第14話
スキルの検証を終わらせ街に着いた後、今後の資金は必要になるし、レベルも上げておく方が今後も色々楽だろうとソロで出来るクエストを少し見繕って受注し熟した。
ソロだったので昨日よりも効率は昨日よりも大分落ちるが、割りと良いお金稼ぎになったとステータス画面に表示される金額を見てほくそ笑んでみた。
クエストに想像よりも時間が掛かったため、夕食の時間になってしまい慌ててログアウト。すると、ベッドの上で意識が戻って最初に目に入ったのは、ベッド脇にあるVR機器に接続されているコードを握りしめる母親の姿だった。
(危ねぇ…… もう少しでまた強制ログアウトを食らうところだった。これからは本当に時間には気を付けないとダメだな)
「あんた、ゲームばっかりじゃダメって言ったでしょうが?」
MAXまではいっていないが、若干キレ気味の母親に言われ恐々と反論する。
「いや、宿題も今日の分は終わらせてるしやっても問題ないんじゃ……?」
「宿題だけじゃないでしょ? 晩御飯の買い出しとか、手伝いは山ほどあるんだからね? 本当に程々にしないと、そのゲーム機使えなくするからね?」
そんな母親の脅し(?)に、反抗出来るはずもなく、項垂れながら「分かったよ」と言うしかなかった。
相変わらずと言うか、本当に怖い母親だ。
それでも問答無用じゃないだけは、マシかと思い直す。
そんなやり取りの後、晩御飯の買い出しに行きながらメールを確認すると、哀川さんから夜の接続時間が送られてきていた。
実際にメールでそこまでやり取りをして時間を合わせる必要は無いのがネットゲームの良いところでもあるのだが、今はクラン設立が今日まで持ち越しになったこともあり仕方ないかと思い直す。
今日の昼にホームセンターで思いついた『絆』と言うクラン名。3人は気に入ってくれるといいんだけど……
むしろ、他の皆の考えてきた名前も凄く気になる。
「御馳走様でした」
晩御飯を食べ終わり、食べた食器類を洗って早速部屋に戻る、前に、母親にゲームの予定を告げておくことにする。強制ログアウトは困る。特に一人じゃない時だと……
「これからまたゲームするからね。今日の分はもう終わっているし、他にすることないよね?」
母親は、俺の言葉に他に何か無かったか少し考えて居たが、何も思いつかなかったらしく「構わないけど、なるべく早く寝なさいよ?」と言って許してくれた。
これで安全は確保された! それでも寝る時間を削ってまでやっていると地獄を見るのは明らかだから、一応時間は気にしようと心に誓って部屋に戻る。
部屋に戻って携帯を確認すると、メールが1件。送り主は『哀川怜那』と表示されていた。
メールの内容を確認すると、すでにログインして待っているとの事。どうやら、クラブ名で名案が浮かんだらしく、早く公表したいから速やかにログインする様にと…… 一体どんな名前を考えて来たのだろうか。若干の不安もある。
俺も昼間思いついた『絆』というクラブ名を考えたし、それについてどうかも聞きたい。
メールを確認し終わって楽な恰好でベッドに横になり、すでに慣れ始めているVR機器をセッティングしてログインをする。
ログインすると、第2の街のクラブ協会の前だった。昨日ここでログアウトした時のままだ。
さて、スイーツさんは何処に居るのかな?
そのまま近くに現れた黒緋と翡吹の2匹と戯れていると、こちらに向かって声を掛けながら走ってくる人が居た。
「ジンクく~ん! 待ってたよ!!!」
スイーツさんは、息を切らせることもなく(VRゲームだから当然なのだが)傍まで走り寄ってくると、その勢いのまましゃべりだした。
「あのね! 私凄い良い名前思いついたんだ! やっぱり色んな人が居るし万人受けする名前が良いと思ったんだよね。それで思いついたのが……」
「ちょっと待った!」
そのまま二人だけで決めてしまいそうな勢いで名前を言いだしたので、皆が集まるまで待とうと提案する。
「クラブ名は、皆考えてきているし、ミノール君とミカヅキさんが揃ってからにしようよ。俺も一応考えてきたしさ」
「んーそっか。そうだよね。んじゃ後で言うね。まぁきっと私のやつに決まると思うけどさ」
凄い自信だな。そんなに良い名前なのか。
何かから抜粋でもしたのかな? でも楽しみが増えた。
俺のも割りと自信はあるけど、あそこまで自信満々には慣れないよね…… まぁ性格的な物もあるだろうけど。
その後、スイーツさんには、俺が昼間にスキルの実験などをしたことを話し、スイーツさんにもある程度自分のスキルの効果を確かめておいた方が良いなどといった話しをして残りの二人がログインするのを待つことにした。
結局いつもの様に最後に来たミノール君が、スイーツさんに説教されるイベントを熟した後に皆で話せる場所へ移動した。
「それで、クランの名前の事だけど、みんな考えてきた?」
第2の街の中心部から少し外れた、公園の様な場所でベンチに腰掛け、皆を見渡しながら聞いてみた。
「俺は、一応考えてきたぞ」
「私も! 凄い良い名前が思いついたから! もう私ので決定だと思うよ!」
「一応私も考えて来ましたよ。そんなに自信がある訳ではないですけど」
ミノール君、スイーツさん、ミカヅキさん、3人とも考えて来てくれたみたいだ。
俺も一応名前は考えてきたが、自信満々のスイーツさん何かを見ていると、良いと思った自信が揺らぐなぁ……
「そしたら、俺からな! 俺が考えてきた名前は『魔物戦士団』だぜ!」
「「却下!」」
勢い良く言ったミノール君の意見に即座に却下を言い渡したスイーツさんとミカヅキさん。気持ちは分かるけど……
「そんな可愛くない名前とかありえないし!」
「そうですね……少し暑苦しい感じがしますね。男の子が好きそうですが、私たちの事も少しは、考えて欲しいかもしれませんね」
名前的に、確かに俺も思うところはあるけど……
まぁ女の子が居る時点で、あの名前は無いか……
「とりあえず、ミノール君の考えた名前は、一応候補だね。次は……」
俺が先に進めた瞬間、今度は、スイーツさんが勢いよく立ち上がって声を出した。
「次は私ね! ふふーん。絶対この名前を聞けば、皆納得するわ! 私の考えてきた名前は……『フルーツ天国』よ!」
いや…… フルーツは、スイーツさんのテイミングしたモンスターだけじゃないか……




