第3話
武器防具屋の中に足を踏み入れると、剣や槍、そして盾が飾ってある。
こちらも先ほどの道具屋と同じで、割りと清潔感ある内装をしていた。
何となくだが、イメージ的に武器屋や防具屋は乱雑なイメージがあったのだが、そんな事は無いようだ。
「いらっしゃいませ。ライラックス武器、防具屋にようこそ」
明るい定員の声が店内に響く。
「すいません。販売している物の一覧を見せてもらえますか?」
先ほどの道具屋でメニュー表の様な一覧があったため、こちらもあるだろうと予想して聞いてみる。
「畏まりました。こちらになります」
やはりあるようだ。先ほどの道具屋と同じように木で出来たメニュー表を見せてくれた。
そこには、数種類の武器防具が書いてあった。
ショートソード 片手剣 鉄で出来た片手剣 500G
鉄の槍 槍 鉄で出来た槍 800G
木の弓 弓 木で出来た弓 600G
木の矢 弓(矢)木で出来た矢 10G
どうやらこの4種類らしい。
木の弓と木の矢はきっとセットだろうから実質は3種類か。
初期の装備って感じで特に変わったものは無かった。
値段的にも現在すぐに手が出るものでもないし、値段と種類が分かっただけで良しとする。
このゲームの初期装備は、初心者の片手剣と初心者の服という名前の装備だった。
多分この装備は、設定されている攻撃力や防御力が最低なのだろう。ただ、やはり数値は表示されていない。
数値が無いというのは、意外と鬼畜仕様のゲームだなと今更ながらに思う。
当然お金がないのでこのお店でも商品の品揃えと値段を確認するだけで店を出る事にする。
次は、この世界には冒険者ギルドがあるらしいのでそっちに行きたかったのだが、まだ今一こちらの街の中を把握していないため場所が分からない。
さてこうなると、残りやる事は、自身のレベル上げかな。
もう一度自分のステータスを確認しよう。
何もない空中に左手で丸を書いてその中を押すようにすると、半透明のメニュー表が出てくる。
その中のステータスを選択すると、これまた半透明のステータス画面が出てきた。
そこには、自分の名前から所持スキル等々が書いてある。前に言った様に数値は出ていない。
名前:ジンク:人間族Lv1
HP―――――
SP―――――
EXP――――――
所持スキル
テイミングLv1 モンスター鑑定
回復魔法Lv1 付与魔法Lv1 片手剣 Lv1
装備品
初心者の片手剣
初心者の服
未装備
未装備
未装備
こんな感じの画面である。
他のゲームから比べると数値なども一切無いし簡素だ。HPとSPに関してはそれぞれの色のついたバーが表示されるのみだし。経験値バーもバーの表示だけで数値や%は表示されていない。
自分と各種所持スキルにはレベルが設定されている。多分自分のレベルに関してはテイミングするモンスターに対しての成功率などに関係してくるのだろう。
見えないだけである程度の数値があるとして、それにも影響するのかもしれない。
魔法や技能のスキルに関しては、Lv上がればより強力な物を使用できるとかだろう。
これを上げながら、自分に合ったモンスターをテイミングして、モンスターと一緒に成長していく。これがこのゲームの本来の目的なんだろう。
そこまで考えて、ステータス画面に対し斜めに斜線を入れるように腕を振るって閉じる。
それじゃあ、一丁フィールドに行ってモンスターと戦闘してみますか!
それに、やっぱり折角のこの世界。モンスターをテイミングもしたいしねっ!
先ほど話しを聞いた兵士の詰所っぽい物があるところの街の入り口に向かって歩き出した。
街への出入り口になっている門の前に立つ。
目の前に見える風景は、現実の世界であまり目にする事のない光景が広がっていた。
大草原。そう評しても良いであろう壮大な景色だ。
現実の世界でこの様な風景が無いとは言えないが、ここまで壮大感を感じれる場所はそうそう来れないであろう。
それがVR世界ではこうして見れるのだ。これを見ただけでも、このゲームをやる価値はあるのではないかと思ってしまう。
見渡す限りの草原。その遠くの方に薄っすら小さく見える人の様な者と見たこともない生物らしき影。
先にフィールドに出て行ったプレイヤーと、敵モンスターだろうと想像出来る。
予想していなかった光景と雰囲気に、若干興奮してくる。
自分も先に向かって行ったプレイヤーに習って、歩き出した。
フィールドでのモンスターは、いきなり現れたりはしない。無駄にリアル風味を利かせているからなのか、モンスターも普通に生活しているという形で存在し、それと遭遇していく形になる。
なので、モンスターに対して奇襲もかけられれば、逆にモンスターからの奇襲もありえるのだ。
まぁ、この様な見晴らしのいい場所で奇襲も何もないとは思うのだが……
それでもこの先、森林などの見通しの悪い場所では、こういった知識は持っていないと危険であると言わざるを得ない。
デスゲーム等ではないので、この世界の死が現実世界への死に直結するわけではないが、それでも死ぬという行為自体を容認することは出来ないし、何よりもゲーム特有のデスペナルティなるものが存在する訳だ。
一般のネットゲームなどのデスペナルティは、死ぬとそれまで貯めた経験値の何割かがロストしたり、所持アイテムをロストしたりと様々だ。
このゲームのデスペナルティはというと……散々であった。
少ない説明の公式サイトにも最初の方に記載されている物なのだが、その内容が凄い。というか、ひどい。
【死亡時のデスペナルティについて
キャラクターHPの残量が0になって死亡と判断された時に被るペナルティは、
所持金の半分をロスト。
それまでに貯まっていた経験値を0に。
死亡時のレベルを所持スキル含め全てが1下がる。
装備武器防具アイテム全破損。
テイミングモンスターのレベルの低下(種族により低下する数値は異なる)
以上になります。かなり厳しい制約を設けておりますので、プレイヤーの皆様はお気を付けください】
こんな感じに書かれている。
最初の方のペナルティに関していえば、多少は厳しい感じはするものの、他のゲームでも見る内容だ。
だが、後半のペナルティ。特にレベルダウン。これは厳しい。
しかもだ。どれか一つでも厳しいのに、これが1度の死亡で全て来るのだ。ハッキリ言って厳しすぎだ。
こんな設定があるので、死ぬことは許されない。
運営からすると、リアルの様に死ぬ事に緊張感を持ってほしいとの事であるが……この設定には賛否両論あるだろうと思う。
そんな怖いデスペナルティの事を考えながらフィールドを街から歩いていくと、少し先にモンスターを発見。向こうもこちらを発見しているのだろうが、襲ってくる様子は無い。
これは多分、初級のフィールドであるために、モンスターがアクティブ設定ではないのだろう。
発見したモンスターに早速所持スキルであるモンスター鑑定を使って見る事にする。
鑑定スキルを使用すると、モンスターの頭の上にモンスターの名前だろうと思われる物と、緑色のバーが見えた。
視界の端にある半透明のチャットウィンドウには、モンスターの情報が出ていた。
モンスター鑑定使用。
モンスター名:ばぶるん
Lv1:精霊種:ランクG
初めて邂逅するモンスターの名前は『ばぶるん』丸いシャボン玉に顔を書いたような薄水色のモンスターだった。
【修正】経験値バーを追加。それに伴いその記述を追加しました。
【修正】公式のくだりを削除。