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無花果  作者: ももいろ珊瑚
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 IV


 読み終えた5冊を未処理の区分け箱に納め、小用を済ませに行くついでに外の空気を吸おうと考え立ち上がり背中を伸ばした

 Cigaret(たばこ)も吸いたかったが喫煙施設に指定されているカフェまで歩く時間を、この数冊を読むのに充ててしまったのでそれは諦めることにした


 私の名はKleou(キォウ)=Illgan(イルガン)

 正式な『無精子症』の診断書と入国許可証を取得しそれに司書免許(どれも所謂偽造品だが)を携え、カナダから二ヶ月前にこの『奇跡の村』と呼ばれる街ダージリング・サンセットに移り住み、中心街に在る旧国営図書館で司書として働いている


 この旧国営図書館は建物自体は史跡に近い古さではあるが敷地は広大であり、世界中から寄附された巨額な資金を充てた設備は最新である

 全てがオートメーション化されており、所蔵する書籍や記録物の管理は勿論の事出入りする人の情報、他エリアへの貸し出し依頼の受付や遅滞者への返却請求等をマスターシステムが一括で管理していた

 返却された物を棚へ直すのも機器が勝手にしてくれるし、冊子を持ち出せば入口に有るセンサーが何処の誰が何時どういったタイトルの物を貸し出しされ、返却日は何時に為るのか予測登録される仕組みなっていたので、受付係等は一人も必要無い

 私が従事しているのはそういう類いでは無く、主に古書の修復である

 貸し出し可能な書籍は半永久保証を受ける材質の物に限られていて、1階2階に置かれている物は全てがその紙質の物ばかりである


 3階は貴賓フロアーとなっていて特別な人間(つまりは投資者・各エリアの関係者か貴人・学識者と認められた者)しか乗れないエレベーターで上がる

 ゆったりと寛げる個室は50室余り存在し、調度品の全ては上品に明るく贅沢な物であった

 空調は人間では無く、持って入る書物に適した温度と湿度に保つよう設定されている


 このフロアーの各部屋で紐解かれる本達は或いはその人間よりも価値の高い物と謂えなくもない、半永久保証審査を受けないそれ依然に製造出版された超レアな著作物ばかりで、つまりは変色した後劣化破損し形を留めなくなる運命の世界が所有するお宝なのだ



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