第8話
お気に入りが……って毎日言っている気がします。
でも! 本当にありがたいことで!
今後も頑張っていきますので応援よろしくお願いします。
街の入り口から中に入ると、ログインした時と若干の違いがあった。
それは、非戦闘地域である街中にモンスターが居る事だ。
当然それはプレイヤーと思しき人たちがテイミングしたモンスターであり、プレイヤーらしい人の傍に一緒にくっ付いていた。
玉ねぎの様な形をしたモンスターや、蝙蝠の様なモンスターもいる。
中には、黒緋と同じ『ベルドッグ』を連れているプレイヤー見かけた。
それにプラスして、プレイヤー同士の交流も始まっているらしく、何人かでチームを組んでいるっぽく見える人らもいる。
このゲームはプレイヤー3人で1組のチームを作ることが可能になっている。
チームでモンスターを討伐したりクエストしたりすると受けられる恩恵がある、らしい。
らしいというのは、例によって詳しい詳細が運営から語られてないからだ。でもそこはネットゲーム。やはり見知らぬ人との交流を経てチームを組んで行動すると言うのは楽しいものだ。
俺もテイミングに成功もしたし、チームを組んで行動も考えないこともないが、それよりもクエストなどもう少し調べたいこともある。
別に攻略に焦っている訳でもないし、そこは自分のペースでゆっくりとやっていきたいと思う。
隣を歩いていた黒緋と街の入り口横の詰所に向かい、そこで冒険者ギルドの事を聞いてみる事にした。
「すいません。冒険者ギルドって何処にありますか?」
質問した俺に対応してくれた兵士っぽい人がそれに答えてくれた。この人、最初に会った人だ。
「あぁ。この街に冒険者ギルドは無いよ。この街から街道を進んで行った先にある【レットリー】の街まで行けばあるんだけどね」
無いのかよっ!?
思わず声に出して突っ込みそうになった。
それにしても、いくら田舎設定としても最初の街にお金稼ぎが出来る様に冒険者ギルドが無いのは、おかしいんじゃないか? そんな事を思っていると、兵士さんが良い事を教えてくれた。
「この街は冒険者ギルドが無いかわりに街の住人などから個別に依頼を受けれたりするよ。色々な人に話しを聞いてみると良いかもしれないね」
なるほど。冒険者ギルドが無いかわりにそういったシステムなのか。
ある意味で、最初の街としては良いのかもしれない。
街の人に話しを聞くのはRPGではお馴染みの行為だし、そこからクエストを熟して街に詳しくなるというコンセプトだろう。
クエストには、色々な情報も入っているかもしれないし、ある意味チュートリアルの様な事になっているかもしれない。
ただ、このゲームの運営の事を考えると一抹の不安もあるが……果たしてそんなに親切設計にしているか? と……
少しの不安を感じながらも兵士さんにお礼を言って詰所を後にする。
まずは、数軒ある民家を回ったりして話しを聞いてみる事にした。民家に向かって黒緋を連れて歩き出した。
それにしても、黒緋は凄いな。どういった制御をされているのか分からないが、街中では一定以上離れないっぽいし、他の人に吼えたりもしない。
かなり高度に躾けられている犬って感じだ。
そんな事を考えながら民家の近くまで辿り着いた。そこで、またも驚きに目を開くことになる。
――― 何だこの、行列はっ!?
この街に数軒しかない民家は、ある意味で街の中心に近い場所に密集している。
そして現在その民家の入り口からは、プレイヤーの列が出来ていた。
――― これ絶対クエスト待ちだ。これはダメだ。こんな並んでクエストを受けるとか……絶対無理! って言うか絶対嫌!
ゲーム自体を行列に並んで買ったくせに、そんな事を思ってしまう。
「黒緋。クエストは中止だ。今日はレベル上げ優先で行動しようか……」
隣に並んでいた黒緋にそう声をかけると、嬉しそうに「ワン!」と返事をしてくれた。
黒緋にとっては訳の分からないクエストよりも狩りの方が良いんだろうけどね。
街で連れているモンスターを見る限り、まだ会ったことの無いモンスターも数種類いるっぽいし、それを探しながら狩りをしてレベルを上げるのもありだと思い直す。
チャンスがあれば、もう1匹ぐらいテイミングするのもありかな。
でも『ばぶるん』はもとより、草っぽいのも蝙蝠っぽいのも、意外と見た目が微妙で好きじゃないんだよな。
何か良さそうな心惹かれるのが居ればかな。
「よし。黒緋行こうか」
「ワン!」
黒緋に声をかけ、来た道を戻る様に街の入り口に向かって歩いて行く事にした。
街の入り口に着くとそこには、2人の男女が詰所の横で話しをしていた。プレイヤーだろうと見当は付いたが、別に興味も無く横を黒緋と通り過ぎ街を出ようとしたらいきなり声がかかった。
「すいません! その子、撫でて良いですか?」
一瞬俺に言われたか分からずキョロキョロすると、どうやら黒緋を撫でたいらしく目線が話しかけた俺ではなく黒緋に向かっていた。ちなみに、男女共にだ。
迷ったけど特に急いでる訳でもないし、良いかと思い黒緋を見ると、露骨に目を反らされた。これ、黒緋嫌がってるな……
「ごめんね。この子テイミングしたばかりで人に余り慣れてなくてね。だから撫でるのは勘弁してもらえる?」
人に慣れていないとかあり得るのか分からない情報だが、断る言い訳としてはありだろうと思い説明すると、話しが変な方向に向かっていく。
「その子テイミングしたんですかっ!? 良いな……私も欲しいな……」
「羨ましい。俺もわんこ欲しい……あの、そのわんこくれませんか?」
いや、それ無理だろ。このゲーム、テイミングモンスターの譲渡が出来る何て話し聞いたことないし、システム的に譲渡出来たとしてやらん!
黒緋もそんなに不安そうにこっち見るなよ……もう少し信用してほしいもんだ。短い時間だが、ボスから逃げたりした仲じゃないか……
「申し訳ありません。無理です」
しっかりと拒否する。
しかし向こうも諦めきれないらしい。
「そうですか。そうですよね……でも可愛い……同じモンスター私でもテイミング出来るかな?」
「何度もやれば出来るんじゃねぇ? そういうゲームだし」
確かにそういうゲームだが。
男の方は、背が高い竜人のアバターをしていて、女の方はエルフだ。
もしかしたらこのゲームの事だから種族とかでテイミングの成否に補正がかかってる可能性もあるけど、まだ序盤のモンスターだしテイミング出来る可能性は高いだろう。
「多分出来ると思いますよ。この街を出た先の草原で出会えると思うので試してみるのはどうですか? 『ベルドッグ』というモンスターがこの子と同種になりますので。ノンアクティブなのでテイミングを連続使用すれば、後は運次第だと思いますよ」
俺の言葉に納得したように2人はお礼を言い、そのまま街の外へ歩いて……いや、走って行った。
いきなり変な事言われて狩りする気分も少ししぼんでしまった。このまま行っても失敗はしないだろうけど楽しくないだろう。
そこで視界の端に表示されているリアル時間に目をやると、すでにお昼すぎて良い時間になっていた。
このゲームでは空腹度というものは存在しない。よってゲーム内で食事を取ることは今のところ無い。
というのは、今後もないとは、この運営だから断言出来ないのが悲しいところだ。
こういった修正を入れるのはネットゲームの常ともいえるし。
「黒緋、何か狩りの気分じゃなくなっちゃったから俺一度落ちるよ。ご飯食べたらまたINするから、そうしたら狩りしようか」
黒緋に尋ねると「ワン!」と元気なお返事が。どうやら理解してくれてるらしい。
というか、きっと黒緋もさっきのやり取りで色々ケチがついたとか思っているのかもしれないな。譲渡してとか言われたし……
一度しゃがみ黒緋の頭を撫でてあげてから、ログアウトボタンを押しログアウトをする。
視界が暗転していく中、ログアウトボタンを押す時にログアウト不能のデスゲームを想像してしまったのは、仕方ない事だろうと思う。
前書きに今後も頑張ると書いたのに、早速頑張れないことがあり申し訳ありません。
この小説は書き溜めを行っておらず毎日書いて更新しているのですが、急遽予定が出来てしまい、これを書いた後外に出て家に戻れない事態になりそうで、明日の更新が出来ないかもしれません。
楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、お許しください。
戻り次第何とか更新したいと思います。
頑張って、明後日に2話更新とか帳尻合わせの様な事が出来ればと思います。
【修正】ご指摘にあった冒険者ギルドのくだりを変更しました。
【修正】冒険者ギルドの関係を3話との兼ね合いのため修正しました。