第4話
さて、目的の『ベルドッグ』だけど……発見自体確率的には、余り高くないだろう。
と言っても黒緋の時とミノール君のフェンの時との2回遭遇しているから、そこまでレアってほどでもないと思うけど。
『ばぶるん』が目立つから遭遇率が良いとは、余り思えないんだよね。
それを言うと、他のモンスター自体もあまり遭遇しないから『ベルドッグ』だけが遭遇しにくいって事ではない気はするけど……
そんな事を思いながら、目的である『ベルドッグ』を捜索しながら点在している『ばぶるん』を倒しながら行く。
3人でパーティーを組もう(経験値分配的な意味で)と話しがあったが、俺のレベルと黒緋のレベルがすでに20になっていて、草原フィールドで上がるかどうか分からないし、もし上がらないなら、まだ上限と思われる20に到達していない2人と1匹が優先的に経験値を取得する方が良いだろう。
その話しをした時にミノール君は、早くテイミングを終わらせて違うフィールドでレベル上げをしたいそうにしていた。
きっと内心では、すぐに他フィールドに行きたい気持ちになっているのだろうが、スイーツさんの目が怪しく光っていてそんな事は言い出せなくなっていたのは言うまでもない。
捜索開始してからそろそろ30分ほどか。
依然『ベルドッグ』は見つかっていなかった。『ばぶるん』討伐に関しても武器を投げつけるだけの、半ば作業化してきていて早くもミノール君は飽き始めている。
俺も微妙に飽き始め、黒緋と翡吹相手に半分遊び始めていた時に、それをスイーツさんが発見した。
「ねね! 何か見た事無いモンスターがあそこにいるよ!」
見た事無いモンスター……一瞬嫌な予感が頭を過る。
まだあれは、翡吹を仲間にする前に1度会った……おそらくはフィールドボスであろう『ばぶりーん』だ。
スイーツさんの指をさす方に目を向けると、そこに『ばぶりーん』の姿は見えず、一先ず安心した。
しかし、あれはなんだ? 猫……かな? それにしては……
「あれ! 猫だよね!? あれ!」
可愛いのが好きなスイーツさんのテンションが凄い上がってる。
俺は犬派だからあそこまでテンションは上がらないけど、確かに動物好きで可愛いもの好きならば分からないでもない。
「スイーツさん。とりあえずもう少し近くまで行ってモンスター鑑定しようか」
まだ少し距離があるためにモンスター鑑定の有効距離に入っていないっぽい。
感じ的に大体10メートルから15メートルほどが有効範囲か。翡吹の時もそうだったし。
3人と3匹でゆっくりその猫っぽいモンスターに近づいて行く。
近くまで来て良く見ると、やっぱりそれは猫だった。ただ……大きさが俺の知っている猫とは違っている。
身体は、全体的に薄緑色で、何故か体毛が少し揺れている。顔もまんま猫の顔をしているが、ここまで大きいと猫というよりは同じ猫化の豹とかを連想する方が良いかもしれない。虎とかライオンほど大きくはないけど。
アクティブモンスターじゃないのか、近くまで行ってもこちらに襲い掛かってくることはなかった。
「ジンク君! モンスター鑑定したらこの子『ウィンドキャット』って名前だった」
近寄って逃げない猫を前に、モンスター鑑定をしたスイーツさんのテンションが更に上がっていく。
確かに凄く綺麗な身体をしているし、顔も猫まんま猫だから大きさを考えなければ可愛くはある。
「モンスター鑑定して獣種だった?」
多分スイーツさんの中では、もうこの子をテイミングする事になっているんだろうな。獣種ならば、クエストの条件も多分クリアだろうし、問題ないかな。
「うん! 『ベルドッグ』と同種って事は、テイミングするのは、この子でも良いんだよね?」
やっぱり気に入ったみたいだ。
まぁ……スイーツさんの顔を見ればそれは良く分かる。目が爛々と輝いてるもん。
「同種ならば、テイミングしても問題ないと思う」
俺の同意に「やった!」と更にテンションを上げながら『ウィンドキャット』に近づいて行く。
某有名RPGのメタルなヤツ的な感じで、逃走属性持ちだった場合、不用意に近づくのはどうかと思うのだが、初期フィールドでそんなモンスターも居ないかと思い直す。
実際にスイーツさんが近づいても、軽く目を向けるだけで、特に反応せず寝っ転がっている。
スイーツさんがテイミングを発動しはじめ、俺とミノール君は、学校やリアルの話しをしながら黒緋、翡吹、フェンの3匹を相手に遊びはじめる。
ハッキリ言って、近くにいるだけで他に何もする事が無いしね。
レベル上げも『ウィンドウキャット』に遭遇するまでにミノール君もスイーツさんもレベル20になったみたいだし。
フェンのレベルは、まだ20にはなっていないから狩りしてきても良いとミノール君に言ったけど、なんか「気分じゃない」との事。
確かにその気持ちも分からなくはないけど。
ミノール君としては、自主的なログインではないうえに、自由にしているとスイーツさんの鋭い視線が飛んできそうだし。本人はSPの使い過ぎでぐったりしているけど。
実際にテイミングする時には、ソロであるならばSPを使い切るよりはある程度使用してから回復、更に使用ってする方が危険がない気はする。
俺の場合は、そんなことも考えずにやってしまったけど。今後の為にもスイーツさんとミノール君には後で教えておかないとだ。
これが通常になると、万が一が無いとも言えないしね。
そんな感じでマッタリとモンスター達と遊んでいると、ついにその時が来た。
「やったーーーーー!! テイミング成功したよ!!!!!!!」
その声に目を向けると、そこにはやり切った感じの満足顔を浮かべるスイーツさんと、そのすぐ傍らに座ってこちらを見ている初めてのテイミングモンスターだった。




