第10話
「黒緋! そっちのにトドメ!!」
俺の叫びを聞いた黒緋が、相対していた『がらら』という名前の蛇っぽいモンスターにトドメを刺した。
これで、俺のレベルが漸く25になった。
全てのクエストを達成後、報告に戻るよりもレベル上げを優先する方が良いと言ったミカヅキさんの言葉で、街に戻らずにそのまま狩りを続行させレベル上げをすることになった。
金銭的に不安もあったが、俺らの受けたクエストの報酬額が、クラン設立の半分ほどになる事もありミカヅキさんの言葉に納得した形だ。お金だけ稼げて、レベルはまだですなんて言えないしね。何のためにパーティーを分けたのか分からなくなる。
「ミカヅキさん。無事レベルが25になりましたよ」
「おめでとうございます。私もどうやらレベル24になったようですね」
当然と言えば当然か。
俺がレベル20から25までレベル上げをして、同じパーティーで分割された経験値をミカヅキさんも得るのだから24になっても驚く事もないか。
俺とのレベル差は、元々レベル20での蓄積された経験値の差になるのだろう。
「あの子達もそろそろ街に戻っているのかしら? 無事に居ると良いのだけど」
あの子達…… ミノール君とスイーツさん達も無事にクエストを熟してお金を稼いでくれているかな?
そんなに難しいクエストをやってはいないとは思うけど…… ミノール君が居るからな。
スイーツさんがちゃんと手綱を握って居てくれればいいのだけど。
「時間もそこそこ経っているし、きっと大丈夫だと思いますよ。俺らのクエスト報酬もありますけど、もしかしたらそれ以上に稼いでくれているかもしれないですしね」
そうだったら、今後装備や他の事に金銭を回せるので楽になるけどどうだろう。
「ともかく、街に戻りましょうか」
「はい」
そうして、俺たちは街に戻る事にした。
街に着いて冒険者ギルドに向かうと、タイミング的に丁度良かったのか、ミノール君とスイーツさんがクエスト報告を行ってるのを発見し、早速合流する事になったのだが……
「すまん!」「ごめんなさい!」
何故か二人はいきなり土下座状態に。
え? なにこれ……?
いや、何となく理由は理解出来る。多分クラン設立資金を稼ぎきれなかったんだろうけど……
「ちょ!? 土下座はやめて!」
周りの目もあるし、俺は慌てて二人を土下座から解放する。
「ここだと目立つし、ちょっと移動しようか」
俺らのクエスト報告はせずに、とりあえず一旦その場を離れるために外に出る。
ギルドから外に出て、少しギルドから離れた場所で、改めて事情を聞くことにした。
「~~~という訳で、設立資金に届かなかった」
「この馬鹿が、ね……」
話しを聞いて、やはり想像通りと言うか何というか。
でもそれだけ稼げていれば、俺らのクエスト報酬と合わせれば何とかクラン設立は出来るかな。
「大丈夫だよ。俺らのクエスト報酬もあるし、それを足せば多分クランは作れると思う」
「いや、でもあれだけ大口叩いたのに、不甲斐ない」
「ごめん」と再度頭を下げる二人に、大丈夫と何度も言うけど、中々納得してくれない。
どうするか? と困っていると、今まで静かだったミカヅキさんがすっと近寄っていく。
「二人とも、ジンク君が困っていますよ?」
ミカヅキさんの一言で二人がビクッとなった。
何でそんなにビビってるの!?
「資金の事は大丈夫という事なので、それ以外で何か埋め合わせを考えなさい。良いですね?」
何と言うか、凄い謎のオーラを出して二人に寄るミカヅキさん。
俺そんなに気にしてないのに……ビビってる二人を見ると凄く罪悪感が……
「あの、ミカヅキさん。俺そんなに気にし「いけません」てない…… そうですか」
俺の言葉が被せ気味でダメ出しされた。
どうやら、話しを聞くとこういった事にはケジメが必要との事だ。
じゃないと後々気にして尾を引くとの事。確かに、ミノール君は意外と真っ直ぐだしそういう事も必要かもしれない。
本当に気にはしていなかったが、それが良いという事で、後日何かしらで埋め合わせをするという事で決まった。
その後、ギルドに戻り俺らのクエストを報告。報酬を受け取った。
俺らの報酬は、20700Gだった。
ミノール君とスイーツさんが稼いだお金が80000Gを少し超えていたので、無事にクラン設立資金の金額を超えたことになる。
それを確認した俺らは四人でクラン協会へ足を向ける事にする。
クラン協会で、いよいよクラン設立となるところで、今まで考えて居なかった問題が発生した。
それはクラン協会の受付さんの一言から始まった。
「では、クランの名前を設定してください」
そう。基本的にネトゲなどであるギルドやクランなどの多人数が参加する団体では、名前があるのだ。
そんな事はすっかり忘れていた俺は、三人に何か希望の名前はあるのか聞いたのだが……
「えっと、誰か何か希望の名前とかありますか? 禁止ワードはあると思いますが、あまりにも変じゃなければ多分大丈夫だと思いますよ?」
俺が訪ねると、ミノール君が希望を言った。
「そうだな…… 『電脳戦士隊』とかどうだ?」
どこの戦隊物だよ。というか、高校生でそのネーミングセンスは、どうなんだ?
「絶対嫌! そんなのだったら『フルーツパフェ』の方が断然いいわ!」
スイーツさん…… それ自分の好きな物じゃないの? 確かにそういった名前を付ける事もあるけど…… その名前付けるなら、マスターはスイーツさんじゃないとおかしくない? 感じ的に。
「私は、皆様にお任せしますけど…… しいて言えば『豪傑の集い』など如何でしょう?」
ミカヅキさん…… そういえば三国志好きだって言ってたっけ…… でもそれはあまりにも、あまりな名前じゃないかな。って言うか、俺豪傑って感じじゃないし……
その後、数十分間三人は意見を出し合っていた。俺は、それを眺めるだけでお腹いっぱいだ。
でも、考えないと先に進まないしな…… それに、あの三人に任せていたらどんな名前になるか分からないし。
ふと三人に改めて目を向けると、何か三人が俺に注目していた。
「ジンクは、何か無いのかよ?」
ミノール君の言葉に少し考えて、思いついた名前を口にする。
「う~ん…… 『モンスター愛護団体』とか?」
俺の思いついた名前を聞いて、皆が動きを止めた後、大爆笑が起こった。
どうやら、俺のネーミングセンスも残念だったらしい…… なんでだ!?
誤字脱字、感想よろしくお願いします。




