第5話
「やった! 私やったよ!!!」
凄く満ち足りた満面の笑みを浮かべながら、こちらに報告してくるスイーツさん。
うん。テイミング成功してくれて本当にうれしい。
予想よりも時間はかからなかったが、それでも30分ぐらいは掛かっていると思う。開始時間覚えてないから体感でしかないけど。
今現在のリアル時刻は、午後10時半を過ぎたところだ。9時過ぎにログインして話しと移動で1時間ぐらい使ったとしても、やっぱり30分はこのテイミングに時間を使ったな。
実際に1匹のモンスターをテイミングするのに30分かかるって相当難易度は高いと思う。
この事からも、苦手種族のテイミングは難しいという事が分かる。ハッキリ言って、俺の黒緋と翡吹のテイミングは運が良かったんだと思うな。
俺が2匹のテイミングに対してのマイナス補正と、スイーツさんの『ウィンドキャット』へのマイナス補正が同じとも限らない訳だけど……
エルフが獣種をって、イメージ的に凄く難しそうだし……
そんな事を考えていると、テイミングしたモンスターに名前を付けようとしているスイーツさんから声がかかる。
「ねね。ジンク君、何か良い名前無いかな? こいつはあてにならないし……」
ミノール君の方を指さしながら、こちらに聞いてくるスイーツさん。ミノール君の扱いは相変わらず……だな。
「んー……これから長く付き合うパートナーだし、俺なんかがつけるよりもスイーツさんがつけて上げた方が良いんじゃない?」
こういうのは、やっぱりテイミングした本人が付けてあげるのが良いと思う。
俺の意見に納得したのか「うーん、うーん」と頭を捻っている。実際に悩むときに声を出して悩む人って……中々レアだな。
「よし! 決めたよ! 君は今日から『メロン』だ!」
どうやら名前が決まったようだ。
って、メロンって…… いや、好きな名前を付けろとは言ったけど、そんな安直な感じで良いのか? まぁ覚えやすいって意味ではありかもしれないけど。
身体が薄緑で、そこから取ったんだろうと容易に想像つくしね。
「うん。名付けも完了! ジンク君、一応ミノールもありがとう。やっとテイミング出来たよ。しかもこんなに可愛い子が」
俺とミノール君に紹介しながら、感極まって隣に座っていたメロンを抱きしめてモフモフしはじめるスイーツさん。メロンも満更でもない様子なので良いんだけどね。
抱きしめられているメロンを改めて観察する。
顔立ちも体つきも、まんま猫。体毛は薄い緑色で名前の通りメロンを連想させる様な体毛をしている。名前からも分かる様に周囲に風を纏っているのか、メロンとスイーツさんの周りを微風が吹いている様に見える。
ただ、猫と言うには身体は大きい。黒緋も大型犬程度の大きさで割りと大きい方だし、翡吹は中型犬程度の大きさだ。それに比べ、それよりも一回り、いや、二回りほど大きい。
やはり猫というよりは豹なんかを連想するな。実際に目の前に居る、スイーツさんに抱きしめられて満足気に「にゃーにゃー」ってのを聞けば、猫まんまなのだが……
一通りじゃれて満足したのか、スイーツさんが一旦メロンを開放してこちらに来た。
「ごめんね。つい感情が抑えきれなくて…… ハシタナイところを見せちゃったね」
自分の行いを思い出し少し赤面しているスイーツさん。大丈夫だよ……それまで色々なスイーツさんを見ていたから。主にミノール君にとか……
「ううん。初のテイミング成功だし気持ちは分かるよ。ミノール君も分かるよね?」
「ん? 俺はあんまそういうのは無かったかな。苦労も別にしなかったしな」
おい。そこは同意する流れだろ!?
じゃないと、スイーツさんと和解…… あー…… もうだめだ。スイーツさんが鬼の形相で立ってらっしゃる。
そんなスイーツさんの変貌に気が付かないのか、もしかしたら慣れているって可能性もあるが、それを無視して話し始めるミノール君。あんたかなりの強者だよ!
「そんでこれからどうする? もう10時半すぎたし、俺そろそろ落ちないと不味いんだけど」
あぁ、予定があるのか。ってこんな時間から落ちて何かする用事があるのか……
「そっか。あんたそろそろ時間か。ジンク君は?」
スイーツさんも知ってる用事なのかな?
「俺はまだ時間あるし、少し先の狩場にでも行こうかと思っているよ。レベル上げもしたいしね。森林フィールドの方に行くつもり」
そこまで時間はないけど、予想よりも早く終わったし開拓村と森林フィールドの方に行くのはありだろう。
「そしたら、私は少しこの辺で狩りしてメロンのレベル上げてから落ちるね」
「了解だよ。落ちるときは、念のため街でログアウトするんだよ? 何があるか分からないからなるべくフィールドでは落ちない方が良いと思う」
基本的にログアウトした場合、その場で復帰になる。最初のフィールドだし、あまりアクティブモンスターは居ないとは思うけど、それも絶対ではない以上ある程度の注意は必要だ。
その後、ミノール君は街に、スイーツさんはこの辺で狩りと言う事で、その前に少し話す。
Rクエストを受けるのもしないとダメだしね。クエスト達成はもうメロンが居るし、一人でも平気かもしれないけど、スキルの事とか教えた手前ある程度は一緒してあげる方が良いだろう。
クエストを受けるときはメールでログインを知らせてくれるという事になった。ミノール君は、あまりスキルにもクエストにも興味ないみたいで「俺は別に良いや」とか言っていたけど。
そんな訳で2人と分かれ、俺は開拓村のある森林方面に足を向ける。




