第7話
【修正】テイミングマスター→マスター
「ふぅー……」
開拓村に到着して、大きく息を吐いた。いや、だって、相当怖かったんだぞ?
さっき戦った『ウィスパー』だって、黒緋と翡吹のおかげですぐに倒せたからといって、暗い森林の中を歩く恐怖心が無くなるかと言えば、そんな事は無い。
先ほどの様に先に、こちらが先に発見出来れば言うほどの恐怖心は生まれないが、もし暗い森林で横の木からいきなり攻撃されたら……ハッキリ言ってパニクってまともに動けない可能性大だ。
正直、黒緋と翡吹のマスターとしては、情けなくもあるが、こればっかりは仕方ない事なんだと納得してもらおう。
幸い2匹は、特にビビる俺を見ても大した反応をしなかったからありがたいが。それどころか、黒緋も翡吹も普段よりも俺を気にかけて動いていた気もする。本当に情けない限りだが……
さて、心中も大分落ち着いてきたので、まずは開拓村の探索をする前に色々と2匹と相談しないといけない。
それは、さっきの戦闘後に遅いながらも思い至った、戦闘時におけるお互いの役割と、出来る事出来ない事の確認だ。主に使えるスキルかな。モンスターがスキル制なのかは、少し微妙なところだが……それも含めて色々話し合わないといけないだろう。向こうは会話は出来ないけどね。
2匹と話しをするために、開拓村の入り口から少し離れた村の端の方に移動する。
「それで、2匹ともさっきはありがとうね」
改めて2匹に先ほどのお礼を言う。
「本当に黒緋も翡吹も凄かったよ。特に翡吹のあの咆哮? でいいのかな? あれは凄かったね。あれもスキルなのかな?」
俺が褒めた事に気分を良くしたのか、黒緋も翡吹も擦り寄ってくる。いや、嬉しいけど……今はダメ。真面目な話しの場面! モフモフスベスベ出来ないんだから!
頭を俺の足に擦り付けながら「キュイ!」と返事をしてくれた。肯定の感じがするな。
「なるほどね。他にも使えるスキルはあるのかな?」
今度も俺の問いに「キュイ!」と肯定の意思を乗せた鳴き声で反応してくれた。
他にもあると……ただ、これ思ったよりも難しいな。こちらの言葉は理解してくれてるけど、向こうからの言葉がないから中々どんなスキルなのかとか詳しい事を聞き出すのが厳しい。
「んー……やっぱりしゃべれないから、中々詳しくは難しいね。普通は、自分のテイミングしたモンスターのステータスとか閲覧出来る事が多いけど、それもどうもないっぽいし」
そうなのだ。自分のステータスに自身のテイミングしたモンスターの名前とレベルは分かるのだけど、それ以外の情報は出てこないんだよな。
もしかしたら、と思う事はあるけど……どうなんだろう。これも情報が少なすぎて分からないし。分かっても、今はどちらにしろ無理なんだけどね……
「えっと、詳しいスキルの事とかは今は置いておこう。多分、分からないと思うし。それで、黒緋も翡吹も、戦闘の形としてはさっきの感じが良いのかな?」
さっきの戦闘を見る限りは、黒緋が前衛で敵を翻弄して、翡吹がラストアタックって感じだった。
実際には、黒緋は翡吹のスキルを知っていたか、もしくは、何かをする気配を感じ取って上手く引いた感じに見えた。
黒緋の動きを見ていると、どうも素早い動きで敵を翻弄しつつ噛み付いたりする物理アタックをする感じだと思える。
逆に翡吹は、少し後ろに構えて威力重視の攻撃を放つ格好になるのかな。
俺の問いに2匹とも肯定の返事をしてくれた。
2匹の中では、俺とよりも意志疎通を取れているのだろう。スキルを知っているかどうかは不明だが、黒緋はある程度気配で察知出来るっぽいし、戦闘の形としては先ほどの様な形が良いのかも。
って、俺、何もしてないし、何も出来なくない……?
「うーん……そうしたら、俺はどうしようか……?」
別に、黒緋と翡吹に向かって言った言葉ではなかった。自分で出来る事は何か? どうすれば2匹の邪魔にならずに戦闘が行えるかを考えるために出た言葉だった。
なのに、それに2匹は反応した。反応した鳴き声は、やっぱり「ワンワン!」「キュイキュイ!」であり、普通では、その鳴き声から意味を察知するのは無理だと思う。
でも、何故かこの時の声は、今までで一番感情が伝わってきた。二人は、こう思っていると断言出来る。
『危ない事しないで後ろで見てて!』
おい。それでいいのか? 本当にそれでいいのか?
別に普通のRPGよろしく、勇者の様に敵をバッタバッタと自分で倒したいとか思っては無い。
何処ぞの魔法使い様の様に、魔法無双とかしたい訳じゃない。
だがしかし! テイミングしたモンスターの影に隠れているだけってのは……いくらなんでも……ちょっとねぇ?
「いや、気持ちはありがたいけど黒緋と翡吹にだけ戦わせる訳にいかないよ。邪魔になるかもしれないけど、俺も一緒に戦いたいな」
俺の言葉に「わふわふ!」「キュイキュイ!」と反応してくれる。それと同時に黒緋と翡吹から感情がまた流れてきた気がした。
何か、メッチャ喜んどるっ!?
ってか、黒緋とか目が凄いウルウルしているし。
『私たちの事をそんなに考えてくれて!』的な感じで感動してるっぽいぞ……
翡吹もあまり感情を出す方じゃないみたいだけど、それでも喜んで居るのが伝わってくる。黒緋よりも強めに足に頭を擦り付けてくるのがその証拠と思って良いだろう。
何か凄い2匹に想われてるな、俺…… 別に何かやった記憶もないんだけど……
確かに可愛がっているけど、それが原因とも思えないし。
もしそれが原因だったら……俺よりも全然可愛がっているだろうと予想出来るスイーツさんのメロンとかヤバイ気がする。
スイーツさんとは、テイミングが成功した後直ぐに分かれたから、メロンがどういう子か今一分かってないけど、スイーツさんがメロンを溺愛して思いっきり可愛がっているのは、簡単に想像出来てしまうな。
っと、思考がずれた。
今は、うちらの今後の事だ。具体的には戦闘の時の事。
「とりあえず、俺も前に出て勇ましく戦うタイプではないけど、見ているだけって言うのは何となく嫌だから一緒に頑張って戦おう。それで、前衛はやっぱり黒緋が良いと俺も思うんだ。でも俺は生憎遠距離からの攻撃方法が無いから、最初は黒緋と一緒に前に出る感じになると思う。黒緋には苦労を掛けるかもしれないけど、出来る範囲でフォローしてほしい」
そうだな。戦う事自体に良く聞く様な恐怖心というのは、実はあまりない。これは過去の俺の経験からも来ているのだけど……それはまた話そう。今は置いておく。
だけど、攻撃方法が少ないのは事実だ。
心構えだけで戦闘は出来ないことは、ある程度は理解出来ていると思う。
本当に悪いけど、慣れて上手く形になるまでは、何とか黒緋にフォローしてもらおう。
俺の言葉に黒緋も「ワンワン!」と、まるで『任せてください!』と言わんばかりの反応をしてくれた。
「もちろん後ろに居る翡吹もフォローお願いね。特に翡吹は、後ろから俺たちの事が見えているんだし、接敵している俺らには分からない事とか、見えてない事とかあるだろうからね」
こちらも『了解!』と言わんばかりに「キュイ!」と返事を返してくれた。
一応こんな感じで戦っていて、その都度試行錯誤しながら色々変更していくしかないかな。
俺はこの世界での戦闘は、剣を投げただけしかしていないしね……
本当にそれで上手く戦闘が出来るかは、未知数で不安しかないけど……それでも、黒緋と翡吹が居てくれれば何とかなりそうな気もする。2匹と一緒にいるのは何か変な安心感があるんだよな。
「よし、それじゃ戦闘の事はそんな感じでやろう。じゃあ改めて、村の中を見て回ろうか」
話しは一先ず終わりと2匹に告げ、改めて村の中を巡る為に2匹を連れて歩き出すのだった。
って、夜だと村の人はほとんど寝ているとかってオチは無いよね……?
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