試みるが連絡さえ付かない、これも已む無いこと
同窓生と敢えて関わりを維持しようとしなかったが為と忸怩たる思い
同じカテゴリーに在った彼の死は、DoomsdaySeedsに数えられる僕の置かれている立場や存在の行く末というものを想起させ再認識させる出来事であって、こと之に纏わる関係には気鬱とさせられた
DoomsdaySeedsとは人類全体の最年少者、つまりは出生年最後の年に産まれたと届出られた赤ん坊59人を意味する
その内ひとりが僕でありエイドリックは側杖となった年長者と云うべきか
その功績はペニシリンに比肩すると云われる感染予防薬(凡庸抗菌抗生剤)を開発し名を馳せた某医薬品企業が『人類の存亡を賭ける』と銘打ち世界中に募り獲た金を乱用し設立した研究機関
衣食住その他のもの総てが選りすぐった最高級の物で占めると謳われる、その広大な施設の一画に、彼と私はいた
早い者は幼児期に遅れても十代半ばに出生年の使命を理由に親元から招集された凡そ300名の中に
当時、学舎以外は級別男女別に区分けされるその場所で最新の環境、且つ監視設備下で育成されていた
その“生息領域” “飼育ゲージ”をふたりは無花果と呼んだ
その頃は幾分友人関係を築き情報交換も熟したのだが、大学院を卒業後許された範囲で各々職に就いていることもあり連絡してこない者はどうしているのか知らない
少年少女は、闇機関からの救出者を皮切りとし同危険に晒される者を全世界に向け照会し、少しばかり枠を拡げ要保護と判断された対象者である
何かしらの使命感や信心の憑り代である者と、良い口減らし先が此処となった者が半々というところか
矯正施設への送致が決まっていたというのも若干名
入所当初は招集とは表向きの拿捕だと喚き散らし者も少なからずだった
だが事の前後で折衷案が為され、親権以外はこの研究機関に譲渡された顛末顛末を聞かされると黙るしか無い
概ねは今ある生活水準に慣れるに従い、研究を支持し把握するMATERIALE教に浸潤されこれを信奉し結果、人類の希望と自らを瞻仰することに至る
之に所属しない別のカテゴリーがある
教団・研究機関内部と深く関与しており各々方面に於いて利権実権を握る人物を親とする派、此処へ来ないで済む筈であった彼等は自由を切望した
その派にとって親とは単に戸籍上親権者であり血縁上は他人、血縁関係のある縁遠い上位親族
我が身可愛さに肉親であれ人質人柱に差し出すその手の人間を私達は恨みこそすれ恩など感じようがもい
│Doomsday《終末の》│Seeds《種実》の現個体数は公表されない
その減数が人口統計、人口推計・人口推移・生産年齢人口、人口動態と死亡数等々のデータベースから除外され、尚個人特定に関する文言は世界的機密とされていて如何様にしても探り出せなくしている
当然のことエイドリックの死は計上されない
それは私が死のうが生きようが何一つ記録されず誰の目にも映らず口の端にせぬ事と同義だ




