第14話
観刈谷が、凄くまともな事を言い出したけど、実際に観刈谷がクエストを受けられるかは、可能性は低いと判断せざるを得ない。
クエストを受けるときのおばちゃんの話しからも、苦手種族と思われるモンスターを連れていないと発動しない可能性が高いからだ。
実際にそこは、まだ未知数ではあるのだけど、ほぼ間違いはないと思う。
だとすると、観刈谷がこのクエストを受ける為には、苦手種族だと思われる種族をテイミングしないといけないだろう。
更には、クエストをクリアするために最低でも更にもう1匹テイミングしないといけない。
都合2匹のモンスターをテイミングしないといけないことを考えると、ここでテイミングモンスターの所持限界数という問題が出てくるな。
「多分だけど、現状のままだとクエストを受けるのはきついと思う。だけど、クエストを受けて、更にクリアするとなると最低2匹モンスターをテイミングしないといけない。そうするとさっき話していたテイミングしたモンスターの所持限界が出てくるから、観刈谷はその問題が解消されてから受ける方が良いんじゃないのかな?」
俺の考えを観刈谷に伝えると「そっか」と言いながらも納得してくれた。
今俺らはまだ始まりの街付近のフィールドに居るから良いけど、それでも多種多様のモンスターがすでに出てきている。
俺は森林フィールドまで行っているから、多分二人よりも現状では遭遇するモンスターは多いと思うけど、レベルは皆似たようなものだし、きっと状況的にはすぐ似たり寄ったりになるだろう。
「こうして考えると、やっぱり問題はテイミングモンスターの所持限界と、その限界が来た後どうなるかだね」
俺の話しに観刈谷も哀川さんも同意してくれた。
哀川さんの相談事も終わり、新たな問題も見えたけど、中々ちゃんとした話し合いになったから話せて良かった。
今後、テイミング数に関する事は、情報サイトや公式から何か出てくるかをチェックして対応していくしかないだろう。
それまでは、無暗矢鱈にテイミングをしない方向で行くしかない。
哀川さん辺りは、ちょっと不安は残るけど、そこは自己責任としか言いようがないな。
ファストフード店を出て2人と分かれ、俺は1人で自宅に帰る。
意外と話し込んでしまい、家を出たのは10時ごろだったのに、すでに12時をまわっていた。
ファストフードを食べたし、お腹はそこまで空いていないし母親に昼ごはんはいらないって言ってからゲームするか。
「ただいま」
自宅に戻り、家のドアを開けてリビングに居る母親に声をかける。
「おかえり。お昼はどうするの? もう食べたの?」
「うん。少し食べたからお昼はいらないや。観刈谷と哀川さんとゲームする約束してるから、部屋でやるからね」
「ゲームも良いけど、あんまり遊んでばかりじゃだめよ?」
母親の対応が、何か優しいぞ。
哀川さん効果が出ているのか…… 嘘ついて謝ったとはいえ、母親的に何か思う事もあったのかもしれない。
結果論ではあるけど、ある意味であれは良かったのかもしれないな。
「了解。それじゃ部屋に戻るよ」
母親にそう返答して、2階の自室に向かい、ログインする前に情報サイトなどを確認する。
やっぱり色々な情報が出ていたけど、どうもRクエストに関しての情報はまだ出ていないっぽい。
2人との話しでも出たテイミングモンスターの所持数などの情報は出ていた。
それによると、連れて歩ける限界数は、どうも4匹までらしい。
4匹を連れている状態でテイミングスキルを発動しようとしても発動せず、ログに『スキル使用不可状態にあります』と出た事から判明したらしい。
預り所的な場所の話しは、次の街である『レットリー』まで進んでいるプレイヤーが、NPCからクランを立ち上げると使えるようになると言う情報を得ているらしいが、確認は出来ていない情報みたいだ。
それでも、預り所的なものがある事に一先ず安堵する。
きっとモンスターは増えていくだろうから……
ただ、問題はクランを立ち上げると、自分だけ預り所を使えるのか、クラン所属メンバーも使えるのか、そこの情報も欲しいな。
多分後者だとは思うけど……
よし、この辺にしてログインするか。
VRハードを用意し、ベッドに横になってからログインを開始する。
ログインしたと同時に、足元に光が2つ現れる。
そこから黒緋と翡吹が同時に出てくる。と同時に、2匹とも俺に向かって突っ込んできた!
おう。黒緋は「ワンワン!」と言いながら俺の顔を舐めまくってくる。翡吹も負けじと「キュイキュイ!」と言いながらメッチャ頭を擦り付けてくる。
うわ、なんだこれ。凄い可愛い。
ログインしてしばらく2匹を撫で回し可愛がり続けた。
漸く2匹も少し落ち着き、改めてフレンドリストを出すとミノール君もスイーツさんもログイン表示が出ていた。
早速二人にチャットを飛ばすことにする。
『さっきはどうも。ログインしたけど、何処に居る?』
『俺は、始まりの街に居るぞ。れい、いや、スイーツも傍に居る』
二人は始まりの街か。って、俺開拓村にいるじゃん!? すぐに合流出来ないな…… どうしたもんか。
『ジンク君は、今何処にいるの?』
スイーツさんからのチャットに、先ほどリアルで言い忘れた現状を伝える。
『スイーツさんごめん。クエスト受ける場所を案内する予定だったけど、開拓村で落ちたの忘れててすぐに戻れない』
少し待たせる事になるな。
『そうなんだ。それならクエストは私とミノールで場所を探して受けるよ。こっちは何とかやるよ。また何か分からないことが出たらチャットしていい?』
何か申し訳ないな。俺から言い出した話だったのに。
『本当にごめんね。じゃあ今はお言葉に甘えさせてもらうよ』
『了解。気にしないで良いよ。こっちはこっちで頑張るからジンク君も頑張ってね』
何か朝の一件からスイーツさんの物分りが凄い良い気がするのは、気のせいだろうか。
これが本来の姿なのかもしれないけど。暴走していなければ全く問題はないな。暴走しだすと問題しか出ないけど。
2人とのチャットが終わり、改めて今日の方針を2匹に伝える事にする。
「えっと、本当は前にあった2人と一緒に行動するはずだったんだけど、向こうは始まりの街に居るから別行動になった。昨日言ってた通り、うちらは開拓村で情報収集をして、それから少し森林で狩りしようか」
俺の言葉に、邪魔者が居ないと思ったのか、2匹とも「ワンワン!」「キュイキュイ!」と凄く甘えてきた。
やばいな、これ。可愛すぎて行動不能になるぞ。何て凶悪なパッシブスキルを持っているんだ…… って俺の意思の甘さか?
それから2匹を連れて村の中で情報収集を開始するのだった。




