淫獣になった日 プロローグ
ーー突然だが、魔法少女という存在を皆さんはご存知だろうか?
もし、分からない人知りたくなった人、この問いを聞いて興味を持った人がいるなら僕が知っている範囲のことをこれから説明するので時間の都合がよろしければ聴いてもらいたい。
魔法少女 (まほうしょうじょ)ーー時は、遡ること19世紀後半、正確に言うなら僕らが生まれていないアナログ時代にテレビアニメの新しいジャンルとして誕生した空想の存在である。誕生した当初は今では馴染みのある魔法少女という名前ではなく、その幼い容姿からなのか魔女っ子ともいわれていた。
魔法少女について簡単に簡潔に説明するなら思春期を迎え始めた女の子がある日を境に何か切っ掛けがあって魔法を身に付ける、かまたは元々習得していた。あるいは先天性の才能を用いて魔法を使って色々なことをするらしい。
……説明は以上だ。本当、これだけで説明が終わってしまうので、こんな少ない話では聴いてくれた人には少なすぎてつまらないと思われてしまう。それは僕にとっても不都合なので少し場繋ぎのため、補足として魔法少女の歴史について説明させてほしい。
ーー魔法少女の今までの歴史。
テレビアニメの新しいジャンルとして誕生した当初は魔法を使っての人助けをすることが物語の主体であったが、時が進むごとに魔法を使って容姿を変化させアイドル活動を行なったり私用のために魔法を使い始め、次第には魔法を使っての敵と戦うなどの当初の人情溢れる人助けとは大分かけ離れているバトルものや殺戮や恐怖などのホラー要素が含まれるもの、ある年齢層をピンポイントに狙っているようにしか思えない萌え要素なるものが織り込まれているものが展開されていった。近年のアニメ、言うなれば僕らの時代でもあるデジタル時代は一部を除くがそれが主流であり放送される時間帯や視聴する人間の年齢層の幅が昔に比べて多いため人気がある。(ただし、当初の視聴者である子どもたちが憧れを抱いて観るのとは大分かけ離れてしまった……)
しかし、問題としてタイトルに魔法少女と書かれているのにも関わらず魔法少女とは似て非なる者が現れた。(……まあ、正確には視聴者が付けたあだ名とかだけど)アニメでは遠距離から攻撃するための手段のない敵をロングレンジから一方的に砲撃する魔法少女ならぬ魔砲少女や、ライトノベルの方では魔法少女のような服を着て女装した男がチェンソーを扱いぬいぐるみのような敵を倒す魔法少女ならぬ魔装少女という(男の時点で少女とは呼べない)者が現れ始めてしまった。このようにして今、本来の魔法少女は絶滅の危機に貧しているわけだ。
……ふぅ。補足としたつもりがうっかり長々と説明してしまった。大まかだけどこれが魔法少女の歴史みたいなものだ。何故僕がこのような面倒で聴いててよく分からない説明をしているのかは聴いてもらいたい本題と少しだけ関係があるからだ。
さて、僕の中での長話を終わりにしてそろそろ本題に入るとしよう。
早速本題に入るが……皆さんは魔法少女の使い魔はご存知だろうか?
使い魔というのは実際に言われてもイメージしにくいと思う。例えて言うなら姿かたちが小さい小動物みたいなのを想像してくればいい。こいつらは主人公たちに魔法少女になる切っ掛けを与える存在であり、バトル系魔法少女アニメに出てくる魔法少女の後方支援や戦闘サポートをするのが主な役割の魔法少女の僕。戦う時以外は魔法少女の家に居候する迷惑なーーいわゆるペット的ポジションの奴。アニメを見たりしているとたまに居るだろ?人間の言葉を喋る食事するときに背中から体内に食べ物を取り込む変な形をした奴や人間フェレットとか。
こいつらの呼び名は使い魔の他に妖精や精霊などがあり、その名の通り現実ではお目にかかることはまずない存在、魔法少女と同じく空想の存在だ。しかし、可哀想にも最近の呼び名は淫獣というのが定評。理由は……まあ魔法少女の変身シーンや風呂、それに着替えをなどの世間一般で言うところの所謂……サービスシーンを近くで覗くことや、間近で見ることが出来ると思われているから嫉妬という意味合いを込めてそう呼ばれている訳だが……現実はそんなことがないのが今の現実だ。断固として自信をもって言える何故ならーー
「ティポさんお願いします!」
「了解だニー」
ーー絶賛その淫獣に僕は今なっているからだ。分かると思うが、この「了解だニー」といったのが僕である。間違っても「~さんお願いします!」と言っている方ではない。
とりあえず分からないと思うから今の状況はというと、自分が言った馴れない語尾に吐き気を覚えつつも僕は、マスターである魔法少女の指示に従い僕が認識した敵に接近するところだ。
どうしてこうなった。今の僕の心はそれで一杯だ。
どうして元"人間"である僕がこのようなことになってしまったのか、それについて一から順を追って説明するにはこれから僕が善意によって行動した行動に僕が後悔することになった話を恐らく語ることになるだろう……。