第18話
「ふぅー…… 紅茶が美味い」
落ちた後、俺はリビングに来て一息ついていた。
リビングに来た時に、母親にもっとゲームをやっているかと思っていたと驚かれたが、少し休憩してまたやると言うと、何か納得していた。それで納得するのもどうかと思うが……
あの後、情報サイトを確認したが、特に新しい情報は出ていなかった。
スイーツさんの事もあったので、モンスターが増えた時の為にとクランに関しての情報も探したが、以前見た情報以上の事は載っていなかった。
その辺りは、実際に第2の街に行ってからになるかもしれない。
早ければ、今日中に行けるか。遅くても明日には行けるだろう。
このまま戻ってレベル上げを続けても良いが、森林フィールドでの戦闘のやりにくさと、黒緋と翡吹の強さから考えると先に進んでも良い気がする。
何となく感じていた事だが、始まりの街はどうもチュートリアルっぽい感じに見える。
草原フィールドも含めてだけど、余りにも敵が弱いうえに、レベルも上がりやす過ぎる。いくらなんでもあれはおかしい。
それもこれもチュートリアルっぽい設定だと考えれば分からなくもない。チュートリアルで遭遇するモンスターが反射攻撃を持っているのはどうかと思うが、あの運営ならやりかねないし。
とするならば、今はレベルも20は超えたし、今後の事を考えてさっさと次の街に向かう方が良いだろう。
それも森林フィールドの開拓村ではなく、草原フィールドの続きの第2の街に。
そのまま俺は、リビングで母親と少し話しながらマッタリした時間を過ごしていたが、夕方近くに手元にあった携帯に1通のメールが届いた。
約束していたし、送信元を確認するとやっぱり哀川さんからだった。
ただ、メールの内容が予想とは少し違ったが……
件名:そろそろログインするよ!
本文:ログインする事になったよ。
どうやら雫お姉ちゃんも一緒に出来る様になったので一緒にやろうって言ってるからログインしてほしいな。
始まりの街の噴水前で待ち合わせで。
生徒会長…… 早すぎるだろ。
本当にどうやって入手したんだか。聞くのが怖いな。
それはともかく、あの一件で生徒会長にはお世話になったから、最初ぐらいは面倒見てあげても良いよな。
一応2日目で先輩にはなるんだし。
哀川さんからのメールに『了解』と返信して部屋に戻る事にする。
もちろん母親にはゲームの事を言って、生徒会長ともやるからと、以前のコンセントアタックだけはやめてくれとお願いしておいた。これマジで重要!
早速ベッドに横になり、ログインする。
ゲームの中に戻ると、早速2匹が俺に飛びついてきた。ふふふ、可愛いやつらめ!
でもあまり2匹にばかり構ってはいられない。哀川さんだけなら良いが、生徒会長も来るならば、あまり遅れるのは良くないだろう。
「今から噴水まで行くよ。俺の知り合いさんがやり始めるらしくて、一緒にやるから黒緋と翡吹もその人と仲良くしてくれよ」
2匹にこれから来る人の事を伝えると、2匹とも『了解!』との意思を伝えてくる。もちろん聞こえる声は「ワン!」「キュイ!」なのだが。
そのまま2匹を伴って噴水広場に向かう。
噴水広場に近づくと、そこにはすでにスイーツさんが居た。メロンとマスカットも一緒だ。って言うか…… やばいあんま近寄りたくないぞ。
広場にあるベンチの様なところで、2匹をメッチャ可愛がっている姿があった。それはいい。俺も黒緋や翡吹を可愛がるのは好きだ。
だけど…… 至福の時なのだろう。呆けた顔をしながら、涎を垂らしている…… VRゲームって涎垂らせるんだ、と変な意識が頭を過るが、あれはないだろう。
君、女子高生ですよね……? いくらゲームの中だといったって、それはまずいんじゃないか?
嫌々ながら、近づくと俺に気が付いたのか、慌てて口元を拭いながら姿勢を直す。いや……手遅れだからね?
「ジ、ジンク君。お、遅かったね!」
うわ、メッチャ動揺しとるがな。
それならこんな人が居る場所でしなければいいのに。ほら……俺以外の人にもメッチャ見られてるから!
「う、うん。待たせたかな」
お互いに凄くぎこちなく、気まずい雰囲気が流れる。
とりあえず話しを変えるしかない!
「えっと、会長はすぐ来れそうなの?」
「あーどうだろう。接続とかは大丈夫だと思うんだけど、キャラ作成にどれだけかかるか分からないかも。でもあんまり優柔不断じゃないからそこまでは掛からないと思うんだけどね」
即断即決とまでは言わないけど、生徒会長なんかやっているんだからやっぱり決断力はあるんだろうな。
「そっか。この後どうするか考えた?」
「うん。やっぱり言ってたように、マスカットのレベル上げをしようと思ってるよ」
そういえば落ちる前にそう言ってたな。
でも今はそれが良いかもしれない。テイミング数の件もあるし、多分レベルも20ですぐに頭打ちになるだろうからすぐに次の街に行くことになるだろうし。
次の街に行けるようにしておく方が良いだろう。
「俺は、クランの件もあるしレベルも20超えてるから第2の街に向かおうと思ってるよ。スイーツさんもマスカットのレベル上がったらそっちにおいでよ」
「そうだね。レベル上げながら、苦手種族のモンスター探ししてからになるかな。クエストはクリアしておきたいしね」
あぁ。そういえばそれがあったな。
苦手種族…… 本当に大丈夫だろうか?
マスカットの件もあるけど『ベルドッグ』と遭遇するまでの時間が勝負な気がする。あまり時間を掛け過ぎて、また別の可愛いモンスターに出会わないことを祈る。と言ってもまだ余裕はあるけど。
「了解。じゃあ第2の街に着いたらチャットで教えて。こっちはそれまでにクランの件とか色々向こうで情報収集しておくから」
「分かった。けど、多分だけど……そんなにすぐに第2の街にはいけないと思うけど」
ん? それはどういう事だろ。
俺が首をかしげていると「やっぱり分かってないか」とか言いながらため息を付いている。
そんな不思議がっている俺の耳に、「怜那~~~~~!」と声が聞こえた。ってスイーツさんの本名メッチャ呼んでる声が!?
「ちょ!? それやめてよ!」
スイーツさんが、慌ててその声のする方に向くと、そこには、俺も知る待ち人がこっちに向かって手を振りながら歩いてくるところだった。
って言うか、会長さん!?
アバターまんまやないかいっ!? それいいのか!?
やっと体調が落ち着いてきました。
少し様子見ながらになりますので、毎日更新はしばらく出来ないかもしれませんが、なるべく早く戻したいと思います。
最低でも2日更新ぐらいで行きたいと……




