第20話
さて、場所を草原フィールドに移した俺たちは、先ほど話していた曲者な敵『ばぶるん』を前にしていた。
『ばぶるん』は、こういう見た目が好きな人からすれば、可愛いと感じるぐらいの姿はしているが、可愛い物好きっぽいスイーツさんの琴線には触れなかったみたいだが、ミカヅキさんはどうだろう。
万が一ミカヅキさんの琴線に触れ、テイミングすると言い出したら、やはり止めないといけないだろうな。
「では、まず出来る事から色々教えていきますね。俺たち『プレイヤー』は各種のスキル最初のキャラ設定で取得していると思います。それとは別に最初から持っているスキルが『モンスター鑑定』と『モンスターテイミング』って2つあって、基本はそれで敵を鑑定して、仲間にしたいモンスターであればテイミングをする。そうでない場合は、戦うか逃げるかするって形になります」
自分で選択したスキルについての説明は今はいいだろう。
何を取得したかは、それこそ本人にしか分からないし、それを使うのもまた本人だ。
同じスキルを取得していて情報を共有することも出来るけど、今は別にそこまで重要ではないと判断する。
俺の言葉を真面目な顔をして真剣に効いているミカヅキさん。こういったところがスイーツさんやミノール君とは違う感じがするな。
さて、心配したことはどうかな?
「それで、今この目の前に居る『ばぶるん』ですけど、こいつ相手に最初は『モンスター鑑定』を使ってみましょう」
俺の言葉に軽く頷き、スキルを使用するミカヅキさん。
その後目線が少し下がった。きっと現れたログを確認しているのだろう。
「チャットログに今鑑定した情報が出てきましたか?」
俺の問いに、視線をチャットログから離さずに頷いた。
「ええ。名前とレベルと種族が出ています。これは、この子のデータになるんですね?」
データって…… あぁーでも一般的にはそう表現しても間違いではないか。
「はい。ゲームとかだと普通はステータスと表現しますが、データでも間違いではないです」
それでは心配ごとを聞いてみるかな……
「では、そいつですけど…… テイミングしたいですか?」
俺の言葉に、ピクッとスイーツさんが反応した。
いや、勧める訳じゃないから安心してよ。逆に止めさせるから!
「いえ、特には仲間にしたいと思いません。あまり勇ましそうではないですし……」
ミカヅキさんの言葉に俺とスイーツさんは安堵の息を思わず出してしまった。
実際にこれをテイミングして爆撃部隊を作るって方法も無いとは言わないが…… そんな神風特攻部隊の様な戦い方はおすすめは出来ないよな。
それに、ミカヅキさんの好みが少し分かった気がする。
先ほどの「勇ましそうではない」って事は、強そうな感じのモンスターが好みって事だろう。
どの様な感じを強そうと判断するかは、これまた個人的な事なので推測しにくい部分ではあるけど、普通からすればまだ序盤の今の段階では強そうと見た目で判断出来る様な敵は出てきていない。
今後テイミングしていくうえで、その点はミカヅキさんにも言わないとダメだな…… じゃないと折角のテイミングゲームなのに、モンスター無しのボッチプレイとかになりかねん……
「テイミングに関しては、今後したいと思えるモンスターが出た時にまた説明しますね。ではこの敵を倒しましょう、っと言いたいのですけど……こっからがこいつの厄介なところなんです」
やっと核心。この説明をするために俺らは付いてきたと言っても良いな。
「こいつは、こちらが攻撃すると、その攻撃を反射するんですよ。で、そのせいで何度も死ぬといった事になり兼ねない危険なモンスターなんです」
「うちらが繰り返し死んだのは、それなんだよね」
俺の注意点に凄く強く首を縦に振るスイーツさん。さすが実体験者は違うな。俺は死ななかったしな。死にかけたけど……
「そうなのですね。では、この子は倒さない方が良いのですか?」
一応ミカヅキさんも納得してくれた様だ。
「いえ、反射がモンスターを中心とした場所からの爆発攻撃なので、範囲外から攻撃すると問題ありません。しかも弱いモンスターなので攻撃力はいらず、こちらの攻撃を当てるだけで倒せますので、武器を投擲して倒していくのが良いと思います」
俺の教える攻撃方法に「なるほど」と納得するミカヅキさん。
何か生徒会長に物を教えるって言うのは貴重だな。学校での生徒会長は、普通に完璧超人で、更には校内主教の女神様だからな…… 俺ごときがこういやって講釈垂れているのを見られたら、俺やばいかもしれない。
「では、少し離れて攻撃してみましょうか」
『ばぶるん』に攻撃して見る事にする。
そこまで難しい事ではないだろう。武器を投げて当てるだけだし。
ある程度距離を取り、改めて攻撃の合図をすると、ミカヅキさんは槍を振りかぶり、まるでやり投げの選手の様な投擲フォームから槍を投擲した。
何か凄いな。凄い様になってる。
っと、ミカヅキさんの手から、信じられないほどの速度で槍が発射された。
一瞬驚いた俺とスイーツさんだったが、その驚きどころではなくなった。
ミカヅキさんの投げた槍が『ばぶるん』に接触した瞬間、今までに見たことも無いほどの爆発が起こったのだ。
しかも、安全圏だと思っていたこちらも軽く巻き込むほどの……
爆発に巻き込まれて、俺とスイーツさん、そして投げた本人であるミカヅキさんは……数メートル吹き飛ばされることになった。
おかしいな…… こんなはずではなかったのに…… って言うか、ミカヅキさんどんな性能してるんだよ……




