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無花果  作者: ももいろ珊瑚
11/18

συκον

 XI


 私が11歳の時、召喚されいった無花果(いちじく)の学業施設でエイドリックと知り合った

 彼は6歳の時からそこにいた

 私の何が気に入ったのか何かにつけ行動を密にしたがった


 集団生活に慣れていない者達の中、私もこれに漏れずで他者の心が読めずその雅量に戸惑っていた

 だが場の雰囲気を読みながら積極的に自分を通し、大人を上手く扱うことの出来る彼に、不思議と感じるものがあり、個室が与えられるハイスクール迄は彼と同室で過ごす事を選んだ

 年長者の立場から豊富な助言を聴けることも魅力であった

 幾分過激と思える彼の思考は当時、聴く者に目的をもって生きることを自ら撰ぶ当たり前さを薫らせた

 後にその死をもって、慕ってきた者達を須らく須らく(すべからく)落胆のcanyonに彼は突き落としたのだが__



 遺伝子研究関連の今の両親の元へ引き取られた私と同じく、彼も乳児期に実業家に里親に出されており、反りが合わなかったのか進んで家を離れ此処に来たらしい

 生みの親と里親への反発心は恨みを伴い精子提出が始まった頃から抑えられぬものと為り、向けられる先が大人全体社会全体へと拡大して、果てには自分の存在否定へと繋がっていった

 エイドリックが違法の娼婦宿に行き出した理由の根底にそれはあった



 私達は精子提出が課せられてから、その速やかな達成の為と請求すればその様な場所に通える、偽造した一時的身分証明を手渡される

 勿論行き来が許されるのは正式な登録店、そして特記されるのは教団から推奨されている店だけである


 清潔、且つ病歴の無い相手と一度きりが原則

 常にクリーンな環境にいる私達が違法な場所に立ち入るだけでも、何等かの病原菌を貰う怖れを有する(ゆうする)くらい誰もが理解しているし、ましてや危険度が増す店を調べて(まで)行く者などいない

 普通はそうだし私もそう思っていたが彼は違った


「俺達は種馬じゃ無いんだぜ。愛なく精子を出せとか言う奴らに従う事なんて無いだろ?愛を見つけに行くのに善悪なんてないさ。」

 彼の主張も間違ってはいないのだろう

 しかし所詮は金銭目当ての交流の場

 そんな(ところ)で愛など見つかるまい、直ぐに飽きると考えた私は止めだてはしなかった



 が、私は勘違いしていた

 彼が言った愛とは愛してくれる相手では無く、愛せる相手だったのだ



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