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Ⅲ
『 Man Kloftede 建国に際して ~奇跡の村と呼ばれる由縁 Ⅳ』
もう柔らかく為っている厚紙の表紙に、そう金文字で刻ざまれている薄い印刷物を、数頁読み残した所で13時を知らせるチャイムが鳴った
一旦一階窓口まで戻ったがこの時間からすべき作業も無いので再び地下の保管室に戻り、その続きと残る内一冊を読む事にした
虐げられ行き場を無くした若者達が世界各地で集い始め、この村もその様な若者が好んで訪れ居住するようになった
元は鄙びた農村であったのだが、土地は肥え流れもあり又最小限の施設が揃って有り、それらの事が自給自足で住むに適していると判断させた様である、人口は急激に増加し村から町へと変貌していった
MATERIALE教はここに支部を置き努めて誠心的に彼等を保護支援し助け、同教団は教えを受けない者達の支持をも獲得した
他所他国(この頃には国境というものが撤廃されていなかったのである)にも別の宗教が介入し、彼等を集めようとした場所も多く在ったが殆どは、閉鎖的で偏った信念に基づき繁栄を望むもの
且つ信者のみの受け入れとあってそれ程に人口を伸ばさないでいた
同教団は世界的に教会支部を持つもので、各国の特定政党のバックボーン的団体でもあったが、支持をする者達は必ずしも信仰しているとは限らず広範囲に至っている
MATERIALE教は国連(世界連合の基盤)に働き掛け、同教団が支援している各地の施設団体をこの町周辺に集約させる事を条件に(そうする事で衰亡ゆく一個の国を存続する迄に回復させた)新たな一つの国と成す事を世界に提言した
これに共感を示した世界の名だたる企業(各国に莫大な影響力を持つ企業)複数が、国庫を支える事に次々と手を挙げ、同教団の後ろ盾となり『 Man Kloftede 』建国に尽力したことをここに明記しておきたい___
後は、何処の国から何という村や町がいつ集約されたのか、人口の推移、新たに建設された施設、歳入歳出の記録、歴代の評議会議院の名前と経歴、支援企業に団体の名称、そして最後に建国に際してMATERIALE教最高指導者が贈った国家憲章が大きく記されてこの巻は終っている