第6話
冒険者ギルドに続き到着した『クラン協会』は、先ほどの冒険者ギルドと少し違い、見た目にも清潔感のある真っ白い建物だった。
どちらかと言えば、役所などを連想させる造りに見える。
4人で入り口の扉を開けて中に足を踏み入れると、数人のプレイヤーらしき人を目にする。
何故プレイヤーと分かるかと言うと、自分たちもそうだけどテイミングしたモンスターを連れているからだ。
基本的にNPCは、モンスターを引き連れている事は無い。
役所を連想させると言っていた通りと言って良いのかどうか、綺麗な真っ白いカウンターが並び、そこに受付の人が数人並んでいる。
人がそこまで多い訳ではないので、順番待ちという事は無いようだが、今後人が増えたらどうなるかは分からないところだろう。
実際の役所の様に、番号札でも配り始めるかもしれないと思うと、少し笑える。
4人で空いている受付に向かい、受付の人に声をかける。
「こんにちは、クランの事はこちらで聞けばよろしいですか?」
俺が声をかけると、受付の女性が笑顔を浮かべながら受け答えをしてくれた。
「いらっしゃいませ。こちらはクラン協会になります。クランの事はこちらでお尋ねください」
「えっと、クランを作りたいのですが、どうすればいいでしょうか?」
設立条件など何も情報が無いので、とりあえず聞いてみる。
「クラン設立ですね。クランの設立には【マスター1名、メンバー2名の最低3名】から設立出来ます。マスターはレベルが25以上でないといけません。更に【設立時に金銭が10万G】がかかります。設立時にマスターになる方が申請をして頂き、金銭を治めて頂くと設立出来ます」
おう……レベル25は、そんなに難しい気はしないけど、金銭が10万Gもかかるのか…… これはかなり厳しい気はする。でも恩恵を考えるとそうでもないのかな?
乱立を避けているのかどうか。ただ、今はまだ初期段階だから厳しいと感じるだけかもしれないけど。
他の3人に目を向けると、2人も同じことを思ったのか難しい顔をしている。例のごとく、ミカヅキさんは理解していないのか、肩に乗せたラルルを撫でているだけだけど。
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ、何かありましたらいつでもお越しください」
お礼を言って受付を後にして4人で集まって話しをする。
「えっと、とりあえずお金は皆持ってないから、冒険者登録もしたしそっちでクエストをこなしてお金を作って再度来る感じかな?」
4人でやれば、そこそこの早さで10万Gぐらい貯まりそうな気はする。
俺の言葉に、スイーツさんが少し思案顔を浮かべる。
「うーん…… お金を作るのは分かるんだけど、とりあえずマスターのレベル制限があるからジンク君はレベル上げを優先する方が良いんじゃないかな?」
おっと…… 俺がマスターなのは決定なのか?
「あの…… 俺がマスターなのは、決定?」
「何言ってるの? マスターはジンク君しかいないから。だからジンク君は、レベル上げになるクエストを中心に受けてレベル上げ優先で。お姉も一緒にテイミングとレベル上げしてくると良いよ」
マスターは、まぁ納得しないとダメかな。別にスイーツさんとかでもいいと思うけど……
そうすると、スイーツさんが言う様にレベル上げを伴いそうなクエストを受けるのが良さそうだ。ミカヅキさんもラルルのレベル上げも必要だし、他にもテイミングしたいと思えるモンスターに会うかもしれないし一緒に行動する方が良いかな。
「スイーツさんとミノール君には、金銭優先って結構面倒な部分をお願いしちゃうことになるけど、それでも良いの?」
俺の心配に2人は、何も問題ないと言う顔で了承してくれた。
「当然。必要な事だしね」
「仲間なんだから協力するのは当然だろ? そっちは任せとけ!」
本当にありがたい。ソロプレイも悪くは無いけど、こういうのがあると、やっぱり仲間っていいなって思う。
「そしたら、俺とミカヅキさんペアとスイーツさんミノール君ペアに分かれてクエストを受けよう。目標は、今日中にクラン設立だね!」
「ええ。頑張りましょう!」
「おう! やってやるぜ!」
「はい。お任せします」
クラン設立に向け、各自ペアに分かれ行動をする事になったのだった。
ミカヅキさんとのペア…… 少し不安もあるが、大丈夫かな。
それよりも…… 向こうのペアの方が心配だけど…… あの2人上手くやれるかな……?
心配もあったが、とりあえず俺たちは冒険者ギルドに戻る事にした。
もちろん依頼を受け、金銭を稼ぐ目的である。
そもそもモンスターを討伐する依頼を受けて行けば金銭と共にレベルアップも図れるのだが、ペアに分かれるのには理由があった。
一つは、クエストの報酬は受注したパーティー単位に支払われるという事だ。
もちろん人数が多いパーティーで受ければ一人頭が少なくなる。だが、今回はクラン設立資金という事で、わける必要は無い。なのに分かれたのは、あまり街から離れ高レベル帯のクエストを受注するつもりが無いからである。とすれば、分かれて2つ分のクエストをこなす方が良いとの判断だった。
二つ目は、俺がレベルアップを優先しないといけないことだ。
どちらかと言うとこっちの方が主目的である気はするが、ともかくモンスターから得られる経験値も頭割りになる。そしてそれは、クラン設立を早急に目指そうとすると、どうしても俺のレベルアップを優先させる方が良いとの結論だ。
もちろんミカヅキさんが居る事で経験値自体は下がるのだが、そこはソロでのクエスト受注のリスクとミカヅキさんと今も肩に乗っているラルルのレベルアップもすると言う目的の為でもある。
そんな訳で、俺たちは冒険者ギルドで分かれてクエストを受注するのだった。




